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前科部!  作者: 蛇猫
そして前科者『上里祐也』は鳥好きになった
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その目に映ったもの


教室が騒がしい、どうやら今日は転校生が来るようだ。

......何処と無くデシャブのような感覚を覚えるがそれを考えるのは野暮だろうか。

彼に続き、今年二人目の転校生ということもあり教室は沸き立っていた。

噂によると、転校生は女性らしいが確証は無い。只、言えることは何故、

教師達がこのクラスに二連続で転校生を来させたのかということだ。


「・・・・」


「ん、どうかしたか?」


そんなことを考えていると、無意識のうちに第一回目の転校生である

彼へと目線を向けてしまった。


「・・・いえ、何も」


顔には出さないが、少し慌てて顔を逸らす。

急に目線を向けて、大丈夫だっただろうか。


「そか」


しかし、そんな思いは杞憂とばかりに彼は普通の対応をする。

暫し、彼と自分の間に静寂が流れる。


「・・・あの」


形容し難いが、何処と無く気まずさを覚え、つい彼に話し掛けてしまった。


「おう」


話し掛けたは良いものを話の内容は考えていない。

空気に流されて人に話し掛けるとは、自分らしくない。


「・・・え......と」


緊張のあまり、変な声が出てしまった。

そのことに何処かむず痒さを感じてしまう自分がいる。

近年、感じることのなかった『羞恥』という感情だ。


「おう」


彼はそんな自分の声にも眉一つ動かさず、極めて普通に相槌をうつ。

少し、調子が狂う。


「・・・転校生。来るみたいですね」


何とか絞り出した話題は先程まで自らが思考していた事柄であった。

しかし、そんな自分の在り来たりな質問に彼は


「う、おお、そう、みたいだな? ど、どんな奴だろうな?」


挙動不審で答えた。まるで、何かを知っているかのようだ。


「・・・大丈夫、ですか?」


「お、おう!? 大丈夫だし? ほら上里さん挙動が安定し過ぎて

 ポーカー出来るレベルだから。うん、いや本当に」


誰も挙動の話なんてしていないのだが。


「・・・そう、ですか」


「そうなんだよ」


上里祐也(かみさと ゆうや)、最近この街に引っ越してこの学校に転校してきた

男子生徒だ。覇気が無く、何処と無く陰気で特に人気者という

訳では無いが、彼の人柄は嫌いではない。


「・・・・」


「・・・・」


再びの静寂。賑やかなこの教室で自分と彼の間にだけ異質な空気が流れる。

そんな空間で先程と同じような気まずさを感じていると学校中に

チャイムが鳴った。騒がしかった教室の生徒達が急いで着席する。


「早く座れよ。チャイムは鳴ってるんだからな~?

 けほっけほっ、すまん。風を引いていてな......」


扉を開けて、教壇に立ったのはかなり大きめのマスクを付けた

岬川高校2年2組担任兼自然観察部顧問、宗里花凛(むねさと かりん)という名の教師だ。

肩書きだけを見ると騒々しいが、まあ......一般的? 一般的な高校の教師だ。


「というか、お前らは何処で一々情報を仕入れてくるんだ?

 転校生の話題がもう噂に挙がっているらしいじゃないか」


少し喉を痛めた風にがらがら声の教師はそう言う。

近年の高校生達の情報伝達能力は凄まじい。見慣れない自分達と同じ学校の制服を

着ている生徒を確認、からの転校生だと割り出すスピードはコンピューター並みだ。


「まあ、私がそう言ったということは分かるとは思うが

 事実、2年3組に二度目の転校生が入ってきた。入ってきてくれ」


教師が扉に向かってそう言うと、転校生らしき人物が扉を開けて入ってきた。

一同が転校生へと視線を向けて、周りは再びざわめきだした。


「ああ、あ、あ、あ」


彼は譫言のように何かを呟いているが、触れない方が良さそうだ。


「・・・・」


転校生は教壇の前に立って黙り込んだ。緊張しているのだろうか。

その転校生の少女、最大の特徴は左目に着けている王冠の模様が描かれた

眼帯であった。右目は紅葉色をしていて、髪色は自分の銀髪よりもずっと

黒っぽい灰色だ。


「っ.....」


他の生徒達がとの特徴的な容姿に興奮するなか、一人彼だけは

全く動じず、苦い顔をしていた。


「じゃあ、自己紹介をしてくれるか?」


転校生はコクリと頷き、口を開いた。


勘解由小路雪加(かでのこうじ せっか)、趣味は小説の執筆と読書。運動は苦手で家が好き。

 後、野鳥が好き。他には......得意教科は理科、社会、国語、数学で

 苦手な教科は英語。好きな食べ物は柏餅。嫌いな食べ物は無い。これから宜しく」

 

