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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第一節 『VALKYRJE SONG』
19/115

姪と auto battle

御意見、御感想ありがとうございます。

本作次節、他作、新作(未定ね)の参考にさせて頂いてます。

なるほどなるほど。

引き続き、本作をお楽しみ下さい。

 ――さて。ここで確認しておくことがある。

 みなさん、職業は何ですか?

「済まない……訳あって、職業は明かしたくない。特典版で取得できる職業だとだけ言っておく」

 でも聞かれる前に(くさび)を打っておく。ああ……俺って嫌な奴だ。

「カズミさんは短剣を使うんですね。使いにくくないですか?」

「そうそう。間隔は短いけど攻撃力が低いし、何より必殺技もぱっとしないものが多いっすよね?」

「二本も腰に差しているのは、やっぱり二刀流だからですか? 僕も二刀流なんです」

「杖も二刀流に出来れば良いのに。撲殺ヒーラーしたいです」

 順にユリアちゃん、レイ君、シン君、ユダちゃんが思い思いの言葉を口にする。どうやら話しをする順番がだいたい決まっているらしい。自己紹介の時の順番もそうだった。

「小回りがきいて手数が多いのが俺は好きだからな。逆に一撃重視系はちょっと嫌いだ」

「センさんもそんな感じですよね。やっぱりそんな所は御姉妹ですね」

「いや、それは違うと思うっす。現に、マリリンは火力重視型ですし」

「それは魔法使いだからじゃないですか? 遠くから攻撃するのに小回りと手数が多くてもPT戦だと邪魔になるだけですし。僕はマリリンも接近戦をすれば手数が多い方だと思います」

「他人の事はどうでもいいです! 私は杖で早く滅多打ちしたいです! フルボッコかむ!」

 いやはや、人が多いと会話が多い。会話が多いと時間が早く進む。

 時間が早く進むと、それだけ屠られていくモンスター達の数も多くなる。というか、何気なく雑談をしながら遭遇するモンスター達を片っ端から屠っていく4人の姿は、まさに熟練者。この辺りの敵が弱いというのもあるとは思うが、残念ながら俺の出番は全く貰えなかった。

 折角、オートバトルアシスト機能を使用して闘ってみたかったのに。こりゃ、明日までお預けになりそうだ。

「って、あぶな! マリリン、広範囲爆撃をするのはいいけど俺達まで巻き込むなっす!」

 俺達からちょっと離れた場所で殲滅級魔法をバンバン撃って辺り一帯を焦土と化している問題児が手をぶんぶんと振っていた。この辺りにいる雑魚だとわざわざみんなで狩る必要がないので、姪の二人は単独行動中。

 もう一方の姪はというと、先行偵察と称して先に強者どもがいる辺りに突っ込んでいきました。4人が気にしていないのでこれは予定調和なのだろう。

「それにしても、どこまで遠出するつもりなんだ? 結構な距離を歩いてると思うんだが……っ!?」

 ユリアちゃんが後ろから抱きついてきた。おおぅ……女の子って柔らかい。って、おいおい俺は男なんだから、女の子同士のスキンシップは厳禁だよ。見かけによらず同姓同士なら意外と積極的にくっついてくる女の子のようだ。やっぱり俺が男の子だって信じてくれないんだなー。嬉しいやら悲しいやら。

「カズミさんは、あまり街から出たことがなかったんですよね? これぐらいは普通ですよ」

「だよなー。一日15時間も遊べるからなのか、やたらとこの世界ってでかいんだよなー」

「まだ目的地の半分も来ていません。休憩が必要ですか?」

「あ、私もカズミンと」カズミン!?「いちゃいちゃしたーい」

「俺は男だ。その辺の所、節度をもって接してくれな」

 後ろから抱きついたままのユリアちゃんを引きはがしながら言う。しかし今度は前からユダちゃんに抱きつかれた。少女サンドイッチ! というか、俺の話を聞け!

