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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第一節 『VALKYRJE SONG』
47/115

Ixion and Dakini --断罪刃--絶招刃--

 その二つの新しき刃を、真下から向かい来た狂人鬼へと振り降ろす。

 狂人鬼の右腕を、断罪刃イクシオンが斬り弾く。否、薄く斬り裂いた。今までとは異なる明らかな手応えが右手に握る断罪刃イクシオンより伝わってくる。

 見ると、狂人鬼の右腕に小さな傷跡が付いていた。

 しかしそれよりも驚くべき事が起こる。振り降ろした刃に遅れて、残像の刃が生じていた。それも三つ。連なるようにして残像の刃が狂人鬼の身に襲い掛かる。

 否。それはただの残像ではなかった。

 今し方斬り裂いた断罪刃イクシオンの刃に遅れて、残像の刃が狂人鬼の身を次々と斬り裂いていく。その度に、狂人鬼の身に新しい傷跡が付いていく。その身を削っていく。

 一撃で四度の攻撃。それも一瞬の時間差による四連撃。しかしメリットはそれだけではない。実体を持たない残像刃が狂人鬼の身に襲い掛かっている間、本体である断罪刃イクシオンは次の攻撃を繰り出す事が出来た。そしてまた新たな残像刃が生まれる。つまり……。

 左手に握る絶招刃ダキニでまだ斬られ続けている狂人鬼の額を突く。切っ先は間違いなく眉間へと僅かに突き刺さり、狂人鬼にダメージを与える。そしてまた、絶招刃ダキニが通った軌跡をなぞり、鋭い突きの三連撃が時間差で次々と狂人鬼の額を襲う。だが全く同じ軌道だったため、既にずれていた頭部へと突き刺さる事はない……と思われた瞬間。残像刃の軌跡が伸び、狂人鬼の額へと襲い掛かった。

 この残像刃の攻撃は、僅かな距離の誤差であれば自動的に敵を追尾する。続けて繰り出した断罪刃イクシオンの大振りの一撃でそれがハッキリと分かる。

 そして何よりのメリット。本体である短剣で攻撃した後に生じる隙。その隙を残像刃によって埋めてしまう事が可能だった。

 一撃四斬、一刺四突。二刀八閃。

 圧倒的な手数により、狂人鬼の身がその刃の軌跡によって次々と斬り刻まれていく。ゆっくりと斬り刺すだけで恐ろしい程の手数が生み出され、未だ空中にありながら狂人鬼の身が刃の海へと沈んでいく。断罪刃イクシオンと絶招刃ダキニの連続攻撃を受け、狂人鬼の身が傷付き削られていく。

 しかしそこに血の飛沫はない。

 それにより確定する。この化け物は決して人などではなく、恐ろしく堅い金属か何かで創られた人形(ゴーレム)であるという事を。


『連鎖(つな)がる、その時間は

 大きな愛(おもい)、生み出す』


 右に左へと、断罪刃イクシオンが生み出す無限の軌跡が狂人鬼の身を傷つけていく。ダンシングエッジ・エターナルエタニティー。

 再びZの軌跡が生み出される。四つの刃がジグザグに斬り抜け、Zの傷跡をその身に残す。最後には締めの一閃。ファイナルレター・ディザーステッチエンド。

 大振りに薙いだ聖十字の紋様が地面にも刻まれていく。斬るごとに聖十字の輝きは増していく。最後に着地と同時にもう一度大きく刃を上から下へと振り抜く。グランドクロスインペール。


『抱きしめた、その絆は

 永遠に離したくないから』


 収刀する。短剣を鞘に収める。しかし、刃は自らの魂の中へと収める。その刃を魂の中で磨く。徹底的に磨き上げる。そして解放。居合いの斬撃が、抜刀技が真空波を生みだし目の前にある世界を斬る。二刀流居合い、肆死絶生門。

 縦横無尽に刃を走らせる。複雑な軌跡はまるで花のように。地面も斬り灼熱する断罪刃イクシオン。空間のみを鋭く突き向かい凍てつく絶招刃ダキニ。二刀八閃の軌跡が赤と白の花を咲かせる。エーデルローゼン・ラーゼンクロイツ。ロートアンローゼン・ラーゼンピアーズ。


