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前科部!  作者: 蛇猫
前科者達との自然観察
35/108

ボクッ娘芋天娘

安定の遅れ投稿です、今回は何時もよりすこ~しだけ文字数多いのでどうぞ!


「・・・おはようございます」


俺の冤罪が晴れて、二日目。俺が教室に入ると幻中が気づいて

挨拶をしてくれた。


「お、おう......」


俺はそんな風に軽く挨拶を返して、荷物を整理する。

幻中の方から挨拶をしてくることは今回が初めてだったので少し驚いた。


「・・・その」


俺がいつも通り、本をリユックから取りだし本を開けると

幻中が口を開いた。


「何だ?」


「・・・少し、嬉しかったです」


幻中は此方に顔も向けずに、本を読みながら......しかし、本当に嬉しそうな

声で言った。何時ものつまらなそうで、感情の籠ってい無い声との違いは明らかだ。


「......なんのことだ?」


俺の質問に幻中は少し考えてから話し出した。


「・・・貴方が山本さんから財布を取り返そうとしてくれたことです。

 それと、ご迷惑お掛けしてすいませんでした、それにありがとうございます」


幻中は先程と同じ、何処と無く暖かい声で言う。


「ああ、えと......どういたしまして?」


多少挙動不審になりながらも俺が幻中の言葉にそう返すと

幻中は『それに......』と話を続けた。


「・・・私が野次馬に山本さんのことを中々信じなかったせいで

 叩かれ始めたとき、貴方はわざと話を切り上げてくれましたよね?」


幻中の言葉に思わず本を放して閉じてしまった。

勘が鋭いな、まもまも。


「俺が財布を盗んだという山本の証言を中々信じずに、山本を

 逆に疑っていたお前もお前だけどな」


俺はさらっと、自分についての話を流す。


「・・・当たり前じゃないですか」


幻中は尚も本を読みながら話してくる。


「ん?」


「・・・あの人は、貴方が転校してくる前から執拗に私へと

 嫌がらせをしてきていました」


勿論、幻中から聞くまでもなくその事実は察していた。俺が冤罪を掛けられた

あの日、幻中は弁当だった。何時も学食で見掛けないあたり何時も弁当なのだろう。

しかし、山本達はその事を知りながらわざと学食へと連れ出した。


理由は簡単、幻中は自分達に逆らうことができないと思い弁当を無駄にさせて

嫌がらせをすること。そして、学食なら幻中をあの時のように水を汲ませて

遠ざけることもできるので財布を盗みやすくなるからだ。


「ああ、みたいだったな。雰囲気で分かった」


俺が本を再び開いて、読み始めると幻中が再び話し出した。


「反対に貴方は私に何度関わるなと言われても、決してその通りにしないで

 私へと毎日挨拶をしてくれて......自然観察の時にも言ってれましたよね。貴方は私に

 何も求めてはいない、私に何も求めていないからこそ失望も何もしていないと.......」

 

止めろ! その台詞、後から冷静になって考えたら滅茶苦茶恥ずかしいことを

喋ってたことに気付いて恥ずかしさのあまり死にそうになってたんだぞ!


