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前科部!  作者: 蛇猫
進み始める日々と不安
94/108

迷い

新作も書き始めているので、正月頃には投稿できると思います。あっ、『堅物悪魔と契約者』https://ncode.syosetu.com/n5405gl/と『数年前に死んだ筈の幼馴染み、記憶を無くして幽霊として現れました!?【完結済】』https://ncode.syosetu.com/n7622fz/ も宜しく!




「ということで幻中、誕生日おめでとう」


俺は可愛く包装された箱を目の前の少女に渡した。


「・・・あ......ありがとうございます」


それを受け取った幻中は少し、戸惑った様子で頭を下げる。


「わざわざ、家まで来てもらって悪かった」


他の奴らは学校で渡していたのだが、俺のプレゼントは包装に包装を重ねた大きな

箱に入っているのでを学校に持っていくのは難しかったのだ。幻中の家ほど綺麗に

していないので少し、部屋を見られるのが恥ずかしい。


「・・・いえ、嬉しいです。見て良いですか?」


幻中が遠慮がちに聞いてきた。


「おう」


俺が頷くと幻中は包装を外し始めた。俺だったらビリビリと破いているところだが

其処は完璧美少女、丁寧且つ上品にスルスルとリボンを引っ張り、優しく包装の紙を

取っていった。そして、遂に箱の中からあれが姿を表す。


「・・・マフラー、ですか」


「ああ。先輩や蜂須賀にも聞きながら選んだんだ。ほら、これから寒くなるし。

 丁度、良いかなって」


俺の言葉に幻中は沈黙し、マフラーを見つめた。


「・・・・」


「あ、あの、幻中? 気に入らなかったか?」


俺が聞くと幻中は激しく首を横に振った。


「・・・いえ、とても気に入りました。ありがとうございます。

 大切にしますね。ただ......」


「ただ?」


「・・・形に残る物を異性に渡すなんて、度胸有るなと」


……。


「言われたあああああああああああああああああああああっ!」


俺はガンガンと頭を床に打ち付ける。クソ。やっぱり、幾らアクセサリーでは

ないと言っても形に残るものはタブーだったか......。


「・・・止めてください。ほんの冗談ですから」


「じょう、だん?」


「・・・その、確かに先程言ったようなことを思ったのは本当ですが貴方に

 貰った物なら形に残る物でも......いえ、形に残る物の方が嬉しいです」 


その言葉に俺は心臓がきゅっと縮まったような感覚に襲われた。


「あの、幻中?」


「・・・はい」


「無闇矢鱈にそういうことを言ったら駄目だぞ?」


勘違いしちゃうから。というか、惚れちゃうから。


「・・・事実を言ったまでなのですが」


「よ、喜んで貰えたなら嬉しいんだが」


前から思っていたが、幻中の言動はピュアな男子を惑わせる。そういうの、よくない。


「・・・そう言えば、調月さんは?」


幻中が思い出したように俺の部屋を見渡してそう言った。


「ああ、俺はもう少しウチに居ろって言ったんだが、どうせ何時かは帰らないと

 いけないから、とか言ってアイツは電話で母親と和解してから帰った」


メールでやり取りをしているところによると、今のところ彼女の母親はこの前

家出をされたことがショックだったらしく大人しくしているらしい。


「・・・それなら、良かったです。少し、心配していたので」


「メアドも交換したし、何かあったらこの前みたいにアイツがウチに

 逃げ込めるようにしているから大丈夫だ」


「・・・そうですか」


幻中は安心したようにそう言った。


「幻中も親との話し合いでこれからもあの家に住めることになったんだよな?」


「・・・はい。一度も反抗をしたことがなかった私に反抗されたのが衝撃だったようで

 戸惑ったような表情になりながら、引っ越しの件を取り消してくれました」


「なら良かった。納得のいかないことに反抗してみるのも悪くないだろ?」


「・・・そうですね。母に半ば怒りながら自分の意見をぶつけたとき

 体が軽くなったような気がしました」


普段、大人しい幻中に真っ向から意見をぶつけられたら、そりゃあ幻中の親も

ビビるだろうな。俺も幻中に怒鳴られたら泣く自信がある。


「そっか。幻中が自殺しようとしてたのも結構、前の話なんだなあ」


一、二週間前のことのように思える。あの時は流石に驚いた。


「・・・あの時は、本当にありがとうございました。あの時、貴方が止めてくれて

 いなければ今、私は此処に居なかったかもしれません」


此処には居なかったかも、なんて言葉を現実で聞くことになるとは。

それも割りとガチで有り得たから笑えない。


「どういたしまして。はあ......ふふっ」


「・・・どうかしましたか?」


「いや、六月に俺が転校してきて初めてお前と出会った日にはこんなよく分からない

 日々を過ごすようになるとは思わなかったな、と思って。だって考えてくれよ。

