暦の名前
物語とは、事件です。
事件そのもの、事件に伴って持ち上がる問題、関わった人々の反応 。そうした出来事を読み手に伝える説明文が、小説です。
読んだ人に、何が起こったか、何が起きているか、わからなくては意味がありません。
さて、いつ事件が起きたのでしょうか。あるいは、いつ事件が起きるのでしょうか。
時間の名前として、しばしば暦が挙げられます。
よく見るのは、やはり現実に存在する西暦。
西暦は、簡単に言えばキリスト暦です。略号であるA.D.はラテン語のAnno Domini「主の年」。紀元前B.C.は英語のBefore Christ「キリスト生誕前」。いずれもイエス・キリストの誕生日より前か後かが基準です。キリスト教は西洋文化に深く根ざしたものというわけですね。
そんなわけですから、時代劇に西暦が使われる場合、主人公の属する勢力は自動的に西洋の文明ということになるのです。
日本国内を舞台とし日本人が主人公である物語で西暦を持ち出すのは物語の破壊に他なりませんが、西洋人を主人公として動かす場合は、非常に簡単でスマートな舞台説明となることでしょう。
また、日本は、天皇が新たに立つたび、新たな暦が始まります。
思想信条の上で異論を持つ方もおられるでしょうが、暦に限って言えば日本は後述の王制に近い形の国なのです。
世界観を和風にしたいがために、数字の大きくしやすい直近の年号を使用する(例えば西暦2013年を昭和87年と表記する)のは、あまりおすすめしません。既に崩御された(亡くなられた)はずの天皇が生き続けている世界であることを同時に意味しますので、生き続けている理由付けも必要になるからです。
続いて、書き手が一から作り上げた世界の場合です。いわゆるファンタジーが該当するでしょうか。
暦は、文明レベルの低い場合は宗教的、高い場合は政治的な節目や時代背景に影響されやすいものです。
前者は剣と魔法のファンタジー世界が代表的です。
こうした世界観ではしばしば王や皇帝といった指導者の在位を基準に年号が改められますが、これは王が建国の経緯としての武功や霊性に基づき最高位の神官を兼任しがちなためで、王の代替わりは宗教的な節目と考えて差し支えありません。
後者は未来のSF系の話に用いられやすい考えです。
国の垣根を超えた惑星レベルの統一がなされた、あるいは人類の勢力圏が太陽系外へ広がり始めたことをきっかけに新たな暦を施行するというのは、ありうる話です。