「いや、えとあれはだな......忘れてくれ」


俺は恥ずかしさのあまり、顔を本に埋めた。


「・・・貴方がどう思っていたとしても、あの言葉は私に力をくれました。

 私は何も求めていない、期待されていない。だからプレッシャーも

 感じなくて良い気がして......嬉しかったです。どんな励ましの言葉よりも」


「ああそう......」


出来ればあの時のことは掘り返して欲しくないのだが。


「そういえば、あの後山本達はどうなったんだ?」


山本のしたことは前々から言っているが犯罪、法律には詳しく無いが

窃盗罪と山本の取り巻きは幇助犯にでもなるんじゃないだろうか。


「・・・結局、村田さんたちは自分達の意思で山本さんと私の財布を

 盗もうとしていたことを認めて、保護者に連絡がいったそうです。

 今日の放課後私の保護者と山本さん達の保護者、先生方と

 山本さん達、全員でもう一度お話することになりました」


幻中は少し溜め息を吐きながら言う。


「やっぱり結構な大事になってるみたいだな」


取り巻きの連中は知らんが、山本は退学にされるんじゃないだろうか。

俺としては嬉しいけど。


「・・・そうですね、私としては貴方が転校してきてからの毎日が

 衝撃的すぎて麻痺している部分も有りますが......」


顔は見えないが明らかに呆れたような声で幻中は言う。

最近幻中の声だけで、幻中の感情が分かるようになってきてしまった。


「俺も最近、全然リラックス出来てないわ。そろそろ平穏な

 暮らしを享受したいんだけどな」


前の学校に居たときはもう少し正統派の陰キャっぽく教室の隅で

本を読んでいられたのに転校してからというもの滅茶苦茶だ。

もしかして、これがリア充って奴か。


「・・・それなら一々面倒ごとに首を突っ込まなければ良いのでは......」


・・・・・・・・・・・・。


「すまん、正論過ぎて何も言えない」


よくよく考えれば、俺の周りで起こるトラブルは俺が一々関与しているせいで

起こっている。ということは、普通の安定した日常が欲しいのならば俺がトラブルに

一々首を突っ込まなければ良いということだ。そうすればこれからも安心安全な

日々を過ごすことができる。ヤッタネ、上里さんが普通の高校生になれるよ。






















だから、今俺の目が捉えているものにも首を突っ込んではならない。


「何か用ですか?」


其処にはとある小柄な女子生徒の前に少し体格の良い

女子生徒が道を塞ぐように立っていた。


「用? まあ......用って訳でもないけどアンタにちょっと言いたいことが

 有るの、もちろん聞いてくれるわよね?」


体格の良い女子生徒は小柄な方の女子生徒を睨み付ける。


「まあ......少しなら」


小柄な女子生徒は嬉しくなさそうな声色で答える。


「じゃあ言うけど、あのさあ.......アンタ最近、調子乗ってるわよね。

 はっきり言ってムカつく」


すると、体格の良い女子生徒は鋭い声で小柄な女子生徒にそういい放った。


「はい?」


「ちょっと前まではもっと大人しくて私の近くに居て何でも言うこと

 聞いてたのに、最近はずっと飯もあの男とばかりで私の近くに

 居てくれないわよね。それに、少し前私があの男に騒がれた時だって

 私を庇わずに私に恥を欠かせたじゃない」


体格の良い子生徒は苛立ったように言う。


「.......佐藤先輩。ボ、私は貴方の都合の良い道具じゃ有りま」


「煩い! そういうところが最近気に食わないのよ。前まではもっと謙虚で

 大人しかったのに筈なのに、最近は何? 私の言うことも無視するし

 あの男とずっと学食でペラペラ、ペラペラ喋って笑ったりしてるし、本当にウザい」


体格の良い女子生徒は小柄な方の女子生徒が話終わるのを待たずにそう叫んだ。

小柄な女子生徒は何も言わない。少々体格の良い方に言いたいことはあるが

平和と平穏を享受するためにはこのようなトラブルも放って置く必要がある。


「それに、アンタ男の趣味も悪いわよね。知ってるわよ、上里祐也。

 幻中の財布を盗んで問題になってたでしょ? 見るからに性根が腐った

 陰キャみたいだったもんね~? ま、幻中のことはどうでも良いけど......。

 あんなモテ無さそうな男と何時もつるんでるアンタも相当よね」

 

