進路相談
オンラインゲーム。それは、ネットワークにより世界中の人間と繋がりながら
ゲームをプレイできるというとても画期的なゲームだ。かくいう俺も早い内から
パソコンを買い与えられていたことも手伝って、俗に言うネトゲ廃人なのだが。
最近、ギルドの運営という物を始めた。といっても、メンバーは俺を
合わせてたったの二人。俺のアバターである『堕天魔狼ルシルガンド』と
『堕天魔狼よ、かの武器の奪略へと私は行く』
丁度今、チャットを送ってきた『凛冽の吸血鬼ロスト・ヘル』だ。
『要するに、ドロップ狙いにボス討伐の周回に行くと。分かった、俺も行く。
後、その呼び方やめろ』
このゲームは一度作ったアバターの名前を変える場合、課金が必要なのだ。
さらっと付けてしまった名前だが、コイツに見られるならもう少しマシな
奴にすれば良かった。
『じゃあ......祐也、と呼べば良い?』
『リアルの名前で呼ぶのはNG。ルシルとでも呼べ』
『分かった。ルシル。早く行こ』
もう、察しは付いているだろうが『凛冽の吸血鬼ロスト・ヘル』とは
勘解由小路雪加のことである。
『お前......確か、オンラインゲーム所かゲーム自体始めてなんだよな?』
『そうだけど?』
『適応するの速すぎ。後、武器は兎も角としてプレイヤースキルが
3年前からやってる俺に追い付き始めてるって何』
何故、俺が勘解由小路とオンラインゲームなんかをやっているのかと言うとそれは
少し前の出来事に関係する。盟約を彼女交わしてからの勘解由小路は俺への態度が
気持ち悪いほどに軟化していった。今の彼女からあれほど冷たくて、棘のあった頃の
彼女の面影を見付けろと言われる方が難しいくらいに。そして、俺への態度の軟化と
比例するかのように勘解由小路のヲタク&中二病化も進んで行った。
元々、俺の好きな物を知りたいという好奇心から見始めたライトノベルやアニメだった
らしいのだが其処にドハマリしてしまったのだ。しかも俺が見ているアニメが基本
中二的バトル物かギャグ物、後はラブコメ辺りだったので中二病が更に彼女の体を
蝕んだ。後、ギャグ物を沢山みたせいか若干ボケよりになった。
そして、ある日勘解由小路は俺のやっているゲームも一緒にやりたい、と
言い始めたのだ。俺にとってゲームはリアルの知り合いとやるものでは
無いので、当然断ったが何度も食い下がられ、結局俺の好きなオンライン
ゲームを紹介して一緒にやることになったのだがまたそれがヤバかった。
このオンラインゲームはキャラメイキング、衣装等の物に力が入れられている
ゲームなので勘解由小路は俗に言う成りきりプレイを始めて自分の中二病の
進行に拍車をかけた。そして、プレイスキルも日に日に上達。今では単純な
スキルは俺も負けそうになっている。
『ネットでひたすら強い人の戦い方を見たり、小さな小技を習得したり
したら出来るようになってた』
『だからといって、反動技をキャンセルするときの若干の硬直と辺り判定の
変化を利用して相手の技を避けてから、相手の技を外したときの隙に無理矢理
大技を溜めて撃ったりして、推奨レベルを遥かに上回っているボスを
初期段階の装備で倒すとか頭おかしいからな?』
勉強熱心なのは良いが依存性になったりしないか、心配するレベルだ。
『ふっ。凛冽の吸血鬼は驕ることなく常に自らを研鑽する。いずれ
ルシルも倒すから、見ていると良い』
全く......何だか、マトモでツンツンしてた頃の勘解由小路が恋しい。
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「......眠い」
「お前、俺が落ちてからもずっとゲームやってたんだろ。ゲームを紹介した俺が
言うのもアレだが、中学受験をするのなら受験勉強の方に力を入れた方が
良いんじゃないか?」
小さな欠伸をしながら、眠気へと苦言を呈する勘解由小路にそう言った。
「・・・・」
俺の言葉の後に勘解由小路が黙ったのは決して眠気のせいでは
無いのだろう。その証拠に、何処か思い詰めたような顔をしている。
「どうした? 勘解由小路......じゃなくて、雪加」
