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前科部!  作者: 蛇猫
前科者達との自然観察
28/108

毒を蝕む毒


六月、世間では夏と等しい猛暑が騒がれているなか、少し肌寒い風が

静かに顔を撫でていき、周りの木々ではヤマガラだろうか3羽程の

小鳥が騒いでいることからまだ初春ではないかと疑わされる。


「先輩、何ボーッとしてるんですか」


「.....何だ小戸森か」


俺は見知った後輩――小戸森の姿を目にとらえて言う。


「先輩、何かありました?」


「いや、別に......」


俺がそう答えると小戸森は


「何か先輩、何時もと雰囲気違う気がしますけど」


と、訝しげな目を向けて言ってきた。


「あー、あれだ。寝起きだからじゃねえの?」


俺はわざとらしく欠伸をする。


「......そですか。なら良いんですけど」


気づかなかったが、小戸森のセミロングの黒髪は

寝癖のせいかボサボサになっている。


「昨日は良く眠れたか?」


「眠れる訳無いじゃないですか。だって自然観察部の

 皆さんと寝るだけでも緊張するのに、先輩とも一緒ですよ?

 お陰でボクは寝不足です」


「俺は疲れてたからか直ぐに寝付けたけどな」


非現実的過ぎて麻痺していたのかもしれない。


「何ですか、先輩。女の人と寝るのは慣れているって言うんですか?」


「そう見えるか?」


「いえ、全く。強いて言えば、コミュ障のぼっちに見えます」


自分で分かっていても流石にそこまで断言されると心に来る。


「そうかそうか、優しくて頼りがいあるイケメンな先輩に見えたか」


「先輩、言いたい言葉の対義語で話すのはやめて下さい」


口悪いなこの後輩も。止めろよ? めぐめぐまでもが

調月みたいな冷徹女になったら嫌だからな。


「対義語じゃなくて類語だ類語」


「あ、そろそろ着きますよ」


小戸森は少しず遠くのバス停を指差して言った。

9時現在、宿から出て家へと帰宅中だ。後、軽く

スルーするの止めてくれません?