体格の良い、女子生徒は勝ち誇ったように小柄な女子生徒に

笑みを向けて言った。暫しの平穏が辺りを包む。周りには学食へ

行こうとする生徒ばかりで野次馬をするのに定評の有るこの学校の生徒も

今回は無視していた。


「........................下さい」


「はあ?」


「ボクのことをいくら貶しても先輩のことはそんな風に言わないで下さい......」


先程まで一人称を『私』としていた小柄な女子生徒は一人称を『ボク』と

改めてそう叫んだ。


「はあ? 何、ムキになってんの? キモいんだけど。それに、自分のことを

 ボクとか言って......アンタ女でしょ? 恥ずかしくないの?」


・・・・・・・・・・・・。


「......先輩は、泥棒なんてしてません」


「いや、質問の答えになって無いんだけど。馬鹿じゃないの?」


俺は無言で小柄な女子生徒と体格の良い女子生徒、否。

後輩、小戸森廻瑠と同学年の生徒、佐藤恵美の目の前に歩いていった。


「馬鹿は、基本的に『愚か、知能が低い、無益』な人間のことを

 指すんだが......佐藤、お前の頭にブーメラン刺さってるぞ」


いくら、放っておくと言えども自分の話が勝手に話題に挙げられて

後輩に庇われているという状況を、見てみぬフリするのは流石に

気が引ける。


「あん、ってはあ!?」」


佐藤は俺の顔を確認すると、驚いたように目を見開いた。

怒ったり驚いたり、感情が忙しいやつだ。


「先輩!?」


小戸森もかよ。


「性根が腐った陰キャ、のところにはノーコメントだが。俺は幻中の

 財布なんて盗んでないからな? 流石に虚偽の噂を流されると俺でも困る」


「は、はあ? だって夢華がそう言ってたじゃない。学校中の噂よ?

 説得力が全く無いんだけど」


佐藤は、焦りながらも答える。


「説得力? それじゃあ、生徒指導辺りにでも聞いてみればどうだ?

 きっと『上里は犯人ではなく濡れ衣を着せられた被害者。真犯人は

 山本とその取り巻きだ』って言ってくれる筈だぞ。因みにこれについては

 山本達も認めてるし、証拠もある」


はい、勝訴。


「そ、そんなの知らなかったんだし仕方がないでしょ!」


「情報弱者かよ。というか、知らなかったとしても俺が無実を

 訴えていたことくらい知ってるだろ。それなのに恰も俺が

 有罪確定みたいに言われるのは流石にどうかと思うぞ?」


俺は幻中にも負けず劣らずの無表情を保ちつつ佐藤を追い込んでいく。

俺を論破出来るのは、白嶺先輩と調月とアイツくらいの物だ。

あれ、結構多いな。


「はあっ!? ちっ......ムカつくわね。喧嘩売ってんの?」


ごめん、コイツと会話できる気がしない。

ちゃんと話の主旨に沿った返答をしてくれ。


「売ってない。質問に答えろ。おっと、さっきお前が小戸森に

 言ってたことと全く同じこと言ってしまったな。お前の理論でいくと

 その場合馬鹿になるんだったか? じゃあ、自分で言っておきながら

 同じことをしてしまうお前はなんなんだろうな?」


よし、完全に煽りが決まった。


「アンタ、マジで殴るわよ? 陰キャの癖にイキリやがって。マジ、キモすぎ」

 

「さっきから、キモいしか言ってないが......ボキャブラリーはどうした?