 前科部とか言われてるよく分からない部活に入部して? 初めの方は部活動を

 再開させるためにめちゃくちゃ苦労したんだぞ? 初めの方は幻中も俺を虐めから

 遠ざけるために冷たかったしさ~」


今も幻中はたいして変わっていない気もするが、それでも確実に今の方があの時の

幻中よりもフレンドリーだ。無口、無表情マスターの俺が言うのだから間違いない。


「・・・すみません」


「いや、別に怒ってる訳じゃないけど。ただ、感慨深いなと思って」


山本夢華らによって濡れ衣を着せられたり、幼馴染みが転校してきたり、部活が

崩壊の危機に陥ったり、本当に色々なことがあった。おい、世界。これ、上里さん

じゃないと捌ききれない量のイベントだからな。バランス調整しろ。そんでもって

詫び石渡せ。ガチャ10連分で良いから。


「・・・でも、まだ私達が出会ってから半年も経っていないんですよね。

 多くのことがありすぎて時の流れが遅く感じますが」


「うんうん。ゾッとする」


俺は苦笑しながら素直にそう言った。


「・・・私はかなりの期間、貴方と付き合ってきましたが上里祐也という人間が

 まだよく分かりません。何を考えているのか全く分からないというか」


「それな。分かる。自分でも思ってるから」


「・・・え?」


「いや、俺ってなんか道化師っぽいところあると思ってさ。有馬に近いというか。

 何と言うか。ただ、ちょっと人をからかうのが好きだからこうなっちゃうんだ。

 別に闇が有ったり、何か隠し事をしてたりする訳じゃないから安心してくれ」


中学生の頃、道化師的なヒーローに憧れていた時期があったのでそれで

かもしれない。雪加と仮面を付けてよく遊んだものだ。


「・・・そう、ですか」


「というか、俺のことなら俺よりも雪加の方が詳しいぞ」


自分で言いながら中々、可笑しいことを口走っているなと気付く。

だが、本当のことなので仕方がない。俺よりも彼女は俺の性格や

思考を理解している。


「・・・勘解由小路さんは、貴方のことが好きなのですね。貴方の

 性格を分析し、理解するほどに」


幻中は少し俯きながらそう言った。俺は視線を幻中から逸らす。


「みたい、だな」


「・・・彼女の思いに気付いているのなら、何故、貴方はその思いに頷くなり

 かぶりを振るなり、してあげないのですか?」


幻中の声は何処と無く俺を責めるようであった。


「それは......」


俺は苦い表情で唇を噛んだ。


「・・・先日、彼女と蜂須賀さんとショッピングに行ったのですが彼女は

 ことあるごとに貴方の名前を出していましたよ」


「......分からないんだ」


俺はポツリとそう呟いた。


「・・・え?」


「好きとか、そういうの、よく分からなくなったんだ」


「・・・と言いますと」


「此処に来る前の学校に居たときは確かに雪加のことが好きだった。

 アイツを尊敬してて、ずっと一緒に居たいと思ってた」


俺は窓の外に見える空を眺めながら言う。


「・・・今は、そう思わないのですか?」


「いや、今でもそう思ってる。でも、此処に来てからはずっと一緒に居たいと

 思う奴が増えてしまったんだ。俺はずっと一緒に居たいという思いが好き

 だと思ってた。だが、じゃあ先輩や小戸森、調月、有馬、井上達とはずっと

 一緒にはいたくないのかと聞かれると、そうではない。アイツらとも雪加とも

 勿論、幻中ともずっと付き合っていきたい」


「・・・つまり、自分の中で好きという概念の定義が瓦解したせいで自分が

 誰を好きなのかが分からなくなったと?」


「そういうこと」


幻中は少し沈黙し、口を開いた。


「・・・他人の思いには敏感なのに自分の思いには鈍感、ということですか」


「うっせ。うっせ。じゃあ、まもまもの好きって何なんだ?」


「・・・そう聞かれると確かに難しいですね。一応、王道の好きに理由は無い、と

 答えておきます。自分は誰を好いているのか、なんて考えても無意味だと思いますよ。

 好きなんて感情は直感的なものですから」


「随分と詳しいな。恋でもしてるのか?」


「・・・どうでしょう。しているとしても、叶わぬ恋だと思います」


叶わぬ恋、って時点で完全に相手は俺じゃないな。知ってました。ええ、はい。


「そっか」


「・・・はい。では、そろそろおいとまさせて頂きますね。素敵な誕生日

 プレゼントをありがとうございました」


「おう。俺も自分の思いを話せてスッキリした。ありがとう。じゃあな」


俺が玄関で帰る幻中に手を振っていると、彼女は不意に此方を見て


「・・・なるべく、早く自分の思いに気付いて下さいね」


と、言い残して出ていった。








さあ、俺は誰に恋をしているのだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやー試験期間でなかなか見る機会がなかったですけど今回も面白かったです
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