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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第一節 『VALKYRJE SONG』
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幼女 to Encount

 あれから二日。チュートリアルクエストでお世話になったお爺さんと、すっかり長閑にお茶をする仲になっていた。やっぱ、ただでお茶や和菓子が楽しめるっていいねー。

 なによりこの爺さん、親切にも色々と役に立ちそうな事を教えてくれる。所謂、初心者のために用意された説明キャラという訳だ。

 このゲームでは同じNPCに数人が同時に声を掛けても、NPCは一人しかいないので一度に全部は答えてくれない。ちゃんと一人分しか応対してくれません。だが立地条件が悪いのか、それとも他の説明キャラがみんな若くて綺麗な男性や女性だったためか、ほとんどこの爺さんの所には誰も来なかった。

 だからいつも俺一人で独占。勿論、全然嬉しくないけど。

 ちなみにこの爺さんと一緒にいると、俺もここに来たプレイヤー達にNPCと間違われる事がたまにあります。それぐらいにはNPCってリアルなんだよな。

 もはや俺の休憩所と成り果てた爺さん宅を出て、また狩りに出掛ける。

 街の北門を出て、おなじみの蟻くんのいる場所へ。俺は弱いので、戦い慣れた相手に御執心。周囲には他にもちゃんと色々なタイプの敵がいたけど、特殊攻撃してきたり刃物系の攻撃が効きにくかったり、空を飛んでたりするので、一番楽な蟻くんにいつもお世話になっています。それに蟻くん、見つけやすいし。

 たまにBGMをドンッドンッと鳴らして蟻くんを呼び出しながら武器を振るう。街中でも使ってみたけど、基本的に他の人にはこちらから伝えるように意識しないと聞こえないみたいだった。驚かすためにマリリンとセンねぇちゃんで試してみたら発覚。

 なので、BGMの熟練度をあげるためにも、街中では常に音を鳴らしている。勿論、自分にだけ聞こえる音で。一度鳴らすと熟練度+0.00001。連続で鳴らしても、一定時間内だと熟練度はあがらない。自分以外の誰かに聞こえるように鳴らしたら、聞いた人の数に比例してほんの少しだけ熟練度も増えた。でも迷惑なのでやりませんよ?

 錬金術の方はというと、実はまだ試していない。だって必要な素材分かんないし。爺さんも教えてくれなかったし。だけど、熟練度は少しだけ上がっています。まだ0.02程度だけど。

 センねぇちゃんの言ってた事が本当だとすると錬金術の熟練度は早く上げたかったけど、他の熟練度あげてたら勝手に錬金術の熟練度もあがるなら、別に良いかとも思ってしまう。時間はたっぷりあるしね。天文学的な値を示してる職業レベルのNEXTに比べたら……。

「そろそろ荷物いっぱいか。帰るかなー」

 蟻くんの身体からアゴとか体液とか(体液って……)を頂いて、袋の中にしまう。物理的にもう満杯です。勿論、便利な四次元ポケットみたいなものもあるらしいけど、それはどうやらスキルらしいです。武器や服は自由に収納/付け替えられるみたいなんだけどね。数制限あるけど。

 ちなみに、蟻くんの身体の中で売れる部位はお爺さんから聞きました。でもすぐには売りません。いつか錬金術で使えるかもしれないし。今はレンタルした街の倉庫の肥やしにしておきますよ。

 袋を背負い、荒野を抜けて街へと戻る。街の名前はエルファシルだとさ。東に海がある港街です。

 途中、鳥さんとか泥人形さんとかが襲ってきたけど無視無視。全力で走ればなんとか逃げ切れる。囲まれたら死に戻りになるけど。少し前までお金を預けてなかったので、随分と損をしていました。特典サービスも知識がなければガッカリ感+仕様だよなー。

