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僕は神様、君は人  作者: はんぺん
第1章 望まれぬ献身
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12話 それぞれの役目


帰ってきた部屋の中、窓から淡い月の光がこぼれていた。照らされたベットにモソモソと入り、仰向けで布団を被る。あ、体清めてないけど、疲れたから明日の朝にしよう。



「はぁ……」



フォオナさんと歩いてて好奇の目に晒されたこと。見張り役に対するフォオナさんが怖かったこと。丘登りが大変だったこと。 薄桃色の花畑がとても綺麗だったこと。そして、誰かの笑顔。


どうでもいい事から、そうでない事。フォトナさんは勿論のこと、彼女に似た人と出会った覚えなどなかった。



「……」



窓辺に飾られた、一輪の小さな薄桃色の花。それを花畑で貰った時の、あの不思議な感じ。まるで違う誰かにも貰ったことがあるような感覚。



「始まりは、これだよね」



空色の石の嵌るピアスを天井に掲げて眺める。これをあの家で見せた時の、あの人達の反応はおかしかった。そして、その後のボクへの対応も。クラウスはどこまで、何を知っていてこれをボクに渡したのだろう。ボクに、どうして欲しいのだろう。



「これが社会勉強なのかなぁ」



何故か見覚えのある風景も人との出会いもその一貫なのか。謎ばかりが増えていく。なにより、謎の声の主が気になる。男の声、とても切なくて悲しい声。知りたいことはたくさんあった。



「そうだ、言い伝えも聞こう」



女の子のために命を落とした男の子。なぜ亡くなったのか、という疑問にフォトナさんは答えてくれなかった。ボクの知りたいことには関係無いかもしれないけど、もしかしたらバリバラナが関係してるかもしれない。



「また、明日聞こう」



泣き顔を見せてしまったから、なんとなく少し気まずいな。




「……おやすみなさい」




月の光に照らされた花は、やっぱりどこか懐かしかった。











朝早く起きて魔法でお湯を作り簡単に体をきよめる。そして身支度を整えてダグラスとバロンに朝の挨拶。朝ごはんを食べて、歩きながらでも食べれる簡単な昼食をおばさんから貰って外へ出る。



「じゃあ、今日も丘に行きましょう」



開口一番にフォトナさんは言った。昨日と同じように見張り役を軽くあしらって、ボクらは昨日と同じ道を辿った。




「あの、昨日よりも歩いてる気がするんですが、どこまで行くんですか?」



「あの丘のてっぺんよ」



そう指さしたのは、今いる場所よりも高い丘。その丘の向こうには空だけが広がり、ここら一帯で一番高いかもしれないと予想出来た。



「あそこからは小さな泉が見えるの」



「泉ですか? 行けたりは━━」



「しないわ。ただ、見るだけ。崖の下にあるから危険なの」



ボクの言葉を遮ってフォトナさんは言った。固い声で発せられた言葉は重く、静かな時間が流れた。



「……昨日、話したでしょ」



その空気を壊すようにフォトナさんは続ける。



「男の子が命を落としたって。その場所が、あの丘の崖だと言われているの」



「そ、そんな所にどうしてボクを……」



何故ボクをそこに連れていく必要があるのか、ボクはもちろん聞いた。



「それが、たぶん私の役目なの。私にも全ては分からない」



━━━でも、それが証拠。



フォトナさんがそう言って見つめたのは、ボクの左耳。たぶん、空色の石。



「前に、これを見てから皆さんの態度が変わりましたよね。この石になにかあるんですか?」



「『空色の石。それを持つものの望みをできるだけ叶え、支えなさい。そして花畑と泉を見せなさい』」



「……え?」



「リドリー家ができてから代々、産まれた女児に聞かす言葉よ。私も娘に伝えてたわ、もう必要ないけれど」



「……ボクが来たから?」



黙って頷くフォトナさん。クラウスはボクに花畑と泉を見せたかったのだろうか。それならば何故こんな遠回りなやり方をしているのか。これすら、社会勉強と言うのだろうか。よりによって、人が亡くなった場所を。



