Alchemist --錬金術士--
キラーナイフが折れた。だが、そんな事ぐらいで俺は止まる訳にはいかない。
折れ跳ねたキラーナイフの刃を手で掴み、更に酷使する。
シュバルツェカノン。刃のみとなったキーナイフを狂人鬼の身に当て、掌打。
円舞・龍塵雀火。繰り出す刃は全て地面をなぞり、炎を纏う。何度も斬り抜く。斬り上げる。狂人鬼を再び業火の中へと叩き込む。地獄の業火で焼き尽くす。
スクリュードライバー。試し斬りの短剣を高速で回転させ、真空波によって斬り裂き貫く。
そして――最後。
現実世界では既に使える者のいなくなった技を、使う。
無想流一刀術、源流、口伝武技、最古奥義が一つ。
名も無き神殺技。
『Death...Nightmare...Despaire...』
――斬り終えたのは、その一瞬後。
構えすら見せない、本来この世にあってはならない禁断の技。それが実際に出来るかどうかは別として、神すらも殺すといわれる絶技。それ故に、誰も使うことを許されず、ただ口伝でのみ伝えられている秘法。
かつてただ一時のみの知人が死ぬ間際に、それが失われる事を恐れ俺へと伝えた、謎に包まれたままの奥義。
それを最後に、試し斬りの短剣がその役目を遂に終える。
『Fear...Abandonment...Incredullty...』
全てはこの時のために。折れたキラーナイフの刃と、砕け散った試し斬りの短剣の刃を鞘に戻す。そしてその時を稼ぐために。
錬金術スキル熟練度、100。
狂人鬼の身を足場にして真上に飛び上がる。
『Thou askest those』
「英語に切り替わりましたねー。誰か分かりますー?」
「私、ギブアップ~」
「私はノックアウトです」
「んも~、使えない人達ですねー。と言っても、私も分からないんですけどね」
「……ちょっとアレンジされてるけど、たぶん私が分かるよ。この感じだと恐らくあのフレーズだね」
「あ、凄いお姉様。訳して訳して」
『Where they come from and where they go?』
その俺を追って、狂人鬼が飛び向かってくる。
その攻撃を利用して、俺は更なる高みへと向かう。
『Why thou breakest things and why fain to kill?』
「最初のは『死……悪夢……絶望……』それから『恐怖……絶念……懐疑……』次は『そんなものを求めてどうする』ね」
「そんなもの、私達は求めてませんよー」
「馬鹿。私達に向けた言葉じゃないでしょうに。あの子があの化け物に向けて語りかけてる言葉よ」
「あーなるほどなるほど。」
「『何処から来て、何処へ行く?』貴方……というより貴様の方がしっくりくるか。『貴様は何故壊し、何故殺そうとする?』 やっぱアレンジしてるね。本当なら、最初のフレーズは夢とか希望とかを言って、ここでは何故創り何故生きようとする、というのが正しいし」
「えーっと……どういう事です?」
「本来このフレーズは、悪者がそれを阻もうとする者達に対して語りかける言葉なんだ」
「えーっと……サッパリです」
「はぁ。また後で教えてやるよ」
「はーい♪」
『Life...Dream...Hope...』
二度……三度……そして四度目。繰り返される攻撃に乗り、俺は高度を上げていく。本来その攻撃は、逃げ場を失う詰みの一手。
近くに壁があるならば兎も角……壁よりもまだ低いならば兎も角……。
ステージと化した広大な広場の中央で、俺は何度も何度も狂人鬼の手によって高空へと追いやられていく。いったい、何処までの高みまで上げる事が可能なのか。無限の体力と精神力を持つと思われるその化け物は、それをする獲物の命が尽きるまでその行為を淡々と繰り返し続けるつもりなのか。
七度目。視界の中に、その場に集まっている者達の姿が全て映し出される。
『Future...Etarnal...Undead...』
「ここで来たか……『命、夢、希望』そして『未来、永遠、不死』ね。確かにそれも欲しいものだね。出来る事なら」
『Albeit everything is fated』
九度目。そろそろ必要と思われる時間の確保には成功したか。
ならば次が勝負だ。この一手が、この後の全てを決める。
キラーナイフも、試し斬りの短剣も既に武器としては役に立たない。これまで俺がしてきた事により、完全に壊れてしまった。
だが……。
『Albeit everything is fated』
「あれ? 二度言いませんでした?」
「『全てが運命で定まっているとはいえ』……『何もかも、いずれは滅ぶとはいえ』……同じ言葉だけど、別の言語に訳すとこうも違って聞こえてしまう。ここもアレンジか。となると、この先に続くのは」
「先読み! どうぞー」
「――全てを破壊する、その反対は何だと思う?」
「え? えーと……」
『If it becoms...I doom all...』
「『ならば……この私が、その全てを……』その先だ」
「分かった!」
「私も分かったです!」
「さぁ、正解は? その全てを?」
「守ってみせよう!」
「守ってみせよう、ホトトギス!」
「正解! ……なんか余分なものがついてるけどね」
『to Gard!!』
錬金生成、開始!