『この世界が滅びたとしても、この想いは消えない』


「うわぁ……一方的。もう攻撃すら出来てないよ」

「これは決まりましたかねー」


『未来(あした)は輝く、その愛(こころ)は繋がる』


 短剣を振るうごとに削れていく。狂人鬼の身が削れていく。

 しかし――一瞬の後、その傷はすぐに回復してしまう。削れた皮膚は、すぐに何事もなかったかのように傷跡を塞いでしまう。超再生能力。ここにきて、数百人規模の法術攻撃をいくら受けようとも全く倒れる事のなかった狂人鬼の、その秘密のベールが姿を現す。


『そう願った気持ちは永遠』


 そして……短剣を振るうごとに削れていく。俺がこれまで稼いできた経験値(ヽヽヽ)が、恐ろしい速度で削られていく。


『Etatrnal Heart、永遠を誓う、貴方と共に生きる、病める時も』


 この二振りの短剣の力を引き出すために選んだ代償。それは、永遠にレベル1である事がほぼ決まっている俺にとって、意味のないステータスである経験値。天文学的な数値をNEXT欄に常に表示しているただの飾りステータス。それが、断罪刃イクシオンと絶招刃ダキニを振るうごとに物凄い勢いで減っていく。

 一閃で10。それに連なる三つの残像刃がヒットするごとに、順に20、40、80と倍々に増えていく。つまり、一振りで経験値が150減っていった。そこに攻撃の強弱は関係ない。等しく俺がこれまで稼いできた経験値が削られていく。


『Etatrnal Heart、永遠に誓う、繋いだ貴方の手を、離したくはないから』


 それでも俺は止まらない。止まる訳にはいかない。

 例え狂人鬼が超再生能力を持っていようとも、それを上回る攻撃速度でダメージを与え続ければいい。例え経験値が底を尽き残像刃が消えようとも、残る刃のみで攻撃し続ける。

 攻撃回数は確かに増えたが、攻撃速度は落としていた。連なる刃の残像が、次なる斬撃の軌道を邪魔してしまう。斬撃と刺突の衝撃で常に身体の位置が変化してしまうため、インパクトの瞬間がずれる。もしくは、逆に残像刃が空のみを斬る事になる。

 故に、効率良くダメージを与えていくには、最後の残像閃がヒットした直後を狙うのがベストだった。


『掴んだ、その時間は

 暖かい愛(ぬくもり)、生み出す』


「……減速してくれたか。あのままいけば危ない所だった」

「だから大丈夫ですって、リーダー。安全装置があるんですから、リーダーが考えてるような事態にはなりませんって」

「ふむ……御前、メイドシリーズの事をどこまでよく知っている?」

「え? 人並み程度ですけど? 流石にあの廃ゲームの廃神級知識は持ってませんって」

「その人並み程度というのは、どの程度の知識だ?」

「そうですねー。遊んだことがある。とりあえずクリアはしてみました、的な?」

「そうか……ならば御前には分からぬか。メイドの闇を」

「シリアスな顔して、メイドの闇って……それ、言ってて少し恥ずかしくありません?」

「むぅ……」


『悲しみの時も、貧しい時も

 絶対に離したくないから』


 唐竹に斬り降ろし、袈裟懸けに斬り、右に薙ぎ、右に斬り上げ、逆風に斬り上げ、左に斬り上げ、左に薙ぎ、逆袈裟に斬り、刺突を撃ち込む。それを一瞬で行う。残像刃が生まれる前に。遅れて、残像刃が三度、高速でその軌跡をなぞる。壱・唐竹、弐・袈裟斬り、参・右薙ぎ、肆・右斬上げ、伍・逆風、陸・左斬上げ、漆・左薙ぎ、捌・逆袈裟、玖・刺突。玖頭肆龍閃波斬。

 右に斬り上げながら抜け、反転する際の遠心力を利用して逆袈裟に斬る。刃を返し、再びその背を斬り上げながら抜け、反転し斬る。単刃で行うならばそれほど難しくなく派手でもない技だが、残像刃がある今となっては難易度も派手さも異なる。ただ斬ればいいだけのタイミングでは決してない。タイミングを見誤れば、逆にこの身が残像刃で傷付く可能性のある技。残影・流水斬り。

