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前科部!  作者: 蛇猫
そして前科者『上里祐也』は鳥好きになった
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You're the only one


「上里祐也」


寝惚け眼でふらふらと歩く俺に勘解由小路が話し掛けてきた。

例のノートを見られた日を境に何故か、彼女と俺の距離は縮まり

今では互いに肩の力を抜いて過ごせる間柄くらいにはなっている。


「どした~?」


まだ性格には少々、角があるものの結構話し方もマイルドになったし

優しくなってきた気がする。やはり、あの変態夫婦の元で同じ

苦労を分かち合ったからだろうか。


「上里祐也があのノートに書いてたアニメ、全部見てきた」


「......ああ、んなもんもあったな。もう一々、ショックは受けないぞ。

 強いて言うならよくも、タイトルを暗記してたなってことだが」


「メモに残しておいたから......ほら」


勘解由小路は、オレンジ色の鳥が描かれたメモ帳にアニメのタイトルを

びっしりと書き込まれているものを俺に見せてきた。


「......それで、感想は?」


あの黒歴史ノートを隈無く見られたのだから今頃、ひいひいと

恥ずかしがっても遅い。もう、開き直ろう。


「良く......分からなかった」


「ま、万人受けするようなアニメは見てないしな」


逆に勘解由小路がダークファンタジー物とかを一瞬で理解して

語られ始めたら怖い。


「でも、面白いような気もしたから......もっと、他のも教えて。

 お母さんに、そのためにパソコンを誕生日に買ってもらったし」


「アニメの為だけにパソコンを買ってもらったのかよ」


「......お母さんもお父さんも、私が物を欲しがることとか全然無くて

 ここ最近の誕生日はプレゼントも断ってたから逆に嬉しいって言ってくれた」


中々、親からは愛されているようで良かった。心の拠り所が

有るだけでも気は休まるものだろう。


「誕生日プレゼントくらい金でも何でも良いから貰えば良いのに。

 家は欲しいものがなかったら福沢諭吉だぞ」


貰えるものは貰っておけって、おっとさんとおっかさんが言ってた。


「でも私は、お父さん達が期待している昔の私とは違うから。

 何と無く忍びなくて.......ごめんなさい、貴方に言ってどうになる

 話でもないのに」


勘解由小路は何時見たのだったか、何処と無く寂しげな表情になり

感情を悟らせないためにか無理に笑顔を作った。その笑顔が砕けた硝子の

破片のように俺の心に刺さる。とても見ていられないものだった。


「こんな半分寝たような状態で申し訳無いが、話しなら聞くぞ?