折れたキラーナイフ+13と砕けた試し斬りの短剣+7を材料に、全ての錬金術スキル熟練度を費やして、新しき刃を創り出す。
熟練度補正『精錬金術・忌』を使用する。犠牲を必要とするその技を、躊躇わず使用する。もう俺に残された術はそこにしかないために。
眼前に光の玉が現れ、そこにキラーナイフと試し斬りの短剣が吸い込まれていく。そして選択肢が現れる。求めるものは何か。求める力は何か。その代償とするものは何か。
求めるものは、二振りの短剣。これまでと同様の武器。使い慣れた武器。
求める力は、何をも斬り裂く断罪の力。何をも貫く絶招の力。
その代償とするものは……体力でもなく、精神力でもない。ステータスのどれでもない。レベル1の俺が捧げられるものなどたかが知られている。だが、一つだけ選択肢の中にこれぞというものを発見する。瞬時にそれを選択する。迷わず選択する。
そして全ての選択を終えた瞬間、眼前にある光の玉が大きく輝いた。
「ほぅ……ここにきて、壊れた武器を修理成長させるのか。なるほど、確かに理に適っている。その時間を稼ぐためにあの高みに昇ったのか」
「修理成長ですか? でもなんかいつも見てる修理光の色と違いません?」
「む……確かに。しかもその輝きがあまりにも大きい。これは……単なるグレードアップには終わらぬかも知れぬな。出来上がるのは希少級どころではないだろう」
「まさかの伝説級ですか? それとも究極級?」
「それはない。恐らく固有級だ。人の手で生成出来るのはそれが限界だ。もっとも、付加能力次第ではその力は神器級にもなるがな」
「じゃ、もしかしたら今確認されてる中で一番強い武器があそこから出てくるかもしれないんですねー」
「……そうなるだろう」
光の玉に手を突き入れ、そこで何かを掴む。そして引き抜く。
現れのは、望んだとおりの二振りの短剣。禍々しき気を放つ、しかし神々しく光る刃。
右手に掴んだのは刃渡り20センチ程度の反りの大きい短剣。鞘から引き抜くと、日本刀の如く兼房乱の刃紋を持った美しき刃が姿を現す。装飾はない。まさに斬る事のみを追求した短き刀剣。名を、断罪刃イクシオン。
左手に掴んだのは刃渡り25センチ弱の細くて真っ直ぐな短剣。装飾が施され下緒まである鞘を引き抜くと、細剣という程ではないがやはり刀身は細い。そして先端が鋭く尖っている。両刃のついたスティレット型というべきか。一応は斬る事は出来るが、見た目通り刺し貫く事を重点においた一振り。名は、絶招刃ダキニ。
そして俺は――遂に、終局をもたらす新たなる刃を手に入れた。
♪御意見、御感想をお待ちしています♪
リン「リンちゃんと」
チー「チーちゃんの」
「「あとがき劇場スペシャル!!」」
リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」
チー「ドンドン、ぱふぱふ」
リン「なんか新しい武器が出てきた!? 英語バリバリ第46話だよー」
チー「英語は卑怯なのです……。まだよく分からないのです……」
リン「どう見ても一般レベルの英語じゃないよねー」
チー「翻訳してくれてる人がいたので助かりました♪」
リン「というか、カズねぇ英語出来たんだ……」
チー「歌詞だけ覚えてたんじゃないです?」
リン「あ、そうかもね。カズねぇに英語は……うん、似合わないね」
チー「似合うのはきっと私だけなのです」
リン「え? 私の方が似合わない?」
チー「カタコトの英語ならとっても似合いますね」
リン「アイキャンノットスピークイングリッシュ!」