その質問への返答は思ったよりも早く返ってきた。
「祐也は今の私が祐也にとっての本当の私だって言ってくれたし
両親も私がこの前に頑張って笑顔を見せたら嬉しそうにしてくれていた。
でも、それでも今の私は私でないという感覚も拭いきれない。
刷り込みのように私の体が私のままでいようとする思考を否定してくる」
風が街路樹を薙ぐかの如く、ごうごうと吹いた。風を受けた影響で
鯉のぼりのように棚引く髪に軽く触れながら勘解由小路は遥か遠くを見る。
「刷り込み......ねえ」
「私が私立の中学校に行きたいと思ったのは昔の私が過ごしてた虐められず
友達の居た環境を擬似的に再現するためだったの。そうしたら元の私に
戻れるかもしれないって、思ってたから」
確かに相応の学力が必要になる私立中学なら、虐めを行うような
人間も少ないかもしれないので勘解由小路の考えは間違った物ではない。
「私は、昔の私に戻るために今まで頑張って来た。でもその目標が
無くなった今、どうすれば良いか分からなくなった。テストとか
通知表の具合を見ている限り、合格は手堅そうだけれど......」
成績が良く、受験の合格が手堅い......それはとても良いことの筈なのに
勘解由小路の瞳は憂いを秘めていた。そんな彼女の様子を見ながら俺がポツリ。
「仮に雪加が私立中に行くとしたら、寂しくなるな......」
「え?」
「いや、勿論行く行かないはお前の自由だし、行くなとも言わないが。
なんやかんや、色々とあったけど結構、長い付き合いだろ? 俺達」
勿論、俺は一人でも人生を謳歌できる自信は有るが二年程の間、常に
存在した勘解由小路が居なくなるのは正直言って寂しい。
「......ふうん」
勘解由小路は悪戯気な笑みを口許に浮かべながら、見透かしたように言った。
「もし、私が祐也と同じ中学校に行くって言ったら祐也は嬉しい?」
グイっと、勘解由小路は俺へと体を寄せて来る。
「......察してくれ」
俺がはぐらかすと、勘解由小路はとても不満そうな表情で頬を膨らませた。
何だか、とっても可愛い。
「そう、分かった。さっき言った通り自分が私立の中学に行って勉強をしたいのか
それとも昔の私に戻れるかもしれないから行きたいのか、良くわかってなくて
悩んでたんだけと今、決心が付いた。今まで勉強してきたんだから良いところに
行って損は無いし、私立の中学校に行く」
「......あ、ああそう」
謎のタイミングで決心されたこともあり、かなりの衝撃であった。
まあ、昔から私立の中学を目指していることは聞かされていたのだが
それが現実になろうとしているということに実感を持つのは難しかったので
こうして改めて彼女の口から言葉が飛び出すと驚く物がある。
「何処かの誰かさんも、止めてくれないみたいだし」
俺がどうにか辛い自分の気持ちを抑えて彼女の決めた進路を応援して
あげようとしていた最中、勘解由小路は拗ねたようにポツリと呟いた。
プイッと俺から勘解由小路は顔を逸らす。
「.....!?」
なんと言うか、とても反応に困る。勘解由小路はどういう意図で
今の言葉を言ったのだろうか。
「もしかして......お前、俺が止めなかったから拗ねてるのか?」
「......うるさい」
「いや、俺はお前の考えを尊重しようとしてだな」
理不尽な理由で嫁に拗ねられた夫の気持ちになりながら拗ねた様子の
勘解由小路に俺は弁解をする。
「......私は祐也に無理矢理にでも止めて欲しかった」
通常の俺なら、面倒臭い奴だと切り捨てる場面なのだが
そんな思考も出来ないくらいな拗ねている勘解由小路は可愛い。
どちらかと言うと、小動物的な可愛らしさだが。
「いや、でも......」
「祐也が別に私のことはどうでも良いって言うなら、やっぱり私立に行くけど
『どうしても』祐也が一緒の学校に通いたいって頭を下げるなら考え直すのも
吝かではない」
コイツ、完全に俺の本心を読んでやがる。
「畜生......」
「ほら、どうなの? やっぱり私のことなんてどうでも良い?」
勘解由小路は顔を近づけたまま、クスクスと笑う。昔はもう少し
