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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第一節 『VALKYRJE SONG』
33/115

姪と Boss battle

 既に諦めの境地に達しかけている戦場の指揮者(プレイヤー)達が固唾を飲んでその光景を眺める。彼等の目には一様に期待の色がほんの少しだけ浮かんでいたが、それが絶対に起こらない未来である事は誰の目にも明らかだった。

 故に最後の悪あがきだと認めて、ただ傍観する。新しい指示はもう出さない。指示を受けて動くだけだったボス戦の参加者(プレイヤー)達も、加勢する事は決してなかった。

「渇! 一発! 二発! 回復ありっす! ゼロッ! 一発! まだまだいけるっすよー、渇! 二発! 三ぱ……回復ありっす! ゼロッ!」

 どす黒くてやたらトゲトゲした凶悪な全身鎧を着たレイ君が、狂人鬼の攻撃を受ける度に声をあげる。その一撃ごとに手に持っている盾が破片を撒き散らし、攻撃を直接受けた鎧が破砕していくがまるで怯まない。挑発スキルは全く役に立たないというのに、それでも身に染みついてしまった行動なのか、レイ君は挑発する事をやめなかった。

 果敢に目の前へと立ちはだかってくるレイ君に、狂人鬼は迂回して他の面々を攻撃しようとするが、回避重視でちょこまかと動く5人にはなかなか当たらない。剣で受け流されるか、近づく前に薙刀で行動を阻害されるか、攻撃の軌道を見切られ回避されるか。掠ってダメージを受ける事はあったが、それで死ぬような事はなく、少し待っていればレイ君の後ろに隠れているリンネちゃんが回復した。

 回避を続けていればいつかレイ君が接敵する。そのレイ君へと攻撃をした瞬間を狙って死角から誰かが攻撃する。今度の攻撃はマリリン。法術を唱えると優先して攻撃される事を学習しているので、使用したのは手にしている杖に秘められていた火球。後頭部へと直撃し、一瞬体勢が崩れた所をササメさんの薙刀が狂人鬼の胴を薙ぎ払う。

「水鏡、孤月閃!」

 しかし、斬れない。ササメさんの力作である今現在においてトップクラスの斬れ味を誇る薙刀の必殺技を以てしても、狂人鬼の恐ろしく堅い防御にハッキリとした傷を負わせる事は出来なかった。

「くっ……これでもダメですか」

 逆に刃毀(はこぼ)れさせられた巴型大薙刀『細椿・虎月』を見てササメさんの表情が一際曇る。

「なら、次は僕です」

 一瞬の判断遅れ、一つのミスがそのまま死に繋がりかねない攻防の中で、シン君が何かを狙って力を溜めていく。しかしなかなかそのチャンスが訪れない。

 レイ君がノックバックされ、今度はマリリンを標的として狂人鬼が攻撃を繰り出す。必死にマリリンは攻撃を回避しようとするが、前衛職でないマリリンの動きはどこかぎこちない。現実ではむしろセンねぇちゃんよりも前衛寄りなのに、この世界では職業補正が悪い方向に効いているのか、かなり危なげな回避行動だった。

「マリリン!」

「うんっ!」

「「チェンジ!!」」

 しかし彼女達にはこのチートな能力がある。瞬間的に入れ替わったセンねぇちゃんの剣が、今まさにマリリンの首を斬り飛ばそうとした最中の敵の狂爪を弾き飛ばした。

 その瞬間を好機ととらえたシン君が一気に間合いを詰める。

「最強の矛と最強の盾を持ってるならば、その矛を盾にぶつければいい」

 トンファーという鈍器で狂人鬼の胴を二度殴る。その連撃が終わった時には既に狂人鬼の前から逃げていたセンねぇちゃん。ならば標的はより近い方にいる獲物の方へと切り替わる。