 門を開けて貰って街に入る。

 目的地は当然、荷物預かり所。お金もその隣にあった銀行に預けてます。利息がなくて手数料だけ取られる仕様だったのはちょっと残念だった。しかも他の街に行くと使えないらしいし。その街ごとで預ける必要があるんだとさ。しかもある程度大きな街にしかない。だから、遠くの村とかで良い物が見つかっても、戦々恐々としながら大金を自分で持ち運ばなければ手に入らない。PK横行しそうだなー。

「ねぇねぇ、お姉さん」

 まぁ、やっぱり俺には関係のない話だな。そんな遠くまでたぶんいけないし。俺はチマチマとこの街で生計を立てて生きていきますよっと。

「ねぇねぇ、お姉さん」

 そうか。この街で家を買うってのも一つの手だな。いったいいくらぐらいだろうか?

「ちょっとちょっと! ねぇってば!」

 億だったらやだなー。ちょっと小さくてもいいから、せめて百万ぐらいで手に入れたい。いや、店か工房を持つってのもいいな。折角、錬金術が使えるんだしね。

「くぉら! 無視するんじゃねぇ! キーーーーーック!」

「うぉ!?」

 (すね)が猛烈に痛い! 何だ!? 何が起こった?

「あ、やっと気が付いた♪」

「……声はすれど姿は見えず。なんだ、空耳か」

「そんな訳あるかい!」

「冗談だ。そんなに怒るな、おチビさん」

「チビって言うな! 気にしてるんだから!」

 見ると、小さな女の子が目の前に立っていた。背はセンねぇちゃんよりも更に下ぐらい。俺の胸よりも下。ああ、だから気が付かなかったのか。

「それで、何の用だ? おチビちゃん」

「ぐ……まだ言うか」

 見た目ほど精神年齢が低くないことを俺はもう見抜いている。だって、言葉遣いがねぇ? それに一応、背はある程度調整する事が出来るのも分かってるし。それで本当に大丈夫なのか?っていうぐらいのプレイヤーも見掛けた事がある。ありゃ、ドワーフをイメージしてたのかなー?

「俺は暇なんだが、用件があるなら早くしてくれよな」

「暇なのに早くしてくれって……ていうか、その姿(なり)俺っ娘(おれっこ)設定なんだ。お姉さん、通だね」

 間違っても通じゃねぇよ。

「俺は男だ」

「このゲームでは性別は弄れないよ。男性なら、その胸の大きさも無理」

「ただのバグだ、認めろ。じゃないと殺す」

「そんな事で殺さないでよ! というか、ありえないからね。ま、そういうプレイしてるって事は認めてあげるから安心して。私もそうだし」

 おチビの幼女がクルッと回ってキュートに笑む。

「幼女プレイか」

「幼女じゃない! それにこの背は自前だ! くそ……だからリアルのままの容姿は嫌だって言ったのに。いくらお金を出してくれるからって、お母さん特権使うなんて卑怯だよ」

「ナイス、お母さん」

「棒読みで言っても、傷付くのは傷付くんだからね! ああ……声なんて掛けなかった方が良かったかな。お姉さん、綺麗だったから騙された……」

 後の方は尻すぼみに小さくなっていったけど、うん、聞こえてるからね?

「さて。魔王でもチャチャっと倒しに行くかな」

「何事もなかったかのように、サラッと嘘付かないで!」

「ならさっさと本題に入れ」

「……やっぱりやめた。お姉さんの相手してると、かなり疲れそうだし」

 勝手に声かけてきて、勝手に終わらすなよ。

 逃げるように立ち去ろうとした少女の肩をガシッと掴んで引き留める。

「逃がしはせんよ。さあ用件を言え」

「うわー。お姉さん、B型の自己中だね」

「いや? 他人への思いやりの強いA型だが?」

「それ、B型の特徴だよ……」

 だって適当に言ったんだもん。そうか、B型って思いやりが強いんだ。自己中なのに?