分別があって奥ゆかしい奴だったのにとんでもない悪女になりやがって......。
「......あー、もう知らねえ! こうなりゃ自棄だ。勘解由小路!」
「へ......うん、何」
理性を吹っ飛ばした俺が勘解由小路を叫んで指名すると、彼女は
ビクリと反応した。
「俺は残念ながらお前みたいに賢くない。努力もしてないんだから当たり前だろうな。
だからお前の行こうとしている中学に俺が六年生の今からしがみつくのは多分無理だ。
さっきも言った通り俺にはお前の進路を決める権利はない。だが、出来ることなら頼む。
無骨でコミュ障でぼっちな俺だが、一緒の中学に来てくれないか?」
俺は一矢報いる覚悟で逆に勘解由小路へと顔を近づけて希った。勘解由小路は一瞬
驚いて固まったが直ぐにまたほくそ笑んだ。
「......甘々な採点で及第点あげる」
「偉く、自分に自信が有るんだな」
「自己評価はきちんとしているつもり。勿論、祐也が私に好意を
抱いてるのも知ってるから。勿論、私も祐也のことは好きだし」
彼女の『好き』とはあくまでも、『love』ではなく『like』の
意である。そして、彼女の言っていることは正しい。俺は彼女に
ある種の好意を寄せている。
「さいですか......」
俺が『ふう』と息を吐き、勘解由小路から目を逸らすと
その瞬間、彼女が聞き捨てならないことを呟いた。
「まあ、元々中学は祐也と同じところに行こうと思ってたんだけど」
「......は?」
元々、俺と同じ中学に行くつもりだった。即ち、私立中に行く気は無かった。
彼女はそんなことを言ったのだ。到底、聞き逃すことは出来ない。
「自分の気持ちが定まらなくて、悩んでいたのは本当。でも、第一候補
として祐也と同じ中学に行くことが決まっていた。私がわざわざ、祐也に
この話をしたのは、その第一候補を祐也に肯定して貰いたかったから」
「おうち帰りゅ」
俺はその言葉を聞くと回れ右をした。
「待って。これから学校有るでしょ? それに悩んでいたのは事実。
祐也に止めて貰えてスッキリした」
慌てたように勘解由小路が俺の手をぎゅっと握って、止めてくる。
初めて触れた彼女の手はとてもふにゅふにゅしていて気持ち良かった。
「はあ......あっそ。じゃあ、お前は私立には行かないんだな?」
「うん。祐也が私が居なかったら生きていけないって言うから
仕方なく、一緒に居てあげる」
そんなことは誰も言っていない。
「馬鹿」
「祐也より成績は良い。特に算数と理科」
「うっせえ。算数と理科はマジで意味不明なんだよ、仕方ないだろ」
図形、倍数、電球、植物......考えただけで頭痛がする。社会や国語は基本的に
読み取ったり、暗記するだけだがあいつらは違う。脳死では挑ませないとばかりに
応用問題が構えていやがるのだ。
「じゃあ、私が教えてあげても良いけど?」
「雪加教えるの何か下手そう」
ネットならば(小並感)と付きそうな、イントネーションで俺は言う。
実際に小学生なのだから、語彙力に関しては許してもらおう。
「確かに話すのは得意じゃないけれど教えるのは自信が有る」
「いや、話上手じゃないと教えるのも上手じゃないんじゃないか?」
全く持って遺憾である、と言わんばかりに勘解由小路は唸る。
「......ぬう。そんなに言うなら、一度私の個別指導を受けてみると良い。
数学と理科は中学生の2学期前半くらいまで、予習終わってるし」
「勉強の怪物がよ......じゃあ、また今度教えてくれ」
「また今度じゃ駄目。どうせ、そろそろテストだろうし今の単元だけでも
復習がてら教えてあげるから、明日の土曜日ね」
俺の返事を待たずに予定を立てられてしまった。コイツと将来結婚する
奴は尻に敷かれそうだ。
「ええ......ダルい」
俺は別に勉強が好きな訳ではない。一応、平均は保てるように
しているが言ってしまえばそれだけだ。
「私と同じ高校に行けなくて良いの? 言っとくけれど私は祐也のために
高校のレベルまで落とすつもりは無いから」
「いやまあ、そりゃそうだが......気早いな」
つい先程、私立の中学に行くか行くまいかを話していたところである。