 後、直ぐに暴力で解決しようとするのは流石に幼稚過ぎる」


後、俺が痛いからやめて。


「あ、あの......」


俺と佐藤が言い合いをしていると空気になっていた小戸森が

話し掛けてきた。


「佐藤先輩、ご飯まだですよね。あの、昼食遅れちゃいますよ?」


「ちっ......上里、私に喧嘩を売ったこと後悔させてあげるから」


小戸森の言葉に佐藤は近くの教室の時計を見ると、慌ててそう言い残し

走っていった。


「喧嘩、売ってないって聞き取れなかったのか?」


「先輩......流石にあれは挑発的過ぎますよ」


おっと、小戸森にまで呆れられてしまった。


「というか、先輩。こんな所に居るんですか。此処、一年生の教室が有る

 廊下ですよ。先輩の学食へ行く為のルートからはかなり、離れてる

 気がするんですが......」


確かに此処は3階の廊下、俺がわざわざ通る必要の無い場所だ。


「いや、単純に3階の冷水機の方が4階のよりも水が冷たいとかいう話を

 小耳に挟んだから、試しに飲んでみようかと思っただけだ」


小耳に挟んだ、というのは勿論人から聞いたのではなく。

人の会話を聞いただけである。


「ああ......なんかそうらしいですね。たま~に水筒を忘れた

 二年生、三年生が飲みに来てますよ」


小戸森はどうでも良さそうに言う。


「んじゃ、学食行くか」


「まあ......色々聞きたいですけど着いてからで良いですよ」


俺が歩き出すと、小戸森もそう言って歩き始めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「座れたな」


「座れましたね」


なんとか、俺と小戸森は遅れながらも学食での机を確保することが出来、

食事を運ぶことが出来た。


「じゃあ、席も取れたことですし色々と聞いて良いですか?」


小戸森は水を一口飲んで言う。


「ああ、分かった」


俺は小戸森に頷く。


「じゃあ、聞きますけど......その前にその、さっきはありがとうございました」


小戸森は静かに頭を下げた。


「ん? ああ、あれか。いや、あの時は俺の話が出てきてたからな。

 もし、只小戸森が佐藤に難癖付けられてるだけだったら放ってたと

 思うし別に感謝しなくても良いぞ」


俺は面と向かって礼を言われた恥ずかしさから軽く小戸森から目を逸らして言う。


「......多分」


俺の話を聞くと、小戸森はボソッと言った。


「ん?」


「ボク、先輩のことあまり知りませんけど......多分先輩は

 なんやかんや言って、助けてくれてたと思いますよ」

 

俺が聞き返すと、小戸森は顔を紅く染めながら言った。


「......俺は別に聖人君子じゃないんだから過度な期待をされても困るが」


実際にあの時、俺の話が出ていなければ放っておいたかどうかは分からない。

俺のことだから小戸森の言う通り、適当なこじつけの理由を作って話に

割り込んでいた気がする。だが、悪魔で俺は正義の味方でも性格が滅茶苦茶

良い奴でもなく基本的に我が身一番の人間だ。其処だけは履き違えないで貰いたい。


「別に期待してる訳じゃないです。あれくらい、何時ものことですし。

 わざわざ、先輩なんかに助けて貰わなくても大丈夫ですから」


「うわ、酷い」


いや、確かに俺が来るまでも度々ああいった虐めを受けてきている

みたいだし耐性はついているんだろうが。


「でも、先輩なら結局助けてくれてた様な気がしたんです。

 勿論、只の妄想かも知れませんけど......」


「ああそう......」


其処までのヒーロー像を俺へと当てはめてくれるとは光栄だが。


「そ、それで先輩。財布の件、冤罪が晴れたとか言ってましたけど......」


小戸森は話題を変えて、質問をしてくる。


「ああ、毒蛇......調月のお陰でな。晴れて無罪放免だ」


俺は軽くドヤ顔をして言う。


「へ、へえ......ま、まあ良かったんじゃないですか?

 私は別に関係ありませんけど......」


「この前あんなにデレてたのに急にツンツンされてもな」


「は、はあ? 誰がデレてたですか!」


小戸森は声を張り上げて怒る。


「お前だよ」


「ボクでしたか」


「そうだよ」


「すいません、分かりきったことを聞いて......って違う!」


おお、小戸森様がお怒りじゃあ......かしこみかしこみ。


「ナイス、ノリツッコミ。芸人にでもなる気か?」


俺は親指を立てて、少しからかうように笑う。


「だから、違いますって! ああもう......先輩と居るとなんか調子崩れます」


小戸森は苛立ったように水を飲むと、勢いよく机に叩きつけた。


「人間、その感情を古来より恋と呼ぶ」


俺はその様子を物ともせずにからかい続ける。


「ボクが先輩に抱く感情なんて怒り以外に有りません!」


「怒りっぽいと損するぞ。カルシウムきちんと、摂ってるか?