「……はぁ。じゃあ、用件だけ言うね。お姉さんが持ってる武器、かなり草臥(くたび)れていると思うんだけど、修理してあげよっか? いらないよね? はい、さようなら」

「そうか、ありがとう。まさかただで修理してくれるとは、なんと心の広い幼女だ。感激で涙が出そうだよ」

「だから、私は幼女じゃないし、ただでもないよ!」

「しかし、既に君は心に決めている。俺に人生の全てを捧げる事を」

「そんな怖い人生やだよ! ちょっと声かけてみただけの人に私の人生捧げないよ! 私の人生返して!」

 うーん。面白い子、見つけたなー。フレンド登録しておくかな。

「まあ、血の契約書は後で作るとして。武器を修理してくれるのか、ありがとな。いくら必要だ?」

「だからそんなの作らないって! ……えーと、ちょっと見せて貰ってもいい? それが何の武器か、どれぐらい草臥(くたび)れているのかでちょっと変わってくるから」

「なんだ。武器が草臥(くたび)れているのは分かるのに、名前までは分からないのか」

「そういう設定だし。他人の能力や装備は、その人が許可しないとどうやっても見れないんだよ? お姉さん、初心者なんだね」

「始まったばかりのゲームに初心者も玄人もないだろうに」

 そうだけど……。という疲れた言葉。なんかその先にまだ言葉が続きそうだったけど、さてなんだろうな?

「わ、凄いね……。お姉さん、特典武器持ってるんだ。しかももう耐久ほとんどないし。こっちの初期装備も、どうやったらここまでボロボロになるまで使い込めるんだろ。普通、出来ないよ?」

「そうなのか? まぁ俺は初心者だからな。新しい武器を買うのをただ忘れてただけかもな」

「それ、絶対に忘れてた人が言う台詞。といっても、そういうのは珍しい事じゃないけど」

 身に着けてる装備も初期のままだしな。プレイ開始から30時間以上も経ってるのに、まだ初期装備でいる人は、俺ぐらいなものだ。流石にもう街の中では見掛けなくなってきた。もっとも、頻繁に必要なクラスチェンジでレベル1になる事が多いので、レベル1装備の需要はまだかなりある。ただ単に防御力が低くて何のボーナスもない初期装備だけが淘汰されてしまっているだけです。俺がそうしないのでただ貧乏性なだけ……。

「そう言えば、まだ名前を言ってなかったな。俺はカズミだ」

「リンネだよ。お母さんからはリンちゃんって呼ばれてる」

「改名を要求する」

「なんでよ!」

 いや、だってねぇ? マリリンのリアル側と被ってるじゃん。紛らわしいよ。

「で、カズミお姉さん。修理の代金の方だけど、ちょっと値がはるけど大丈夫?」

「大丈夫じゃないか? 特典サービスの御陰で懐はぬくぬくしてるし」

 結構、死に戻りで減っちゃったけどね。喫茶店でしかお金使ってないのに、もう1割きってるよ。でもこれだけあれば十分ってぐらいには残っている。サンドイッチ百個ぐらいは余裕でいける!

「なら言うけど……」

 ごにょごにょごにょ。

 え!? そんなに!!

「ちょっと警察に行こうか、お嬢ちゃん」

「いっとくけど、ぼったくってないからね? むしろ、驚きの良心価格。スキル上げ目的で声掛けてるから、儲けなしの価格なんだよ?」

「しかしだな……」

 それを払うと、残金が酷いことになる。いくらなんでもその金額はないだろう?

「素材持ち込みなら手数料だけでいいよ? でもお姉さんの使ってる特典武器って、今だとまだレア素材だから全然出回ってないし。私はお母さんや最近知り合った友達から少し融通して貰ってるからたまたま持ってたけど、たぶん探しても見つからないんじゃないかなー」

「あー、分かった分かった。どうせゲーム内通貨だ。たまにはパパッと使ってやるよ。この悪魔め」

「割増料金取るよ!?」

 リンネちゃんの気が変わらない内に銀行へと向かう。全額引き落として、腕をガッチリと掴んでからトレード。

「持ち逃げしないって」

 聞く耳持たず。ああ、決して幼女と手を繋げる事が目的だった訳じゃないからな。念のためだ。嘘ではない。

 あれ、何その目。リンネちゃん、何で恥ずかしがってるの?