 五つの刺突を狂人鬼の腹部へと十字に繰り出す。突く度に刃が紫電を帯びていく。一突きごとに一瞬の間が空くにも関わらず、連続する残像刃が勝手にカウントされて雷属性を勝手に帯びてしまう。構わず、最後の一突に回転力を加え、思い切り突く。サザンクロス・ライトニングブレイク。


『この身が消えたとしても、この意志は消えない』


「あの武器、ちょーヤバじゃない? 分裂するってどうよ?」

「オークションにかけたら、間違いなく最高値を叩き出しますねー。あの化け物さんの身体もしっかり削ってるみたいですから、攻撃力も相当高そうですよー。斬属性、突属性とも一級品。じゅる。ああ、ヨダレが……」

「その気持ち、分からないとは言えないけどねー。でもヨダレを流すほど?」

「いえその……ヨダレの方は、あの魅惑的なお姉様に対してでして……フフっ」

「げっ」

「フフフフフフフっ……どっちも欲しいな~♪」


『未来(あした)は輝く、その愛(こころ)を抱擁(つつ)み込む』


 重点的に右腕の付け根を攻め続ける。相手が人形(ゴーレム)ならば遠慮する必要はない。まずはその兇悪な腕を斬り落とし、脅威を半減させる。

 しかし斬れない。斬り落とせない。

 刃が何度もその場所を往復するが、傷が深くなればなるほど超再生能力の回復速度があがって傷が塞がっていく。突いてもダメ。鋭利な刃が突き刺さった小さな穴は出来るが、貫く事は決して出来ない。

 傷を回復させないため絶招刃ダキニの切っ先を当てたままにするも、その異物を物ともせず傷は塞がってしまう。


『共に交わした気持ちは永遠』


 俺は焦った。それは、腕を斬り落とす事が出来なかったからではない。所持していた経験値が、もう底を突きようとしていたからだ。

 にも関わらず、目の前にいる化け物は、最初に見た時と何ら変わらぬ姿で、狂った瞳を俺へと向け続けている。BGMスキルの効果でその瞳が別の者達に向かう事はもうなかったが、断罪刃イクシオンを以てしても、絶招刃ダキニを以てしても、例え狂人鬼の身を傷つける事が出来るようになったとしても。

 事態は、まるで変わらなかった。


『Etatrnal Heart、永遠を願う、貴方との絆を感じ、これを愛し』


 それでも攻撃を止める訳にはいかない。経験値が尽きるその瞬間まで攻撃し続ける。

 緋桜散華。短剣を回転させながら振り上げ、その高速連続斬撃により狂人鬼の身を浮かす。残像刃が残る中、短剣を振り降ろした後、斬り抜ける。

 ロストラグナカリス。右上半身と左下半身は絶招刃ダキニの刺突で凍てつかせ、左上半身と右下半身は断罪刃イクシオンで燃やす。その中心点を、紫電と真空波を伴った回転撃で貫き斬る。瞬間、4つの属性が入り乱れ、狂人鬼の身体が残像刃によって凍り、燃え、稲走り、斬り刻まれていく。

 それが、最後の攻撃となった。

 経験値が尽きる。たかが一週間。最大でも105時間足らずで稼いだ経験値では、一曲を歌い終える時間すら保たなかった。熱心に狩りをしていたとしても、ほんの少しその寿命を延ばしただけだろう。