かなり、話が飛躍している。
「中学校は小学生の頃の基盤が無ければ、どんどん分からなくなっていく。
特に数学は。そして、高校受験に出題されるのは中学校の問題。
この意味、分かる?」
「小学生の内に土台を固めておくことが、後の高校受験に役立つと?」
「正解。祐也は私と同じ高校に行きたくないの?」
「そりゃまあ、行けるなら行きたくは有るが」
今日は何故、こんなに小っ恥ずかしい思いを俺はしているのだろうか。
そして、今日の勘解由小路は何故こんなに強気なのか。訳がわからないよ。
「なら、私がせめてサポートはしてあげる。明日は8時から私の家で勉強会ね」
「へいへい。分かりましたよ」
最近、勘解由小路に会話の主導権を握られている感は否めないが
一先ずその気持ちを抑えて、俺は頷いたのだった。
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俺が息を思い切り吸い込み、大きな溜め息を吐くと不意に世界が光を
取り戻した。思い出話をしていると、自棄に現実感が無くなる物だ。
「取り敢えず、俺とコイツが出会った時のこととかコイツが昔の自分と
決別した辺りまでは話しましたよ......」
俺の顔は皆に酷くやつれて見えたことだろう。今思い返すと俺の
過去なんてロクなもんじゃない。只の黒歴史だ。
「言っときますけどこれ以外は俺と雪加のギルドがかなりデカく
なったこととか、雪加が更に中二病を悪化させていったことくらいしか
話すことは無いですからね?」
後日談も話せ、等と言われたら泡を吹いて卒倒する自信が有るので
早い内に予防線を張っておいた。
「えー、もう終わり? 何か、中途半端じゃないかな~」
「ドラマやアニメなんかじゃないんだから、現実なんてそんなもんです。
実際、最後の方の回想に出てきた雪加と今の雪加、そう変わらないでしょう?」
4、5、6年生の頃の雪加の性格の変わり様は凄まじかったが六年生の最後
マイルドになったのを切っ掛けに安定したらしい。
「祐也、その目は何?」
「いや、ツンツンした頃のお前が恋しいなと思って」
「昔の自分とは決別したつもりだったけれど、まさかそっちの方の
私を望まれるとは思ってなかった.....まあ、あの頃の私と今の
私は殆ど同じだから、再現しようと思えば再現出来るけど。
そういうツンデレ枠は雹霞に任せた」
俺に言わせると、調月よりもめぐめぐの方がツンデレだと思うのだが。
「そんな訳の分からない役職を任せられても困るのだけれど」
調月が困惑したように文句を言うと、突如先輩のスマホが音を鳴らした。
「あわわっ! あ、宗里先生からだ」
突然の電子音に先輩は取り乱しつつも、メールの内容を読み上げた。
「えーと何々。『連絡、遅れてすまん。実は今朝から39℃の熱が
出ていてな。連絡しようにもスマホは車に忘れてきてて家は
マンションだから駐車場まで遠いし、流石にそのまま取りに行くのは
命の危険を感じた。まだ、熱は有るが兄に来てもらって病院に
連れていって貰うから安心してくれ。今日の自然観察は延期だ。
皆に伝えてくれ。本当にすまんな』だって。先生大丈夫かな」
仮にも教師である宗里先生がむやみやたらに生徒を不安にさせるような
比喩を使うはずがないので『命の危険』を感じた、というのは読んで
字の如くなのだろう。
「・・・取り敢えず、お兄さんに病院へと連れていって貰う
みたいなので救急車の必要性は無さそうですね」
「それにしても、39℃ってかなりですよね。季節外れの
インフルエンザとかでしょうか」
そういえばこの前、宗里先生が咳き込んでいた覚えがある。
あれが悪化したと考えるのが妥当だろうか。同時期に俺も体調を
いたのでもしかすると、インフルエンザにかかりかけていたのかもしれない。
看病をしてくれた幼なじみな感謝をしておこう。
「というかあの教師、兄なんか居たのね。意外だわ」
皆が、宗里先生の心配をする中一人だけ全く別のところに
興味を持っている者が居た。
「お前な......」
「何か行動を起こす訳でも無く、只心配するだけなら時間の無駄でしょう?
