ラーシャSide 再び
目が覚めたとき、これで二度目となる部屋と部屋の間取りが飛び込んできた。
あれ?あたし・・・・・・目の前が眩んで・・・・・・結局ここに戻って来ちゃったの!?
外は夕方だった。
一度起きたときには確か朝だったのに・・・・・・。
横を見てギョッとした。
イリューストがベッドのわきに座りながら寝ていて、明らかに今スグにでも落ちそうな状態にある。
「イリュースト・・・・・・イリュースト!」
「ん?んぁ・・・・・・ラーシャ?」
「そーよ、あたしよ。」
「ああそうだ!ラーシャ、ダルキリが・・・・・・」
イリューストは相当色々な事を言いたかったらしく早口で色々としゃべり始めた。
で、数分後。
「・・・・・・ふぅん、つまり、ダルキリとかいうのにあたし達の事を喋ったわけね?」
ニコリと笑って手をバキバキとならした。
「だ、だって、助けてもらったし、不思議そうだったし・・・・・・それにダルキリは悪い奴じゃないよ。それくらいはわかるんだ・・・・・・それくらいは・・・・・・。」
そう言ってイリューストはあたしから目を逸らした。
「イリュースト?」
「・・・・・・ああ、そういえばさ、ダルキリも言ってたんだけど・・・・・・どうしてあんなに追われてるの?」
その話題に触れられてあたしはため息をついた。
そうよね、確か外はあたしの敵だらけだった気がするし・・・・・・いい加減隠し通せるものでもないもの。
言うなら早いうちが良いかもしれない。
“裏切り者”になる前に。
「実はあたし・・・・・・賞金首なのよ・・・・・・それも高額のね・・・・・・まぁ、条件は無傷とそこに書いてある城につれて行くことなのだけど・・・・・・。」
以前ある町で配られていた手配書を荷物の中から取り出し、イリューストに渡した。
「外国語で読めないけど・・・・・・本当だ・・・・・賞金・・・・・・一億・・・・・・あれ?一億・・・・・・ええ?一十百千万、十万百万千万一億・・・・・・一億!?な、なななな!なんでこんな大金!ラーシャ、何したの!?」
そう、この一生遊び惚ける事のできる大金を前に追っ手は血眼になってあたしを捜し回ってる。
「大したことしてないわよ。」
「大罪でも犯したの?」
イリューストは相当焦ったらしい。
瞳が結構キラキラしてる。
「まあ、そんなところね。」
「なんでこんな膨大な金額が・・・・・・しかも条件は無傷なんて・・・・・・。」
「あたしを公開処刑にしてさらし首にでもするんじゃないの?」
あたしにとって追っ手に捕まるのはそれと同じ事。
「ええ!?どうしてそんな!ラーシャ・・・・・・君、本当に何したの!?」
「だから大したことしてないわよ。ちょっとムカついたからその手配書を出した偉そうな国王様ってのに少し逆らっただけ。」
「ラーシャ・・・・・・あれ、でもコレ、絵はあるけど、捕まえる相手の名前は書いてないよ?」
「それは!・・・・・・あたしが行く先々で名前を変えるからじゃない?」
「え?じゃあやっぱりラーシャっていう名前は・・・・・・。」
「ウソじゃないわよ。その名前はウソじゃない。ウソなんかじゃ・・・・・・ね。」
そう、嘘ではない。
決して嘘ではないけど、あたしの正式名ではない。
「そう・・・・・・なんだ。」
イリューストはそう言いながら手配書をガン見していた。
「・・・・・・賞金、かなり大金でしょ?だから言いたくなかったのよ。さぁ、どうする?後はイリューストが選べば良いわ。あたしと旅をするか、あるいは裏切るか・・・・・・。」
するとイリューストは顔を上げた。
「裏切るだなんて人聞きの悪い・・・・・・旅をしようよ。言いたくないことを言ってくれたんだ、まだまだきっと僕の知らないラーシャも、ラーシャの知らない僕も、沢山あるだろうけど、一つ一つ知ればいいだけだし。僕はラーシャと旅をしたいと思ってるよ・・・・・・って、僕が言っても格好よく決まらないけど。」
イリューストはヘニャリと笑った。
「本当ね。」
ちっとも決め台詞になってない。
「でも・・・・・・ありがとう。」
初めてあたし単体として受け入れてもらえるところができたかもしれないと思うと、嬉しかった。
でも・・・・・・もちろんイリューストは知らないだけ。
本当はあたしがなにものなのかって事を・・・・・・。
イリューストはあたしの本性を知っても引かないで今みたいに接してくれるかしら。
それすらもわからない闇の中であたしはただ一人模索をしている。
あたしだけを必要としてくれる人を。
真実を知っても一線を引かずにいてくれる人を――…‥。
イリューストはそんなあたしを見ながらボソボソ呟くように言った。
「だいたい、この城に行こうって言ったってラーシャは僕を殺してでも行かない気だろ?」
「あら、よくわかってるじゃない。」
あたしがクスリと笑うとイリューストは目を少しだけ見開いた。
「やっぱり。でもさ、命の恩人を売り払っちゃうって僕ってどれだけ鬼畜だと思われてるの?追われてるなら終われてるで賞金首だって言ってくれれば僕だってまずいと思ってタラタクフからすぐにでも逃げたのに。」
「あら、できるわけないとは思ってたわよ?でもむしろイリューストだから賞金首って聞いた瞬間に引くんじゃないかと思って。」
イリューストはハハッと情けなさそうな顔で笑って手配書にまた視線を落とした。
「・・・・・・やっぱり、お金がほしいの?」
「いや、手配書より本物のほうがきれいだと思って・・・・・・絵のほうが綺麗なのは見たことあるけど。」
「へ?」
あたしは思わず間抜けな声を発した。
全く・・・・・・こいつはだからどーしてこういう事をすんなり言えちゃうのかしら!
聞いてるこっちが恥ずかしいったらないわ。
作「ど~も~」
ラ「どうも、じゃないわよ?前回の続きを聞かせてもらおうじゃない。」
作「前回?忘れたなぁ?」
ラ「忘れたなぁ……じゃないわよ!」
作「とにかくさ、で?賞金首さん、何したんだっけ?」
ラ「あ、あなたは知ってるんでしょ!あたしが……本当は何者なのかって……。」
作「もちろん知ってるけど?」
ラ「ねぇ……イリューストがそのことを知るときは来るの?」
作「いつかは……くるだろうねぇ……残酷な過去と共にさ?」
ラ「残酷な……過去!?まさか、ダイヤモンド・アイに関することじゃないわよね!?」
作「さぁ、どうだろうね?」
ラ「え?でも、あたしとイリューストは過去に関しては何の接点もないのよ?それなのに残酷な過去も何も……。」
作「さぁ?」
ラ「さぁ?がやたらに多いわよ。」
作「そお?」
ラ「そおじゃない!!もういいわ!話にならないなら早く終わらせなさい!」
作「ということで、今回はココまでです。読者の皆様、ありがとうございました。」