『Etatrnal Heart、永遠に願う、貴方がいる此処にいる、もう独りじゃないから』


 それでも尚、俺はこの身体が動く限り攻撃し続ける。攻撃する事を許される限り、腕を振り続ける。

 右に薙ぐ。その軌跡を、一つ減った残像刃がなぞった。

 残像刃がまだ残っていた事に驚き、すぐにあらゆるステータスを確認する。代償となる経験値は既にない。ならばその残像刃は何を糧に生まれているのか。

 それはすぐに見つかる事となる。


『Etatrnal Heart、永遠を誓う、貴方と共に生きる、この命ある限り』


 一薙ぎごとに、BGMスキル熟練度が恐ろしい速度で減っていく。上昇速度を遙かに上回る減少速度。攻撃が当たる度に1、2、4の順番でスキル熟練度が下がっていく。

 斬撃を放つごとにBGMスキル熟練度が下がり、補正スキルが減っていく。その追加効果が減っていく。


『Etatrnal Heart、永遠に誓う、繋いだ貴方の手を、離したくはないから』


 その曲の最後のフレーズを歌い終える。だが伴奏はまだ続く。

 クワイタスサイス。断罪刃イクシオンを死神の鎌に見立て、円月に三度斬る。1音消える。

 インパルスアールドライヴ。絶招刃ダキニを神槍に見立て、2連の突きを放ち最後に斬り抜ける。また1音消える。

 モーデルントフィルフライム。水晶を象る無数の斬閃。立体交差する残像刃が、凍てつく狂人鬼の身を優雅に舞う。世界から2つの音が消えた。

 斬る度に音が少しずつ消えていく。奏でる曲がどんどんと寂しくなっていく。まるでこの戦いの終わりが近づいているという事を物語っているかのように。世界から音が消えていく。

 そして遂に曲を鳴らす事すらも出来なくなり……。

♪御意見、御感想をお待ちしています♪


リン「リンちゃんと」

チー「チーちゃんの」

「「あとがき劇場スペシャル!!」」

リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」

チー「ドンドン、ぱふぱふ」


リン「運命の第47話! 果たして勝つのは私か、チーちゃんか!」

チー「前売り券はS席で3万、A席で2万なのです♪」

リン「あ、お金取るんだ……。しかも、勝負の日取りは今日じゃない!?」

チー「こういう事はみんなを巻き込んで楽しくです♪」

リン「まぁ、いいけど。それより、本編本編。すっかり必殺技数の報告忘れてたー」

チー「もう数えるのも面倒になってきましたからね……」

リン「でもちゃんと報告しないと!」

チー「えと……どこから数えていませんでしたっけ?」

リン「どこからだろ……とりあえず、逆順でおってみよっか」

チー「はいです。この話は14個なのです」

リン「なんかどこかで見たような見てないような技が出てきてるよね」

チー「お勧めはあの長い名前の二つの技なのです」

リン「最初の二つ? ダンシングなんちゃらと、ふぃあなるなんちゃら」

チー「いえいえ、違うのです。エーデルローゼン・ラーゼンクロイツなのです」

リン「となると、もう一つはロートアンローゼン・ラーゼンピアーズか……」

チー「訳すととんでもない事になりそうなので、そのままお召し上がり下さいです♪」

リン「ま、必殺技って大抵そうだよねー。気分的な! 名前が多いよねー」

チー「そういうものなのです。必殺技は勢いと気持ちが大事なのですよ」

リン「カズねぇ、勢いだけで必殺技作りすぎ! 出し過ぎ!」

チー「でも前回の話では、たったの4個しか必殺技出していないのです」

リン「あ、本当だ。しかもそのうち一つは、名もない必殺技だって」

チー「色々と理由をつけて銘々放棄した感が否めないのですね」

リン「だね。なんだろ、神殺技って。カズねぇ、神様を敵にまわしちゃってるよ」

チー「その辺りに首を突っ込むと色々と抗議がきそうなので、しーなのです」

リン「前々話の45話だと、必殺技13個だね。しかも漢字技が多め」

チー「乱れ雪月花が出てきたのです。でもこれって数に入れて良いのでしょうか?」

リン「3つの必殺技を放った後、纏めて一つの必殺技として呼んでるだけだよね」

チー「なので、とりあえずカウントマイナス1個なのです」

リン「その前の44話は22個だね。被ってるのあるけど」

チー「被ってるのはOKなのです」

リン「43話は10個。あ、この辺は覚えてる。北斗七星だ!」

チー「ならその話から前は確実にカウント済ですね♪」

リン「ついでに合計値も出しておく?」

チー「それはやめておくのです。そろそろ本編も佳境に入ってきたのです」

リン「うん。カズねぇのゲリラライブコンサート、終わりかけてるよね」

チー「寂しくなってきたのです。折角盛り上がったのに、一気に冷めてきたのです」

リン「でもまだ分からないよー? またここから盛り返すのかも」

チー「まだ続くのですか……もうお腹いっぱいなのですよ」

リン「ま、そこは次回のお楽しみって事で♪」

チー「じゃ、次回を楽しみにして今日はもう寝ましょうか♪」

リン「だね! 盛り上がったのを一度ガクンと下げて、実はその後!?」

チー「思わせぶりは程々になのです。じゃないと取り返しのつかない事に……」

リン「はーい」

チー「それでは、皆様方。お休みなさいなのです」

リン「バイバーイ。また来てね~♪」



♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪

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