「もうバス来てるけど大丈夫かあれ」


何やら俺達の前を歩いていた先輩達が滅茶苦茶走っている。

・・・・。


「『大丈夫かあれ?』じゃないですよ!! 思いっきりボクたちが

 乗らないといけない奴ですよアレ!!」


小戸森はそう言って走り出した。ええ......走るの嫌なんだけど。

しょうがない走るか。


「ちょ、先輩!? 何でそんな速いんですかあ!」


「悪い、俺はこれでも短距離走は得意なんだよ」


まあ、50mまでだけど。叫ぶ小戸森を他所に俺は全速力で走っていく。

腐っても、運動神経抜群の親の子だ。素質はあったのかもしれない。


「ぜえ、はあはあ、ぜえはあ......。はい、間に合った」


俺はバスの座席に座って息を整えた。


「滅茶苦茶息切れしてるけど大丈夫?」


横に座った先輩がそんな風に心配してくれた。


「はあっ、はあっだだいびょうれすよ」


「ごめん、ちょっと何言ってるか分かんない」


何で分かんねえんだよ。


「すいま、せん。大丈夫です」


「うわあ、祐也君体力無いなあ」


「舐めないで下さい。体力は愚か鉄棒の逆上がりも出来ませんよ」


おまけにカナヅチだ。


「あはは、祐也君少しは運動しなよ」


「断固として拒否させて頂きます」


そんな会話をしていると、俺がバスに乗車してから30秒程後に息を

切らしながら乗車した小戸森の視線を感じた。やめろ、そんな怨念籠った

視線を向けるんじゃない。言っておくが俺は基本的に男女平等主義者だ。

レディーファーストとかも守らない。男が主婦業やっても良いと思うし女が

男の代わりに働いても良いと思う。よって俺は女子の小戸森も平気で置いていく。

『女の子は大切に』なら『男の子は乱雑に』扱って良いのかと小学生のとき

保険体育の先生に質問した強者舐めんな。


「それで、今回の郊外学習はどうだった?」


先輩は此方にグイっと顔を近付けて言ってくる。

止めて、只の非リアオタクには辛いものがあるから。


「先輩、もうちょっと離れてください」


「あ、ごめんごめん、で、どう?」


先輩は少し恥ずかしそうにしながら俺から離れて聞いてきた。


「そうですね。特に目立ったトラブルもありませんでしたし

 良かったんじゃないですか?」


まあ、俺としては幻中との大きなトラブルがあったんだが

其処は黙っておこう。


「あはは、そだね。君が来るまで幻中さん達とも殆ど話したこと

 無かったから私としても楽しかったよ」


先輩は本当に楽しそうに言った。


「そう言って貰えると企画した甲斐が有りますよ」


「うん、本当にありがとう。君が自然観察部に来て良かったよ」


面と向かって礼を言われると結構照れる。


「ま、まあ上里さんは有能なんでこれからも貢献しますよ」


「あはは、祐也君、さては照れてるな」


先輩はニヤニヤしながら言ってくる。

この人感情読みを使ったな。


「あ、言っておくけど昨日言ってた感情を読む奴は使ってないよ。

 普通に表情で分かっただけ」


それは無意識に感情読みを使っているのではと思ったがどうやら違うらしい。

聞いてみると『アレはじっくりと相手を観察しないといけないから』という回答が

返ってきた。俺ってそんなに分かりやすいのだろうか?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「第一回目郊外学習、これにて終わりだ。各自、感想文を書いてくるように」


俺達はバスを降り電車に乗って帰ってきた。

今は家の最寄り駅前で宗里先生の話を聞いているところだ。


「そういえば、宗里先生、このノートどうするんですか?」


俺は荷物の中から自然観察記録帳を出して聞く。


「ああ、それな。私が預かっておくよ。じっくりと家で読ましてもらう」


うわ、中身見られるのかよ。俺は作文とか書くのは好きでも

読まれるのは嫌いなタイプの人間だ。


「言っときますけど、内容は俺だけが書いた訳じゃありませんからね」


こう言っておくことで責任が分散されて読まれる苦痛が減る。

何? 小賢しいって? 何だ誉め言葉じゃないですか。


「分かっている。じゃあ各自解散な」


「んじゃあ、さようなら」


俺は皆に別れの挨拶をして、帰路を歩き始めた。

......だが、横に何かがいる。


「あら、貴方生きてたのね」


調月だ。そういえば家が近いんだったな。


「逆に聞くが、何処に死ぬ要素があった?」


「貴方の行動は全てその可能性を孕んでいたと思うけど」


「いや、俺そんなに危なっかしくないから。

 というか、お前と殆ど行動一緒だったから」


というか、何? コイツの口の悪さはなんなの? 病気?