「あ、カズねぇがエッチぃことしてるー。いーやらしいんだー」

「助けろ、マリリン」

「やだ。私も混ざるー」

「はいはい、お巫山戯けはそれぐらいにして。団体さんがお見えですよ」

 シン君の言葉で俺の身が救われた。後でシン君には何かお礼っぽい事をしてあげよう。……抱きついてあげれば十分お礼になるかな? いや、止めておこう。俺の中の何かが失われる気がする。

「境界越えたみたいだね。ここからはちょっと本気モードだねー」

 ちょっとなのに本気って、言葉として間違ってるよねぇ。

「それじゃ、レイいっきまーっす!」

 いきなり姿がパッと変わったレイ君が、そう言って敵に突っ込んでいく。今まで軽装スタイルで右手に剣、左手に小さな盾だったのが、本装備に切り替えたのか全身鎧に強大な盾を持った重戦士スタイルになっている。剣の方も見た目のグレードが変わっていた。

「喝!」

 そして気合い一喝。恐らく挑発系のスキルだろう。一斉に敵の注意がレイ君に向く。

「左は僕が行きますね。でも右は……」

「私は帰ってきた!」

「センねぇ、おかえりー」

 突如、空から降ってきたショートカットヘアーの剣士が敵の一角に攻撃を叩き込んで意表をつく。

 アハハと苦笑いしながら、シン君も戦闘に加わる。こちらも装備が一新されて、見た目にもちょっと高価そうなデザインになっていた。その両手には、トンファー。ってか、二刀流って剣とかじゃないのかよ!

「援護は任せてくださいね」

 隣を見ると、ユリアちゃんが各種補助法術を唱え始めている。装備は変わっていない。もとから戦闘用の服を着たままだったのだろう。男性二人よりも実はお洒落に気を使っていない?

 これまでの行動から察するに、ユリアちゃんは前衛後衛を両方とも兼用出来る全体サポート系か。ソロでもいけるしPTでもいける。ただし器用貧乏なので扱いにも困る。6人PTで前衛職が既に3人もいるので、今は後衛に回っているという事なのだろう。

「危なくなったら殴ります」

 んで、御前が一番分からん。一応、トゲトゲのついた鈍器ではなくそれらしい杖に切り替わってはいるが、ユダちゃんの服は露出度が多い。これで清純そうな絹のローブとか着ていればヒーラー間違いなしなのだが……。PTバランスを考えても、きっとヒーラーである筈だ。たぶん……。

「喝! シン、すまん。二匹いったっす」「はいはい。これぐらいなら問題ないでしょう」「今宵の剣は血に飢えている」「センは……ま、いいか」「攻撃強化いきますよー」「私も、殺!」「ユダっち、控えて控えて。私も我慢してるんだから」「一匹目、終わりました」「お、早いっすね」「レイさん、獲物が足りません。もっとください」「「センは早すぎ!」」

 うん、戦闘だ。数の暴力は敵さんの方が上だけど、一方的なのはむしろこっちの方。盾役のレイ君が敵を引きつけつつ、少しずつ左右にいる二人にお裾分け。たぶん、1対1なら全く問題ないレベルの敵なのだろう。シン君とセンねぇちゃんは危なげなく敵を確実に一匹ずつ倒していく。

 そして、後衛はやる事がない。唯一ユリアちゃんだけが強化法術を使うだけで、マリリンもユダちゃんも凄く暇そうだった。あれ、ユダちゃん回復は?

「それにしても、数が多いな。というか、多すぎじゃないか?」

「たぶん、街を襲撃しにいく戦闘部隊かな? そういう設定の敵さん」

「放っておくと、本当に街を襲撃してしまうんですよ? 勿論、街には警備兵の方や雇われ傭兵の方達が守っているので、街に入る前に殲滅されてしまいますが」

「今日の運勢は、最高」

 いやいや、あれだけ数の揃った戦闘部隊が普通にフィールド闊歩してるって。ソロで出会ったら、フルボッコ完全アウトじゃないですか。この世界、厳しすぎるよ。

「まぁでも、滅多に出会えないからねー。ユダっちの言う通り、今日の私達は本当に運が良かったのかもね♪」

 二十匹を越える大部隊クラスの敵を、たった3人で軽く圧倒するって。弱肉強食世界といっても、限度はあるだろうに。敵さんが可哀相に思えてきた。

「あ、そだ。折角だから、カズねぇに今の私の最大魔法を見せてあげるね!」

「え?」「あ、やばい……」

『赤き者、紅に染まりし汝が力を……』

「緊急警報! 緊急警報! レイ以外はすぐに待避して!」「え?」「あ、やっぱり……」「もう、いい所だったのに。また美味しい所を持ってっちゃうのね、マリリン」「ちょ! 俺は待避しちゃダメっすか!?」「盾が抑えてないと、みんなばらけちゃうし」「後で私が一生懸命殴ってあげます」「そういう問題じゃ! って、ああ!」「もう遅いですね」