そんなことをするくらいなら、別の話をした方が有意義だわ」
コイツあれだ。体育の授業で、気をつけと休めを繰り返すのに
文句を言うタイプの人間だ。
「そういえば前に宗里先生両親も兄も皆教師だ、って言ってたよ。
凄い家族だね」
「仮に家族四人が高校教師だと仮定して少なく見積もっても
大体、全員合わせて2400万円くらいの年収になるわね」
「いや、金の計算早いな」
というか、さらっと言っているが高校教師の平均年収を元から
知っているとか、どれだけ金にがめついんだ。仮に、将来自分を養わせる
男の職業を見定められるように覚えているのだとしたらその労力をもう少し
別のところで使ってはどうかと俺は思う。
「ふふ、でしょう。昔から金銭に関する計算だけは早いのよ」
俺は『がめついな、お前』ということを暗に伝えようとしたのだが
何故かその皮肉を彼女は本当に誉め言葉として捉えたらしく
機嫌良さそうにしている。
「・・・それでは、そろそろ解散ですね」
幻中が注文した飲み物を一口啜って言った。
「そっかあ。宗里先生の連絡を待ってたんだもんね。つい、祐也君と
勘解小路さんのお話が面白くて忘れてたよ」
出来ることならばその勢いで、内容までも忘れて欲しい。
「それじゃ、そろそろ解散しましょうか」
俺が荷物を纏めながら、席を立ち上がって言う。
「あの、先輩」
「どうした? 小戸森」
「そういえば、昔の先輩って理科とか算数が苦手だったんですよね。
今の先輩って、どっちかと言うと理系というか......理科が好きそう
じゃないですか。野鳥のことも詳しいし、その辺の変化は何処で
起こったんですか?」
不思議そうに聞く小戸森とは対極に俺はその質問を受け、固まっていた。
「......帰ろうか」
「待って。祐也君、何か隠してるでしょ」
すっと、音も立てずに立ち去ろうとした俺の腕を先輩が
力強く握って止めてきた。てか、先輩の握力つっよ。
「人間は皆、生まれてきたときから死に行く時まで誰にも打ち明けず
己の内に秘めている何か、を持っているのです。俺の『それ』と
先輩は一瞬ですが、接触してしまったのかもしれないですね......」
俺はさっと前髪をかきあげて、言葉を口にした。
「ごめん。ちょっと何言ってるのか分からない」
「祐也は都合が悪くなると、なんちゃって哲学で逃げ切ろうとする」
「なんちゃって哲学言うな。なんちゃって哲学」
俺の哲学の前にはカントもニーチェもアリストテレスも
膝まずくと言うのに、なんと言うことだ。
「因みに、勘解由小路さんはコレが何故、頑なにそのエピソードを
話したがらないのか知っているのかしら? 先程までの回想で
既に黒歴史と言える、黒歴史は全て見せられた気がするのだけど」
「確かに、さっきの話も結構祐也は恥ずかしがってたけど
野鳥に関する辺りは更に祐也が悶え苦しむエピソードになる」
「え、何それ聞きたい!」
先輩が目を光らせて、好奇心を露にした。ああもう、無茶苦茶だ。
「あの時の話は特に、私が恥ずかしがる内容は入ってないから
私の口から話してあげる」
「おい馬鹿、やめろ」
「え、本当!? やった。聞かせて!」
「・・・部長、あまり人の過去を詮索するのは......」
子供のようにはしゃぐ、先輩に幻中が静かな声で諭した。
流石、幻中。教養のつき方が違う。
「玲奈、大丈夫。祐也の保護者である私が許可するから」
「何時からお前は俺の母親になったんだよ!」
俺達の小競り合いを見ながら、小戸森が居心地悪そうに言った。
「......もしかしてボク、余計なこと言いました?」
「ああ、大分に余計なこと言ってくれたぞ。お前」
俺は何時も小戸森に向けられているジト目を逆に向けてやった。
アニメや漫画なら絶対に『ジトー』という、オノマトペが入るはずだ。
「す、すいません」
「じゃあ、白嶺も気になっていると言うことで早速祐也がどうやって
今の祐也になったか教えてあげる。さっきまで私のことばかりだったし」
どう考えても八つ当たりでしかないがその日俺は公開処刑をされるときに
常に目の前にあった蓬団子が少し嫌いになった。
翼蛇猫:前科部 幽霊憑き 小説家になろう としてTwitterやってます。どうでも良いこと
呟いているので、暇があったら見てみて下さい!
また、今回もかなり投稿遅れましたが、今回は何時ものような
時間が無かったのではなく単純に文章が浮かびませんでした。すいません。
体の調子が少し悪いので、今回の後書きはこれくらいにして評価、ブクマ、感想
お願いします。