チー「Hasta la vista , baby」
リン「チーちゃん、それスペイン語じゃ?」
チー「!? リンねぇ、なんで分かったんですか!?」
リン「だってそれ、私の好きな言葉だもん♪ 地獄で会おうぜ、べいべー♪」
チー「意外な所で博識だったのです、リンねぇ。スペイン語だと知ってるなんて……」
リン「え、そっち?」
チー「言葉自体はとても有名なので、知っててもおかしくないのです」
リン「むー。折角、決め台詞用に仕入れてきたのにー」
チー「あまり多用しないで下さいね。リンねぇにはちょっと似合わないのです」
リン「ちぇ」
チー「それにしても、カズミちゃんの声がとっても綺麗ですね」
リン「うん。なんかこれまでの歌よりも凄く綺麗に聞こえるよね。何でだろ」
チー「ビブラートがきいてて物凄く響きが良いのです」
リン「ソロコーラスみたいな歌い方だよね。それともオペラ風?」
チー「大広間の中央空高くから鳴り響いてくるというのも格好良いのですよ」
リン「それでしかも英語! ラストバトルのシーンにも見えちゃう♪」
チー「ラストバトルにされちゃうとみんな困っちゃうのですけどね」
リン「僅か一週間でサービス終了!? それやだー!」
チー「オンラインゲームなので、一週間で終わりという事はまずないのです」
リン「でもその時点でアップされてるラスボスに一週間で辿り着く人はいるけどね」
チー「そう考えると、あの化け物さんの位置づけは何なのでしょう?」
リン「嫌がらせの噛ませ犬じゃない?」
チー「そんな身も蓋もない……」
リン「ストーリーも何もなしでいきなり出てきたからねー」
チー「突然の緊急クエストは嬉しいのですけど、あの強さは卑怯なのです」
リン「一発目なんだから、もうちょっと軽めのが欲しかったよねー」
チー「でも一つの指標にはなるのです」
リン「あの化け物を倒せるぐらいに私は強くなる! 的な?」
チー「です。現時点でのレイドPTでも倒せない敵を、ゆくゆくはソロでなのです」
リン「なんか凄く遠そうだね……」
チー「でもないのです。あーしてカズミちゃんがソロで渡り合っているのです」
リン「あ、そか。なら後はレベルあげて強い武器防具揃えれば良いだけだよね」
チー「最初に誰が倒せるのか。廃人さん達のやる気アップですね♪」
リン「この緊急クエストに二度目があれば、みんなのやる気もアップだね♪」
チー「その時はもう負けないのです!」
リン「モンスター軍団もサクッと返り討ち!」
チー「明日からまた修行の日々ですね」
リン「だね!」
チー「あ、でもカズミちゃんが今回倒しちゃったら……」
リン「ならカズねぇを私は越える!」
チー「えと……以前、カズミちゃんと闘ったら勝てるという話をしたような……」
リン「あれ? そういえばそうだね。なら既に私達が最強!?」
チー「つまり、私とリンねぇで頂上決戦ですね♪ 負けないですよ♪」
リン「甘く見られたものだね……私がチーちゃん如きに負けるとでも?♪」
チー「時代は変わるのです。昨日までの私だとはもう思わないのです♪」
リン「その驕り、灰燼に帰してあげるチーちゃん♪」
チー「いざ尋常に勝負なのです、リンねぇ♪」
リン「あ、でもごめん。もう終わりだから、明日でお願い」
チー「え? あ……ほんとなのです。残念なのです」
リン「という訳で、勝負は次回に持ち越し! みんな、待ったねー♪」
チー「次回もちゃんと見て欲しいのです♪」
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