 ああ、すまん。そういえば、カルシウムの不足と情緒の不安定さには

 あまり関係無いらしいな。何かの本で読んだ気がする」


滅茶苦茶なカルシウム制限をしない限り、カルシウムの低下で

イライラしたりすることはないらしい。


「へぇ~そうなんですか、ってなりませんからね!?

 怒らせてるのはどっちですか!」


やだこの子、ノリツッコミ上手すぎじゃない?


「はいはい、俺が悪かった。分かったから芋天をお食べ」


今回の食事は俺が唐揚げ定食で小戸森が天ぷらうどん(芋天入り)と

個別で注文した芋天だ。というか、俺が食べれるものがこの学食のメニューに

殆どないと言う由々しき事態が発生しているんだが。


「はあ.......都合悪くなったら芋天食べさせておけば良いと思ってますよね......

 ボクはそんな簡単じゃないですからね......はむはむ」


小戸森はジト目を俺に向けつつ、芋天を何時も通り頬張り

満面の笑みを浮かべた.......簡単だな。


「はむはむ.......それで? 山本先輩達はどうなったんですか?」


小戸森は芋天を飲み込むと、そう聞いてきた。


「何か、保護者達と話し合いするらしいぞ。幻中が言ってた」


「へえ......幻中先輩も大変ですね」


自分と幻中の状況をおきかえてみたのだろうか、小戸森は

心底同情するように言う。


「それは分かる。ああ、大変と言えばお前も佐藤に何時も

 ああやって絡まれてるのか?」


俺は唐揚げを食べつつ言う。


「......まあ、結構」


小戸森は言いづらそうに言った。


「学年も違うんだろ? 何でお前ばっかりが標的になってるんだ?」


部活の後輩とかなら分かるが、部活も学級も学年も違うのならば

わざわざ、小戸森を執拗に虐めなくても良いと思う。


「あの、ボクって一年生じゃないですか」


「そうだな。そうじゃなければ、俺が後輩でも無いのに先輩呼びを

 させる性癖の持ち主になる」


実際にそうだとかは口が裂けても言えない。


「それで、今は自然観察部......前科部に入ってるんですけど

 初めは別の部に入ってたんです」


「初耳だな、因みに何部だ?」


冷静になって考えてみれば一発目の部活選択で自然観察部を

選ぶ奴はあまりいないだろう。


「陸上部です。中学校の内はずっと文化系の部活だったんですけど

 少し運動にも挑戦してみようかなって......」


「陸上競技をする小戸森か......想像出来ないな」


調月程ではないにしろ、お世辞にも明るい雰囲気とは言い難い小戸森だ。

元気よく走り回っている姿は中々想像出来ない。


「ですよね......結局、体力も全く無かったせいで初日から

 酷い筋肉痛に悩まされました。はむはむ」


小戸森は溜め息を吐くように言うと、再度芋天を口に含んだ。


「安心しろ。俺も体験でバスケ部に入ったこと有るが似たような物だったからな」


え、何日持ったかって? 勿論1日でやめてやったぜ。


「先輩と同レベルなのもあれですけど......兎に角、殆ど体が持たなくて

 結構皆さんの足を引っ張っちゃってたんですよ」


小戸森は声を落として言う。運動部には有りがちなパターンだと思うが

一人だけ運動が苦手な奴が居ると大抵浮くのだ。そして、本人も責任を

感じてしまいストレスを抱えることになる。小戸森も同じケースだったのだろう。


「運動部あるあるだな。それで?」


「最初の内は結構皆さん、ボクに気を使ってくださってたんですけど

 ある日、同じ陸上部だった佐藤先輩が話しかけてきたんです」


小戸森は真剣な表情で言った。


「其処で佐藤がでてくるわけか」


「はい、それで佐藤先輩に『アンタは陸上部のお荷物だ』って大勢の前で

 言われちゃいました。まあ、元から運動が得意じゃなかったボクみたいなのが

 下手に陸上部なんかに入るから悪いんですが......」