「じゃ、こっち。流石に携帯してる修理道具じゃ無理だから、レンタル出来る設置型の高級な奴を使う」

♪御意見、御感想をお待ちしています♪


リン「リンちゃんと」

チー「チーちゃんの」

「「あとがき劇場スーパー!!」」

リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」

チー「ドンドン、ぱふぱふ」


リン「今日もまっしぐらに第12話♪」

チー「早速ですが……魔法の事について教えて下さい、リンねぇ」

リン「ん~、その前にもうちょっと片手剣の話をしない?」

チー「片手剣のお話ですか? 何か聞きたい事でもあるんです?」

リン「うん。そもそも、片手剣のスキルって何個ぐらいあるの?」

チー「ん~。分かってるだけでも、結構ありますね」

リン「前回聞いたのは、細剣、長剣、突剣の三つだったよね」

チー「はい。他にも木剣、刀剣といった代表的なものがあります」

リン「刀剣は分かるけど、木剣も一つのカテゴリなんだ……」

チー「木製なので打つタイプの剣技になっちゃいますね。斬れないです」

リン「木製で出来た剣だけど、細剣や突剣っぽいのだとどうなるの?」

チー「えと……今はスキルの話をしてるので、剣そのものの話では……」

リン「え? どういう事?」

チー「スキルはあくまでスキルですので。その系統の武器を使うと効果があります」

リン「その系統の武器って何の事だろ……」

チー「えとですね。そもそも武器には一つ以上の系統種を持ってます」

リン「系統種?」

チー「はい。例えば木製の長剣は、木剣でもあり長剣でもあったりしますよね?」

リン「うん」

チー「では、反りのある片刃の剣だと、どうなると思います?」

リン「んー……刀剣と、曲剣?」

チー「それ以外にも、曲刀、太刀、片刃剣、両手剣と見なされる場合があります」

リン「わ、多いね。でも、見なされる場合があるってどういう事?」

チー「剣ごとにどの系統種に属してるかって事です」

リン「うーん……わかんない。もう一声!」

チー「つまりですね……色んな属性を持ってると思って下さい」

リン「この剣は~、木剣と長剣の二つの属性を持ってるのじゃーって事?」

チー「です。そんな感じです」

リン「へー。これは木剣、これは長剣、とかみたいに分けられてる訳じゃないんだー」

チー「それだと、どうしても微妙な位置づけの武器が出来てしまいますから」

リン「あ、分かった! スキルは、その血統種に関係してるんだね!」

チー「系統種です……」

リン「木剣スキルは、木剣の系統種?を持ってる剣に効果があるとみた!」

チー「はい。逆に鉄の剣などでは、木剣スキルは無効になってしまいます」

リン「ところで、木で出来た剣だとすぐに折れちゃわない?」

チー「確かに、武器としての耐久力は低いですね。折れると修理も無理です」

リン「誰がそんな武器使うの?」

チー「その分、安いですから……。生産職のスキル上げでもよく作られます」

リン「なるほどー。使い捨て武器なんだねー」

チー「そうでもありませんよ? 世の中には鉄よりも硬い木がありますし」

リン「へー。そんなのあるんだ~」

チー「勿論、需要はそれだけじゃないですけどね」

リン「うん、勉強になったよ。チーちゃんありがとう!」

チー「お役に立てて光栄です♪」

リン「それじゃ、今日のお話はそろそろ終わりにしようか。チーちゃん」

チー「え、あれ? 魔法のお話は?」

リン「それはまた今度ねー。それじゃ、バイバーイ。また見てねー♪」

チー「さようならです~」



♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪

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