『いっけぇぇぇ! プチプチメテオーーー!』

 瞬間。ズドーンという音と共に、空から急襲してきた小さな隕石が、敵部隊のど真ん中を盛大に吹っ飛ばした。その吹き飛ばされた者の中には、勿論重装備の戦士の姿も混じっている。重たそうな鎧なのに、爆発で空中に軽々と浮かばされてクルクル回ってたよ。

 というか、凄い演出だな。呆然と俺は事の成り行きを見ちゃっていた。

 しかし驚くのはまだ早い。流石はゲームの世界という所なのか。

 あれだけに威力を受けて吹き飛ばされたのに、HPを0にする事が出来なかった敵達が次々と身体を起こしていく。ちょっとよろけているけど、まだ大丈夫そうだ。その彼等は、再び手に武器を取り、とある一点に向かって集まっていく。

「うわ! ヘルプ! ヘルプっす!」

 向かった先は、まだ起き上がれないでいる重装備の戦士君。重たい鎧が邪魔して起き上がる動作が遅れたのが致命的だった。レイ君の姿は生き残った敵数体に囲まれて消えていく。

「ふふふふ……」

 しかし何故かその中に、ユダちゃんの姿が混じっていた。何やら意味不明の罵詈雑言を呟きながら、周りにいる敵君達と一緒にレイ君をどついている。

「いや、あれは放っておいても良いものなのか?」

「スキルと防具のレベルをあげるためですから、仕方ないでしょう。あれだけ頻繁に攻撃を受ければ、修理した時のグレードアップも結構凄いですから。死んじゃったら意味ないですけどね」

 そうじゃなくてね? ユダちゃんが加わってる事の方を俺は聞いているんですけど。一応、君達は仲間じゃないんですか?

「ああ、ユダっちの事? あれはあれでいいんだよ、カズねぇ」

 俺の困惑した瞳の意味に気がついてくれたマリリンが答えてくれる。続く言葉はセンねぇちゃんが。

「ユダリンが持ってる杖は、相手を叩く事で回復するタイプのものです。発動させるためには専用のスキルも必要ですが、詠唱なしで大きく回復する事が出来るので、こういう場合には重宝するんです」

 いやいや、だとしてもだね。敵と一緒に罵詈雑言を吐き捨てながら殴られるってのは、かなり精神的にくると思うんだけどー?

「あと、実はあの二人、リアルでは恋人だったりもするんですよ。だから、あれはあれで一つの愛の形なんです」

 そんな愛の形はいらない!

「あーなる事が分かってて、レイレイは過剰にヘイトを取るんだよね。だからこっちには敵さんは全然向かってこないし。強敵相手なら兎も角、普段からヘイト取りすぎるのはどうかとも思うんだよねー。私達もスキルや防具のレベル、少しはあげたいのに」

「だからたまにマリちゃん、あーして憂さ晴らしするんです」

「時と場合を選んで節度を持ってやってくれれば、僕達もあんまり困らなくていいんですけどね。これはこれで楽しいですけど」

 つまり、所構わずその時の気分でぶっ放すと。御免なさい、姪の一人が迷惑かけてます。

「センねぇもたまにするよねー。しかも開幕に」

「一騎当千は夢ですから」

 御免なさい。もう一方の姪も大きく迷惑を掛けてました。

「そろそろいいかな? カズねぇも少し叩いてみる?」

「ん? 大丈夫なのか? 急にこっちに向いて襲い掛かってきたりしないのか?」

「え? あ、違う違う。叩くのレイレイの方。すかっとするよ?」

「遠慮する!」

「では、リグボルトの方を叩いてください。ヘイトの方は、今もレイさんがスキルを使って引きつけているので大丈夫です」

 ああ、何やらずっと悲鳴みたいな声をあげてるのは、そのためだったのか。

 ……レイ君、本気で悲鳴をあげてる訳じゃないですよね? 結構、真に迫ってる声に聞こえるんですけど?

「んじゃ、ちょっといってくる」

 ちょうどいい。オートバトルアシスト機能をオンにして斬ってみよう。

 ところで君達の名前はリグボルト君というのだね。ではちょっと失礼しますよーっと。

 システムをオンに切り替えて、意識を向ける。しかし何も起こらない。えっと……攻撃的な意識を向けないといけないのかな? あ、動いた動いた。

 足が勝手に動いて深く踏み込む。一気に加速。右手を振りかぶって、斬! うぉ……まるで俺の身体とは思えないぐらいに動きが洗練されている。しかも手応えが凄い。これがオートバトルアシスト機能というやつなのか。

 しかし、左腕の方は動いてくれないのか。やっぱりこっちの腕を使うには二刀流のスキルが必要なのかな?