 どうせ、学校まで遠いんだし」


俺がそう言うと、勘解由小路は意を決したような頷き話を始めた。


「貴方も短い付き合いでは無くなってきたから知っていると思うけど

 私はあまり、話すのが得意ではない」


「そういえば、もうお前と付き合い初めてから1年以上経ってんのか。

 まあ、お前が無口なのは会ったときから知ってたけど」


時は六年生の6月だ。なんやかんや言って、コイツとも仲良く

なってきたし、結構最近は心も開いてくれている。


「......私は元々、もう少し饒舌な方だった。こんなに理屈っぽい話し方も

 してなかったし、こんなぶつぎりの話し方じゃなくて、普通の女の子と

 相違無かった」


どうやら勘解由小路は自分の話し方が普通ではないことは

心得ていたようだ。


「普通の女の子と相違ない、って自分で言うのな」


「自画自賛とは違う。昔の私は、今の私とは違いすぎて他人のような

 ものだから。私が昔の私を褒めるのは、他人を賞賛するのと同じ感覚」


勘違いをされたら困るとばかりにフルフルと首を横に振りながら

勘解由小路が言う......過去の自分が他人のような気がすることは俺にも

たまにある。それが今の自分と全く別のことを考えていて、話し方も違ったのなら

確かに全くの別人に思えてしまっても不思議では無いかもしれない。


「けどさ、何でそんなに性格変わったんだ?」


ピュアで純白の普通の女子がこんなに混沌とした陰を纏う女子に

変貌することはそう容易では無いだろう。


「......二年生の頃、ある日眼帯を盗られて皆に義眼と手術の時の

 傷を見られた。それから、皆に虐められるようになって仲良かった

 人とも縁を切ったら、一人ぼっちになった。毎日虐められて、泣いて

 嫌になって、物に当たって、誰とも話さないで、ご飯も喉を通らないから

 体調を崩して.......気が付いたら過去の私は私になっていた」


「気が付いたら過去の自分が自分になっていたって......不思議な

 表現だな。一体、どんな感覚なんだ?」


勘解由小路はそう聞くと、苦しそうに顔をしかめた。


「良く、覚えてない。最後の方は自分が自分ではないような気がしてきて

 フワフワと浮き立った感じになって.......確か、先生に言ってもどうにも

 ならなくて......あれ?」


「どうした?」


「無い」


勘解由小路は頭を抱えて、切羽詰まったように述語だけを言った。


「何が?」


「私は虐められて、どうにもならなくなって、最後に諦めた。

 それだけは覚えているけど.......明確なその辺りの記憶が、無い」


勘解由小路の右目はたちまち、虚ろになって焦点が合わなくなっていった。


「え?」


「あ、あれ? 私は諦めて......諦めたの? 本当に?」


勘解由小路の目はますます、見開かれ焦点が合わなくなり光が

消えていく。その様子を見て俺は本能的に危険を察知した。


「お、おい。勘解由小路、もう良いから。思い出そうとするのを止めろ」


「あ、あ、あ、思い、出せない。何で? 過去の私は私じゃないから?

 いえ、それは只の比喩。じゃあ、何故? 何で? それとも今の私は

 雪加ですら無いの? でも、それより前の記憶は有るし.......」


狂ったように勘解由小路はぶつぶつと言葉を呟いて崩れ落ちそうになる。

そんな姿に俺は焦燥感を抱き、早く止めさせなければという

考えをより一層強めた。


「勘解由小路!」


俺は、沼に填まっていくかのように呟き、足元の覚束ない

勘解由小路にそう叫んで、彼女の体を揺すった。


「......あ、ごめん」


我を取り戻した勘解由小路は小さな声でそう謝った。


「はあ、結構焦った。大丈夫だったか?」


「うん。何か、記憶に穴が開いたみたいに2年生後半の記憶が無くて

 怖かった。絶対に忘れられないようなことが起きていた筈なのに......」


勘解由小路は酷く怯えて、声を震わせながら俺に先程のことを説明する。


「そうか......何か、そう言う病気とかが有るのかもしれないな」


記憶喪失、健忘症の一種とかだろうか。調べておこう。


「上里祐也。私は、怖い。たとえ、一部でも過去の私の記憶が無いのが。

 私は......私の目標は昔の私になって、お父さんとお母さんを喜ばせる

 ことなのに。今のつまらない、私を捨てることなのに」


珍しく、あの隙の無い勘解由小路が弱音を吐いている姿を見て、コイツも

こんな風に弱ることが有るんだな、と何処か冷静に分析をしている自分が居た。


「あのさ、勘解由小路」


「......うん」


「俺がお前と初めて会ったのは四年生の頃な訳で昔のお前とか知らないけどさ。

 ......口下手で毒舌で、馬鹿みたいに頭が良くて、自覚の無い優しさを持ってる

 サブカル女、それが本当の勘解由小路雪加だと少なくとも俺は思ってる」


「......本当の私が私?」


俺は『ああ』と頷く。


「それに、お前の父親と母親に元気がないのはお前が最近笑わなくなった

 ことが原因でお前が昔のお前じゃなくなったからじゃないと思うぞ。

 俺の親父がお前の父親に聞いたって言ってた。どうだ? 