 狂人鬼の五指から伸びる鋭き爪が、間近のシン君へと振り下ろされる。

「ここっ! 必殺、受け流し返し!」

 期待した格好いい必殺技名を叫ぶ事もなく、シン君が技名そのままにトンファーで狂人鬼の腕を誘導し、その猛威を振るい続けた狂爪を狂人鬼の胴へと導いていく。

 そして、パキンッという音と共にその爪が砕け散る。

 その結果をはっきり確認する前にシン君がバックステップして離れ、代わりにレイ君が間に入って挑発スキルを使って注意を引き付けようとする。

「ダメ、ですか……」

「角度が悪かったのだと思います。刃筋が通っていませんでした」

「そこまでの技術は流石に……そんな達人級の技術を要求されても僕には応えられませんね」

「あの攻撃を受け流して返しただけでも十分に達人級ですよ。少なくとも私はそう感じました」

「有り難うございます」

 しかし結果が伴わなければ意味がない。

「なら、今度は私の超秘奥義です。それならきっと!」

「そんな暇ないよ、センねぇ。それにチェンジはさっき使ったばかりだから、再使用(リキャスト)まであと10分近く掛かるし。それまでレイレイ保たないんじゃないかなー」

「あう~」

 遂に砕け散った盾を放り投げ、新しい盾をどこからともなく出現させたレイ君が必死にシールドバッシュやらシールドタックルやらを使って地味に攻撃を仕掛けるが、まぁ当然の事ながらまるで効果はない。狂人鬼はスタンする事もノックバックする事もなく、真正面からその攻撃に耐えてみせる。どころか、ぶつけた方の盾がダメージを受けていた。だが攻撃を仕掛けた事でレイ君に興味を示したのか、狂人鬼はそのまま暫くレイ君だけを標的に絞って攻撃し続ける。

 それに対して悲鳴をあげたのは、そのレイ君の影に隠れて回復に徹していたリンネちゃんだった。それまでは他のPTメンバーに標的が移る事で回復のインターバルが生じていたのに、敵がレイ君一本に攻撃を絞ったために大忙し。レイ君は攻撃を一切回避しないので、飛ぶように回復アイテムが投入されていく。

 その事に危機感を覚えたササメさんとシン君が動く。しかしそれは敵の策略だった。

 レイ君が相手であれば自身のペースで攻撃する事が出来た狂人鬼がわざと隙を作り、攻撃を誘い込む。

「しまっ!?」

 それに気が付いた時にはもう遅かった。

 背後から斬りつけてきたササメさんの薙刀の刃を、その斬撃速度が落ちる斬りつけられた後を狙って狂人鬼の右腕が掴み取る。

 次の瞬間、巴型大薙刀『細椿・虎月』の刃は砕け散った。

「あ、あ……」

「ササメさん!?」

 自身の最高傑作をいとも簡単に目の前で砕かれたササメさんが一瞬放心する。その隙は、狂人鬼にとっては長すぎる隙だった。

 一瞬後。俺は、ササメさんの左腕が斬り飛ばされたのを目にする事となる。

「守! 烈! 喝っ! くそっ! なんで効かないんすよ!」

 動きが緩慢になったササメさんに狂人鬼の口が笑みを浮かべる。今まで決して見せる事のなかった狂人鬼のその笑顔に、ササメさんの動きが停止する。

 そしてまた、血飛沫が舞う。今度は薙刀を持っていた右腕が斬り飛ばされた。

 それでもまだ、ササメさんは死亡判定を受けない。HPや防御力が十分に高いと、四肢を失っただけではすぐに死ぬ事はない。人体の一部を欠損すると強烈な継続ダメージが発生するので放っておけばすぐ死亡するが、それでも場合によっては十数秒は楽に保つ。ただの回復ではその欠損状態を回復させる事は出来ないが、HPだけはある程度は回復し続ける事が出来る。時間の経過と共に継続ダメージ量は増加するので、永遠という訳にはいかないが。

 だが、その余命時間がササメさんに最悪の恐怖を体験させてしまう。

 その余命時間が、その場に集っていた多くのプレイヤー達に最悪の映像を見させてしまった。

「ひっ……いやっ…………やめっ!!?」

 ササメさんは、大口を開けた狂人鬼によって、生きたまま頭から喰い殺された。

 バキッという生々しい音と共に噛み砕かれた頭蓋骨。顔の半分近くを失ったササメさんの残った瞳が見開き、その光景を最も間近で見続けている。

 ぐちゅっぐちゅっベキッベキッという咀嚼音が狂人鬼の口元から鳴り響いていた。自らの顔が今まさに喰われているというその音を、最も間近にいたササメさんが残っていた耳によって一番大きく聞いている。

 そして、ゴクンッという喉を鳴らす音。喰われたという現実がその場を目撃した全員の脳へと後から襲い掛かってくる。

 そして俺は見た。狂人鬼の瞳が確かに俺の方を見たという事を。

 そのササメさんの酷い死に様に、俺はあまりの動揺で反応する事が出来なかった。なんだこれは? いったい何が起きている!? 何故、彼奴は人を……ササメさんを喰った!?