小戸森は少し悲しそうに言った。


「そういえば、部活紹介のポスターには運動の得意、不得意なく

 歓迎しますとか書いてあったけどな。とんだ誇大広告だった訳だ」


基本的に運動部の誘い文句は似たような物ばかりだがどれだけ楽しそうな

文句があれど、殆どの運動部というものはハードだ。勿論、その中にも得意、

不得意は存在しその差が開いていれば開いている程格差も広がっていったりする。


「それに、ボクって一人称こんなのじゃないですか?」


同意を求めるように小戸森は聞いてくる。


「まごうことなきボクっ娘だな」


小戸森の様なリアルボクっ娘を見るのは初めてだが話し方が

滅茶苦茶特徴的なアイツのせいであまり気にしたことは無かった。


「そのせいで『女なのに変な一人称使うな』って佐藤先輩にも言われまして

 先輩と会うまではずっと自分のこと、『私』って言ってたんです」

 

確かに女が自らを『オレ』『ボク』などと言ったりするのには批判的な

風潮が有るには有るが.......男女平等、男女差別ダメ絶対。それだけが

俺の唯一の絶対的なポリシーである以上一人称なんて物、女が何使おうが

男が何使おうが良いと思う。


「因みに聞くが、俺と話すときの一人称が『ボク』なのは何故?」


小戸森は確か、会ったときから一人称をボクとしていた筈だ。


「あ、あの時はその、助けて貰って安心したというか混乱したというか

 ちょっと気が動転して素が出ちゃったんです。先輩はそのことに何も

 言わなかったのでずっと素で居たんですけど......やっぱり変ですか?」


全然。


「いや、良いと思うぞボクッ娘。可愛いし、後、可愛いし」

 

ボクッ娘めぐめぐ最高。


「そ、そうですか。ま、まあ嬉しくないことも無いですが」


小戸森は明らかに動揺して、頬を真っ赤に染めている。


「それで? 結局陸上部は何でやめたんだ?」


俺が聞くと、小戸森は我に返り口を開いた。


「えと、それから佐藤先輩は顔を会わせる度に一々何かしら

 絡んで来るようになったんです。陸上部の皆さんもそれからは

 見てみぬフリをするようになって、結局誰も頼れなくなりました」

 

恐らく、佐藤はかなりのスクールカースト上位者なのだろう。佐藤がしたこと

には誰も文句が言えず、周りの人間は傍観するしか無かったというわけだ。


「陸上部って、部室に荷物を置いてから運動場に行くんですけどその部室に

 置いてた荷物を荒らされたり、暴言を書いた紙を荷物に入れられたりして

 結構精神的に追い詰められてたボクは陸上部を逃げるようにやめました。

 多分、荷物を荒らしたりしてたのは佐藤先輩と一緒に私に絡んできてた

 先輩だったんだと思います」


佐藤、俺からしたらかなりの小物だったんだが結構悪どいことをしているな。

全く、山本と言い佐藤と言いどうかしている。


「まあ、そこまでして陸上部に留まる必要もないだろうからな

 それで、自然観察部に入ったのは何故に?」


俺がそう聞いた瞬間、かなり大きな音が学食、いや学校中に響いた。


「あ、すいません。授業10分前ですから話の続きはまたということで

 今は早くご飯食べましょうか」


小戸森が慌てるのも無理はない。話し込んでいたせいで

殆ど俺たちの頼んだ飯は食べれていない。これを一瞬で

食べきって、教室に帰らなければならないのだ。


「チッ、間に合うか!?」


俺と小戸森は続々と周りが帰っていく中無我夢中で学食を食べまくった。

小戸森の話を聞くのは、明日になりそうだ。




なんとなんと! もうすぐ40ptです! 毎度毎度拙い文章と拙い想像力で作られた

こんな作品を見てくださってありがとうございます! これからも前科部を宜しくお願いします!

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