 少しして、また右腕が動いてリグボルト君の身体を斬る。鋭い一閃。斬ったという感触と、斬り終わりましたっていう動作の終点が感じられる。凄い凄い。

 でもやっぱり違和感は半端なかった。自分の身体が誰かの手によって勝手に動かされているという感覚は、慣れてないと酷く心のショックが大きい。そのショックに驚いている間にまた身体が機敏に動く。そのループ。

 ていうか、マジでやばい! これ、心の負担が半端ないよ!

 咄嗟に俺はシステムをオフにして、無理矢理リグボルト君の前から逃げ出した。

♪御意見、御感想をお待ちしています♪


リン「リンちゃんと」

チー「チーちゃんの」

「「あとがき劇場スーパー!!」」

リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」

チー「ドンドン、ぱふぱふ」


リン「だいだいだいだいじゅうきゅうわ! ったら第19話♪」

チー「いきなりですが、少し裏話です」

リン「ん? どしたのチーちゃん」

チー「二刀流スキルの事に関してです。ユダちゃんがちょっと問題発言を……」

リン「あー、撲殺ヒーラー願望の件ね。なんとなく私は分かるけど」

チー「リンねぇは撲殺ウィッチの気来がありますからね」

リン「うん、杖で叩くとスッキリ! こう、ボコっていう手応えがねー」

チー「そんな事は今はいいのです。二刀流スキルの件なのです」

リン「二刀流がどうしたの? 持てばいいじゃん、杖二つ」

チー「それがですね、そこには実は問題がありまして……」

リン「あ、そういえばユダちゃんもそんな事言ってたね」

チー「です。実は多くの杖は二刀流には出来ないのです」

リン「え、どうして? 同じ事言うようだけど、持てばいいじゃん杖二つ」

チー「はい。持つ事は出来ます。でも、それだとただの棍棒になっちゃうのです」

リン「ん? どゆこと?」

チー「リンねぇの持ってる杖は、火玉杖でしたのよね?」

リン「うん、そうだよー」

チー「使うと何か効果があります?」

リン「あるよー。小さな火の玉を出す事が出来るよー。勿論スキルが必要だけど」

チー「二刀流にすると、それが使えなくなります」

リン「え、なんでっ!? ダブル火の玉とか出来ないの!?」

チー「です。リンねぇの杖には、系統種の中に片手棍はありませんでしたよね?」

リン「……うん、今また見てみたけど、やっぱりないね。両手棍だけだ」

チー「その場合でも、片手持ちのスキルを覚えれば、片手で持つ事は出来ます」

リン「覚えなくても持つだけなら出来るけどね。あ、でもそういえば……」

チー「片手持ちスキルがなければ、両手で杖を持たないと火の玉は出ないです」

リン「あー、あれってそういう理由だったんだー」

チー「意外とこの点は落とし穴なんです」

リン「あれ? でもそれなら、片手持ちと二刀流スキル覚えれば問題なくない?」

チー「それが問題あるのです。大問題なのです」

リン「えー、大問題なんだー。何がいけないのー?」

チー「相性が悪いのです。両手武器と二刀流スキルの相性が」

リン「相性って……そんなのあるの!?」

チー「あるのです。やはりいくらスキルでも出来る事と出来ない事があるのです」

リン「でも、両手剣を無理矢理二刀流にして闘ってる人いるよ?」

チー「振り回されてるだけにも思いますけど……。それはたぶん大丈夫です」

リン「え、なんで!? ずるい!」

チー「ずるくはないのです。リンねぇの杖も二刀流して振るうだけなら問題なしです」

リン「……なんだか頭がフィーバーしてきた」

チー「パンクじゃ……」

リン「振るうだけって事は、火の玉はやっぱ出せないの?」

チー「です。それと、二刀流スキルで覚える事が出来る技も使えます」

リン「えーと……それじゃつまり……」

チー「杖そのものに秘められている力を引き出す事が叶わないという事ですね」

リン「となると、ユダちゃんが二刀流になってレイ君を杖で殴っても」

チー「回復出来ず殺してしまうだけですね。と言ってもPKは出来ませんけど」

リン「それってどういう事なの?」

チー「ん~……詳しくは次回で良いです? そろそろ時間ですし」

リン「あ、そうだね。もうすぐ終わりだ」

チー「そういう訳なので、このお話は次回に持ち越しです」

リン「うん。じゃ、みんな次回を楽しみにしててねー。それじゃバイバーイ」

チー「失礼致します。お粗末様でした」



♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪

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