 プレイヤー全員がそのあまりのショックに言葉をなくす。今まで一度としてその狂人的な行動を狂人鬼が行うような事はなかった。ただ斬り、殺すだけ。それだけだったのに。

 突然に行われた狂気に場が静寂に包まれる。静寂の中で、ササメさんが喰われているという音だけが世界に鳴り響く。

「うああああぁぁぁぁぁぁ!! 私のササメを(ヽヽヽヽヽヽ)そんな風に喰うなあああああぁぁぁぁ!!」

 その沈黙を最初に破ったのはリンネちゃんだった。

 リンネちゃんがレイ君の身体を踏み台にして発狂しながら狂人鬼へと殴りかかる。その両手には大きな鈍器。しかしあまりにも無謀。

 金縛りの呪縛から抜け出し傍観を止めて駆け始めるが間に合わない。瞳の中でササメさんが死亡判定を受けて掻き消えていく。その姿が完全に消え去る一瞬前に振り抜かれた巨大なハンマーが、無造作に前へと差し出された狂人鬼の腕によって難なく受け止められる。ハンマーは、そのまま根本からボキっと折れた。

 そして、空中にあるリンネちゃんの顔がハンマーを受け止めた手とは逆の手で鷲掴みにされる。

 その先をさせまいと、センねぇちゃんの剣と、マリリンの杖と、シン君のトンファーと、レイ君の盾によるタックルが、同時に狂人鬼の腕と頭頂と足下と胴体に叩き込まれる。全員が防御を捨てた捨て身の一撃。

 だが……。

 無情にも、その一瞬後にハンマーの頭部とリンネちゃんの頭部は握り砕かれ潰された。

 堅い金属の塊がその隣に並べられた人の頭と同じようにアッサリと砕かれるというその様は、盛大に血と脳漿と瞳と頭蓋の破片を飛び散らせたリンネちゃんの残酷な最後を霞ませる程の印象を与え、ササメさんの壮絶な最後を見てようやく悲鳴を上げ始めた面々の喉を再び止めさせるに至る。

 しかしそれも束の間のみ。今度こそ世界が女性陣の高い悲鳴と男性陣の短い感嘆の声によって埋め尽くされた。

 そしてまた、それをした狂人鬼の瞳が俺の方をチラッと見る。その口元には僅かに笑みが浮かんでいた。

 理解が追いつかない。しかしその思考を今は捨てて、残る4人の命を助けるべく俺は疾走し続ける。

 そしてまた間に合わなかった。

 死亡判定を受けて掻き消えたリンネちゃんに何を思うでもなく、血に染まった狂刃の風が一瞬にして半時計に振るわれる。捨て身の攻撃を仕掛け、しかしほんの少ししか敵の体勢を崩す事しか出来なかった4人の少年少女達がその狂刃に逃げ遅れて咄嗟に防御する。センねぇちゃんは刃毀れした剣で、シン君は今にも砕けて折れそうなトンファー2本で、レイ君はボロボロの盾と鎧で。そしてマリリンは、頼りない木製の杖でその攻撃を防御する。

 3人の身体がほぼ同時にその場から弾き飛ばされる。1人の身体がその場に取り残される。取り残された赤の魔法士の少女は、杖と一緒にその身を5つの爪により6つに斬り裂かれた。苦渋に染まった少女の顔が、そのままの表情で霞のように消え去っていく。

 悪寒を感じたのは、そのすぐ後。

 狂人鬼の顔が、まだすぐ近くにいる3人ではなく、全速力で近づいている俺でもなく、他のプレイヤーでもなく、ある一点へと向けられる。そして何かを瞳に映す。そして口元に凶悪な笑みを浮かべる。

 奴は、いったい何を見ている!? 何を理解した!? 何故そんなに嬉しそうにしている!? 何をするつもりだ!?

 目を離してはいけないとは思いつつも、俺はどうしてもその狂人鬼が見ているものを確かめなければならないと思った。これは決してフェイントではないと思った。

 そして見て理解し、強烈な悪寒が背筋を走る。

「マリリン! 早くその場から逃げろ!」

 狂人鬼の視線の先には、今し方死亡し、復活したばかりのマリリンの姿があった。

 狂人鬼の姿が掻き消える。圧倒的な速度で以て、広場の反対側にあるその場所へと超高速で移動する。少し前に見たリンネちゃんが使ったアイテム効果による超速度。それを越えそうな勢いで、もうすぐ零へと至ろうとしていた俺と狂人鬼との距離が一気に開いていく。

 自身が狙われているという事をようやく理解したマリリンが目を見開いたまま固まる。ここにきてついにマリリンの脳は連続した残酷な映像に押し潰されてパンクし、思考と認識を止めた。