かなりの長文だが、勘解由小道路と名乗った彼女は早口で

噛むことなく、それを言ってのけた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「勘解由小路さん、雪加ちゃんって呼んで良い?」


「......良い」


「え、ズルい! ねえねえ、私も同じように読んで良い?」


「私も!」


「私だって!」


「好きにして」


「「「やったあ!」」」


休み時間、転校生の彼女には多くの女子生徒が集まっていた。


「なあ、幻中?」


彼は此方を向いてそう言ってくる。


「・・・はい」


「このクラスの野鳥好きの読書好きの運動が苦手な転校生って誰だと思う?」


彼は恐らく狙って質問をしているのだろう。


「・・・貴方、と勘解由小路さん......ですか?」


「だよな、いつの間にか別の世界線に来て俺の特徴が完全に

 変わってるとかはないよな」


彼は少し、悲壮感を漂わして言う。


「・・・はい、恐らく」


そう答えると、彼は転校生の彼女の方向に指を向けて


「じゃあ、あれはなんだ?」


と、言った。その方向を見ると、


「雪加ちゃん。今日はお弁当? それとも、学食?」


先程に続き彼女の席に多くの女子が集まっていた。


「弁当......」


「え、私もお弁当だよ! 一緒に食べよ!」


「え~私、学食なんだけど~」


実に仲良さげに会話をしている。


「ムカ、ムカムカ。プッチーン」


その様子を見ていた彼は謎の言葉を発する。


「・・・何を言っているんですか?」


「腹が立って堪忍袋の緒が切れる効果音」


どう考えても口で言うことではないと思うのだが。


「大体な、アイツ困ってるじゃねえか。ほら、見てみろ。

 アイツがああやって髪を触るのは、恥ずかしかったり、緊張してたり

 困ってたりするときの証拠だ! もう少し、相手のことを考えてだな......あ」


彼は自分の言っていることの不自然さに気づいたらしく、声を漏らす。


「・・・彼女、勘解由小路さんと以前から面識があるんですか? 