 最近両親に笑顔を見せたか?」


「......見せて、無い。私なんかの笑顔でお母さんとお父さんが

 喜んでくれるとは思って無かったから」


「だろ。まあ、俺が伝えたいのはどうやら、お前が思ってるほど周りの

 人間は昔のお前に固執してないってことだ。俺なんかは今のお前の人柄に

 引かれて付き合ってるんだから、急に人格が変わられたら驚くぞ」


俺なんかが物差しになるかは分からないが少なくとも俺は今の

勘解由小路に満足している。


「......私は、私のままで良いってこと?」


「んな安いドラマの台詞みたいなことを言ったつもりは無いが......まあ

 有り体に言えばそうだな。俺は今の勘解由小路が好きだ」


「......っ!?」


勘解由小路は何やら激しく動揺したように顔を強張らせ、酷くびくついた。


「ん? どした?」


「な、何でも無い......大丈夫」


「.......? ああそう。てか、誕生日プレゼント貰ったって言ってたけど

 お前誕生日何時なんだ?」


まだ6月なので、12月生まれの俺としては誕生日が早いように感じる。


「5月の6日」


「結構、前だな......お前、欲しい物とか有る?」


「それって......誕生日プレゼントってこと?」


「そうそう。お前とは付き合いも長いし、そういうのも良いかもと思ってな」


勿論、小学六年生が手を出せる品にしてもらいたいが。


「良いの?」


勘解由小路は遠慮がちに確認を取ってくる。


「ああ」


俺が勿論と頷くと、勘解由小路は不敵な笑顔を浮かべて俺へと

急接近してきた。


「ちょ、勘解由小路......」


俺が少したじろぐと、更に勘解由小路は俺へと近付きその小さな

手で俺の手を強く握った。


「......じゃあ、はい。プレゼント」


思わぬ勘解由小路の行動に背中からは汗が吹き出て、俺の顔は

動揺と気まずさから青ざめた。


「こ、これは何の真似だ?」


「盟友の証。祐也の見てるアニメに出てきた」


そういえば、一度は裏切った味方が主人公の言葉に心動かされてもう一度

正式に仲間となる時に握手をする、みたいなシーンがあった気がする。


「いや、え? 色々とツッコミたいんだが。兎に角、プレゼントは

 盟友の握手を交わすって言うので良いのか」


「うん。祐也と私は盟友。つまり、同士であり仲間。明確に言うのならば

 互いを利用し合う......相手が困ったときにそれを助けるというリスクが

 課せられる代わりに自分が困ったとき、助けてもらえるというリターンを

 得ることのできる関係。そんな関係になる契約を交わしたい」


何だ、コイツ。俺の見ているアニメの見すぎで若干、中二病に

侵され始めたのか。


「因みに上里祐也じゃなくて祐也と呼び始めた理由をお聞きしても?」


「盟友は互いの名前を呼び合うものだし、上里祐也というのは

 長くてカロリーの無駄ということに気付いた。祐也もカロリー効率

 あげるために雪加と呼ぶと良い。勘解由小路と呼ぶより促音を入れても

 二分の一で済ませられる」


「あ、はい」


勘解由小路がフランクに接してくれるようになってきているのは

嬉しいことなのだが、何と言えば良いだろうか......勘解由小路が

四年生の頃に比べてどんどんボケに走り始めている気がする。


「それで、交わしてくれるの? 盟約」


「いやま、お前がプレゼントに盟約を結べって言うんなら

 別に良いけどさ......」


俺は恥ずかしがりながらも勘解由小路の手を握り返した。


「ありがとう。じゃあ、握手の次は指切りで」


勘解由小路は小指をすっと出してくる。


「ええ......マジでやるのか? 恥ずかしいんだが」


俺が嫌がる素振りを見せると、勘解由小路はすっと俺の小指を

自分の小指で絡めて、無理やり行為を実行してきた。 


「指切り拳万、嘘ついたら針千本飲ます」


「おい、俺は何も誓って無いぞ。後、勝手にした約束の癖に破った場合は

 拳骨で一万回殴られて、針を千本飲ませられるって不当過ぎる」


「じゃあ、取り消す?」


「......いや、良い。盟友雪加、宜しくな」


吹っ切れた俺は表情を出来るだけ崩して笑顔を浮かべて言った。


「うん、宜しく。盟友祐也」


この日からだっただろうか。雪加が中二病という恐ろしき病に

本格的に侵され始めたのは

私の小説を見ている多くの方が思っているであろうことを当てますね?

『この蛇猫とかいう奴、後書き書きすぎだろ』です! ええ、知ってます。

よーく知ってますとも。この、小説家になろうというサイトにおいて後書きを

毎回ダラダラと書く人は少数だということを。


ですがね、許してください。後書きは周りとの交友が祐也よりも絶望的な

私の唯一と言っても良い、発言の場なんですよ。ということで、これからも

後書きは長々と蛇足のように書きます。当然、飛ばして頂いて結構です。

しかし、飛ばすのならこれだけは言っておきたいです『私の小説を見てくれてありがとう』と。

あ、やっぱり『評価、ブクマ、感想、レビュー下さい』の方が......。


まあ、そんな下心丸出しの底辺小説家の書く小説ですが最近、スマホからの

アクセスが格段に増えています。Twitterのお陰でしょうか? ありがとうございます。

前にも紹介しましたが『翼蛇猫:前科部 幽霊憑き 小説家になろう』としてTwitterもしています。

最近は小説に関係ないどうでも良いツイートをしていますが良ければ覗いて下さい。


それでは今回も寂しき蛇猫の戯れ言に付き合ってくれてありがとうございました。

是非、評価、感想、ブクマ、レビュー、お願いします!







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