「男の子は、どうして崖に向かったんですか?」



「ユグルには言い伝えがあるの。『崖下にある小さな泉。そこにはどんな病にも効く美しい果実がある』と。


それを探しに行ったきり帰ってこないから、死んだんだろうって言われてるわ」



「そう、なんですね。女の子のためっていうのは、もしかして、その子が病気に」



きっと、そういう事なのだろう。フォトナさんは頷く。悲しい話だな、と思った。もしボクが集落に居たならば、きっと2人とも救えただろうに。



「勘違いしてると思うけど、女の子は助かってるのよ」



「え?」



「『花弁を食みなさい』と、そうお告げを受けたのはその女の子。そして、私たちリドリー家の祖先でもあるわ。贖罪というのも、男の子の犠牲を忘れないため」



「え、ええ!?」



あっけらかんと告げられた言葉。あまりのことに驚きの声しかあげられなかった。



「男の子が行方不明になってからも病と闘っていた。けれどある日、夢の中に神様が現れてお告げを貰った。いつ頃貰ったのかは分からないけど、彼女の遺書にはそんなことが書かれていたわ」



「神様が……その遺書って、後で読ませてもらっても良いですか?」



「良いわよ、貴方の願いはできるだけ叶えるわ」



女の子の言う『神様』はボクらみたいに、その時代の『神様』だろう。お告げがどんな感じで行われたか分からないけど、その『神様』の能力だったのかもしれない。



気になるのは男の子が居なくなってからそのお告げがされた事。ボクだったら、死人が出る前にお告げやら何かしらの対処をする。けれどそうじゃなかった。


男の子は行方不明になった。そして女の子が貰ったお告げ。関係があるとしか思えなかった。




━━それにフォトナさんに良く似た、黒アザの女の子。ありえない、そうは思いながらも、もしかしたら。




余りにも似すぎていた。フォトナさんの先祖はお告げを貰った女の子。そして、ボクがフォトナさんに被って見えた黒アザの女の子。集落には他の女の子だって居たはずだ。別人だろう、別人に違いないと思いながらも、胸がざわめく。



崖に行けば、何かわかるだろうか。ボクはまだ先にある丘の果てを見つめた。










休憩をしながら丘を登り続けて数時間。朝早く出たのに、もう日が真上を越えている。気温は高くもなく低くもなく丁度いいけど流石に疲れが溜まってくる。対してフォトナさんはまだまだ体力が余ってそうだ。


休憩だってほとんどボクのため。実は現人神として休憩なんて必要ない状態に出来るんだけど、普段はただの長命種だから休憩が必要なんだ。ごめんなさいフォトナさん。現人神体だと人としての五感や欲求が無くなるからあまり好きじゃない。



長いこと歩いてきたけど、そろそろ頂上が近い。心無しかボクは早足になり、フォトナさんもそれに合わせて歩みを進める。





「あまり端まで行かないでね、危ないから」




ついに丘の先までたどり着いた。間違っても落ちないように慎重に下を覗き込む。そこに広がるのは鬱蒼と茂る森の中にポツンとある小さな泉。でも遠目からこの大きさなら、下で見ればそこそこの大きさだろう。



「……んー」



ここまで来たけど、特に声も聞こえないし、何も無いな、そう思った時。




「っ!うわぁ!!」



「っノマ!!ああっ、そんなっ!!」




とても強い風が吹き、ボクは足を滑らせた。フォトナさんが必死に手を伸ばしたけど、ボクは掴めなかった。



そのまま崖下に落ちていくボク。おちつけ、現人神になる必要は無い。大丈夫。下から風を起こせばいいだけだ。



【風の子よ、小さき子らよ。集って吹き巻いて!】



山で魔物を倒した時とは違う、本当に精霊たちにお願いをする。ボクの声に応えてくれた精霊たちが風を吹き起こす。



上手く精霊が風を制御してくれてるらしい。危うげなくボクはゆっくりと地面に付けることが出来た。



「ノマ!!大丈夫なの!?」



「平気です!!魔法でなんとか!!」



上に微かにみえるフォトナさんに無事を伝える。ふぅ、びっくりした。まさか落ちるとは思ってなかった。



「……わ、泉だ」



落ち着いてから周りを見渡すと、後ろには落ちてきた崖、前方には綺麗な泉があった。



「フォトナさん!!ちょっとここらへん見てもいいですか!!」



「遅くならないなら!!」



フォトナさんの許可も得たことだし、泉の周囲を探索することにしよう。


ボクは崖を背にして泉に歩き出した。








誰が為の贖罪、何故に贖罪



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