 随分、色々と彼女について知っているようですし......」


彼は『墓穴掘ったか......上里さんとしたことが』と呟いて困惑する。


「・・・あの、答えにくいのであれば別に良いですが」


疑問に思っただけで知ってどうにかなる話ではない。


「いや、アイツ自然観察部入るつもりだろうし一応、言っておく。

 そんなに、面倒臭い関係じゃないけどな? 只、以前同じ高校で

 中学、小学校も全部同じっていうだけのことだ。俺の父親とアイツの父親が

 同じ会社で働いててな、まあそのことを知ったのはアイツと出会ってから

 少ししてからのことなんだが......まあ、どうでも良いだろ」


「・・・幼なじみ、ということですか?」


そういえば、自然観察部での郊外学習の時彼女の存在を示唆するようなことを

彼が言っていた気がする。


「分からん。アニメとかである、幼稚園の頃から一緒、って訳

 じゃないからな。実際知り合ったのは小学4年からだし、それを

 幼なじみに入れるか否かは議論の余地があるだろうな」


それでも、小学4年生から高校まで同じで交友が続いているのは

珍しいと思う。


「・・・そうですか」


「ああ。今は大人しくしているが、俺の幼なじみだけあって

 色々とブッ飛んでるから気を付けておくと良いぞ」


何故だろうか。とても説得力が感じられる。


「・・・はい、貴方の知り合いならなるようになりそうです」


彼との付き合いは浅いが、少なからず知り合いは選ぶ方だろう。

一見、何時もの話し方や態度を見ていると、楽観的な人物に思えるが

私は彼がかなりの偏屈......もとい、思考の中では色々なことを考えていることを

知っている。まあ、崩れた話し方をするのも基本的に限られた人物だけのようだが。


「もしかして、貶してるのか?」


彼はジトっとした目で此方を見てくる。


「・・・いえ、逆です。貴方が少なからず心を許す相手なら

 不安も少ないと思いまして」


「ああそう......」


彼はそう言って静かに本を読み始めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「おす」


「ども」


「・・・こんにちわ」


放課後、その日のうちに入部届けを出した彼女とその付き添いをしていた

彼とたまたま、部活に行く途中出会い、一緒に部室へと入っていった。


「お、幻中さんと祐、也くん?」


自然観察部部長の芦原白嶺(あしはら しらね)さんは驚いたように言う。


「どうも、祐也君です」


「どうも、勘解由小路です」


「「二人会わせて......えと」」


「いや、考えてなかったのなら無理に言わなくて良いからね?」


息ぴったりの二人に少し、引きながら部長は言った。


「いや、そんなことはどうでも良いんですよ。先輩。

 新入部員を勧誘してきました。はい、上里優秀」


彼は親指を勘解由小路さんに向けて言う。


「え、えーと。宗里先生が言ってた勘解由小路さんで良いのかな?」


流石部長、新入部員くらいの情報はあの大雑把な教師とも

やり取りはしていたらしい。勘解由小路さんは部長の質問に

コクコクと頷く。


「二年三組勘解由小路雪加(かでのこうじ せっか)、祐也と同じクラス。真の名は

 ロスト・デマイズ・レミニセンス・ヘル」


・・・・・・。


「え、ええとロスト、えと、なんて?」


部長は聞きなれない自己紹介に戸惑う。


「お前こっちの学校に慣れてきたからといって先輩相手に持病を

 拗らせるなよ......只の中二患者なんで流してやって下さい」


「う、うん。分かった、かな? じゃあ、早速ちゃんとした

 自己紹介をしよっか」


今日の部活は全員かけることなく集まっている。


「分かった。さっきも言った通り名前は勘解由小路雪加(かでのこうじせっか)

 クラスは1年二組、祐也とは小学校からの付き合い。これから宜しく」


彼女は全員の前に改めて立って自己紹介をした。


「ご丁寧にどうも。私は芦原白嶺(あしはらしらね)、一応この部活の部長だよ。

 何か困ったことがあったら言ってね」


部長はフレンドリーな笑みを浮かべて言った。


「......え? 俺?」


位置的に部長の一番近くにいた、彼に全員が視線を送る。


「まあ、さっき勘解由小路さんが小学生の頃からの付き合いって

 言ってたけど。一応ね?」


「ええ......何言えば良いんすか......えーと、上里祐也(かみさとゆうや)2年二組

 って分かるよな。まあ、宜しく」


戸惑いながら、彼は挨拶をして部長へと目線を送る。


「え、じゃあ。次は幻中さんで、次に小戸森さん、最後調月さんで

 良いんじゃ無いかな?」


流石に順番が曖昧だと良くないと考えたのか、部長はそう提案する。


「・・・では、それで。2年二組、幻中玲奈(まもなかれいな)です。

 宜しくお願いします」


少し、よそよそしく自己紹介をした。


「え、えと......一年四組の小戸森廻瑠(こともりめぐるです)

 よ、宜しくお願いします」


すると、それに続く形で小戸森さんが自己紹介をする。


「2年四組、調月雹霞よ。以後、宜しく......と言いたいところなのだけれど

 貴方、覚悟は出来ているの?」


調月さんは突如、鋭い覇気を向けて聞く。


「......覚悟?」


自らへと向けられた抽象的な質問に彼女は戸惑う。


「あら、その男の知り合いないのに教えて貰っていないの?

 使えないわね。まあ、それは何時ものこととして、貴方はこの部活が

 なんと呼ばれているか知っているかしら?」


なんと呼ばれているか、彼女はまず、間違いなく前科部という

名称のことをさしているのだろう。かなりの女子生徒に放課後まで

引っ張りだこだった彼女なら知っている可能性もあるが。


「......前科部」


そして、事実彼女はその言葉を知っていた。


「あら、知っていたのね。ということは勿論、この部活がどのような

 場所か、分かっているのよね?」


意外そうな顔をしながら調月さんがそう聞くとその言葉に彼女は頷いた。


「あのな......一応、放課後に色々と教えたからな?」


「あらそう、意外ね。貴方の凡庸な頭でもそれほどの知能を有しているとは」


「うるせえ、これでも成績上位者だったんだぞ」


彼と調月さんは何時ものように言い争いを始める。

その様子をみながら彼女は口を開いた。


「取り敢えず、この部活のことは祐也から聞いた。

 別に、嫌われるのは前の高校に居たときと変わらないし私は

 それでも、祐也と同じところが良い。それに自然に関しては自信がある」


得意そうな顔で彼女はそう公言する。


「ま、調月が雪加のことを心配するのも分かるが、コイツは

 コイツなりに色々と考えているとみたいだから良いだろ?」


「別に、心配しているわけではなくて......」


「あーはいはい、分かった。雪加、良いらしいぞ」


反論しようとする、調月さんを無視して彼は言う。


「雹霞は、ツンデレ?」


「いや、デレはあまり期待しない方が良い」


「貴方ね......」


彼と彼女のやり取りに調月さんが青筋を浮かせる。


「名前呼び......同じところが良い......小学生から......」


小戸森さんが何かを呟いているが、聞こえない。

そんな、乱れた状況を見ていた部長は慌てて


「えっと、まあ色々話も終わったところで改めて

 勘解雪小路さん、うちの部活へようこそ!」


空気を切り替えるため、大きな言葉でそう新しい部員を祝福した。


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