 そして――たった一人をただひたすらに殺し続けるという、連続殺人行為が繰り返される。

♪御意見、御感想をお待ちしています♪


ポッ「ポックルと」

プク「プクーラの」

「「あとがき代理劇場!!」」

ポッ「いっえーい、じゃじゃーん」

プク「……」


ポッ「なんだかよくわかんないけど、第33話でーす。いえーい」

プク「どうも。お二人が取り込み中のため、急遽この場を任されました」

ポッ「でも何で僕ちゃん達なんだろ?」

プク「その点は小生にも分かりません。最近、暇だからではないですか?」

ポッ「うーん、そうだねー。最近、まったく新規の人が全然来ないんだよねー」

プク「リアル事情でしょう。またそのうち一気に新規の方がいらっしゃいますよ」

ポッ「早くそうなると良いねー。まさかここまで暇になるとは思わなかったよ」

プク「それで、私達はここで何を代弁すれば良いのでしょうか?」

ポッ「雑談じゃない?」

プク「そのような事のために小生は駆り出されてのですか……この忙しい時に」

ポッ「え? 忙しいの、プクーラ?」

プク「貴方とは違うのですよ、貴方とは」

ポッ「む、失礼な。僕ちゃんだって地味に忙しいんだからね!」

プク「そういえば今度、ピクリさんと山にピクニックへ行くのでしたね」

ポッ「うん。本当は行きたくないんだけどね。でもピクリが行きたいって言うから」

プク「決して私は誘わないで下さいよ。命がいくつあっても足りませんので」

ポッ「えー。そんな事言わないで、一緒に行こうよプク~ラ~」

プク「嫌です。何で私が5千メートル級の雪山に登らなければならないのですか」

ポッ「しかも龍がいるんだって。数百年級の竜じゃなくて、数千年級の龍が」

プク「骨は拾いにいけませんので、あしからず」

ポッ「やーだー。プクーラが一緒に行ってくれないとやーだー」

プク「ごねても嫌です。私は絶対に行きません」

ポッ「……どうしても?」

プク「はい。どうしてもです」

ポッ「僕ちゃんがこーんなに頭を下げて頼んでも?」

プク「随分と高いですね。地面に額が付いていませんよ」

ポッ「付いたら一緒に行ってくれる?」

プク「私は死にたくありません」

ポッ「僕ちゃんだって死にたくないよ!?」

プク「貴方は自業自得です。弱みを握られるからこういう事になるのです」

ポッ「そういえば僕、プクーラの弱みを握ってたんだよね」

プク「……何が言いたいのでしょうか?」

ポッ「僕ちゃんもしかしたら死ぬ前にピクリに何か言っちゃうかもー」

プク「私を脅そうというのですか? 恥を知りなさい恥を。それでも賢者ですか?」

ポッ「賢い僕ちゃんは生き残るために利用できる物は何でも利用するのでーす」

プク「かしこいとさかしい、は意味が少し違いますよ」

ポッ「それって、僕ちゃんが賢しいって事?」

プク「少なくとも賢い訳ではありませんね」

ポッ「でも僕ちゃん、知謀担当の賢者だよ?」

プク「いつから貴方が知謀担当になったというのです。貴方は痴呆担当ですよ」

ポッ「痴呆だけは絶対にないよ! 賢者である僕ちゃんが痴呆な訳ないじゃん!」

プク「貴方にはお似合いです」

ポッ「む……僕ちゃん怒ったぞー!」

プク「ほう。私と一戦やりあうというのですか? 望む所です」

ポッ「じゃーん」

プク「けーん」

ポッ「ぽん! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!」

プク「フッ……やはり私の勝ちですね。頭脳担当をなめて貰っては困ります」

ポッ「ぐぅ……また負けたー」

プク「これで9万7134戦、8万とんで21勝、1万7113引き分けですね」

ポッ「嘘だ! ぜ~ったいにそれ嘘だ! 僕ちゃんなんで一回も勝ってないの!?」

プク「だって一度も勝っていないでしょう?」

ポッ「そんな筈ない! 1回ぐらいは勝ってる筈だよ!?」

プク「それでもたった1回に拘るのですか……やはり痴呆担当ですね」

ポッ「痴呆言うなー!!」

プク「……っと。雑談というのは、こんな感じで宜しいのでしょうか?」

ポッ「え、雑談?」

プク「また面倒な事になる前に、さっさと終わらせますか。それではさようなら」

ポッ「え? え、え? あ、バイバーイ」

プク「またの御来読の程、宜しくお願い致します」



♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪

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