つーか、毒舌系ヒロインって大体そのヒロイン自体が完璧美少女だったり

するけどコイツの場合は只の堕落系美少女じゃねえか。一応、美少女の点は

事実なので認めるが、俺はこんな毒舌系は許さん。俺が好きなのはもっとこう

クーデレで無口で丁寧な感じでだなあ......。いかん、性癖が出そうになっていた。


「気色の悪い目で私を見つめないでくれるかしら?」


『気持ちの悪い』より『気色の悪い』の方が心に刺さるよな。


「うるさい、お前はどれだけ俺の心を傷つければ気が済むんだよ」


「私は事実を述べただけよ」


「そうですか。俺の目が気色悪いのも事実ですか」


「ええ、理解してくれたようで何よりだわ」


其処は少し否定して欲しかった。


「お前の言いたいことは理解したが、認めてはいないからな?」


「なら、早い内に認めておきなさい」


「嫌だよ。というか、お前も目は綺麗じゃないだろ」


「この前も言わなかったかしら、他が整っているから良いのよ」


そういえば、そんなこと言ってましたね。お、俺も外見整ってる......し。

そんな風に健全な高校生なら確実にしないであろう会話をしながら俺達が

歩いていると、突然調月が立ち止まり


「......申し訳ないのだけれど、先に行かせて貰うわ」


と、言って俺を置いて、早歩きで進んでいった。


「え、ちょ。おい」


調月は戸惑う俺の声には答えず、早歩きを続ける。

その先には40代前半に見える少し派手な女性がいた。

その女性は調月に気付くと、調月の方に近寄って行き調月に話し掛けた。

調月もそれに反応して話しているところを見ると、親子なのだろう。


「常識的に考えると、男と二人で歩いているところを親に見られると

 不味いから俺と別れて親と合流したって感じだよな」


感じだよな......なのだが、それにしては調月の顔が暗い気がする。

その事を俺が妙に思っていると、突然女性は調月の顔を叩いた。


「あ?」


俺は予想もしなかった出来事に思わず声が洩れてしまった。

只の親子喧嘩のノリではない。見ている限り調月が一方的に女性から

暴力を受けたようだった。あの憎たらしくて毒舌の調月が無抵抗に。

顔を地面に向ける調月に女性は何かを言うと、調月と一緒に歩き始めた。


「これって......どうすれば良いんだ?」


調月は元から女性の存在に気付いていたようだったので、女性は不審者の

類いでは無さそうだし、誘拐されている訳でも無さそうだが......。


「......追いかけるだけ無駄か」


俺が自分で考えた結論に過ぎないが、俺の考えはこうだ。調月の

反応からして、恐らく女性は調月の母親だ。調月が叩かれた理由は

分からないが、女性と顔を合わせたときの調月の表情から察するに

調月の母親は少なくとも、今日以外に暴力を調月に振るったことがある

と考えられる。まあ、日常的......とまでもいかなくても結構暴力的な

親なのだろう。そうでなければ、調月はもう少し抵抗なり怒るなりとした筈だ。

先程の調月は本当に無抵抗で何を言うわけでも無く黙って叩かれていた。


つまり、只の同じ部活の部員でしかない俺が調月の母親に調月を叩いた理由を

問い詰めたりと、出しゃばったところで何も解決にならないだろう。いや、

俺が不用意に口出ししたせいで、調月への暴力が激化する可能性もある。

もしかしたら、俺の勘違いで本当は只の喧嘩の可能性も有るしどちらにせよ

部外者の俺がどうこう出来る物でもない。それに俺にはその問題をどうにかする

義務もない。下手な偽善はしたくないし、俺は関わらない方が吉だろう。

調月には悪いが見なかったことにさせて貰い、俺は家へと急いだ。


「ただいま帰りましたよっと。ああ、親父は今日休日出勤か」


家に帰ると、俺は誰も居ない空間にそう言って自室に入った。

時計を見ると丁度昼飯時だが、腹は空いていない。


「まあ、やることも無いし、パソコンでも弄くるか」


......集中出来ない。パソコンもゲームも本も何をしても

集中することが出来ない。宿題をどっさり残したまま夏休み後半に

突入して、宿題のことで何もかも集中出来なくなるのに似ているだろうか。

であれば、俺の宿題はなんだって話なんだが......。


「祐也、帰ってるか~?」


俺が悩んでいると、扉が開く音がしてそんな声が聞こえた。


「おう、帰ってるぞ」


俺は自室から出て親父を迎える。其処には何故だか

ホカホカとした顔をする親父が居た。


「ヒャッホー、昼の間に帰れたぜ」


「まあ、休日は半分に減ったけどな」


喜ぶ親父に俺は事実を突き付ける。


「それを言うな、それを。で、どうだった? 郊外学習とやらは」


「ああ、別段感想は無いが......。まあ、学校の修学旅行とかよりは楽しかったな」


修学旅行の何が楽しいのか分からん。行きたくも無い場所に連れていかれて

それでもどうにか楽しもうと思っても、グループと称された悪夢の集団と

行動を共にしなければいけないのだ。折角貴重な展示物があって見ようと思っても

俺は奴等の金魚の糞の様に付いていかなければならないので見たいものも見れない。

更に言えば、居心地も悪く、出される飯は嫌いな物が多く、小戸森のように

嫌いな物を食べてくれる人も居ない。結論、修学旅行は地獄、小戸森は天使。


「ほお、満更でも無さそうじゃないか。じゃあ、ラブコメみたいに

 誰かと進展はあったか?」


「んなもん、無いに決まってるじゃないですかヤダ」


「チッ、芦原さんとか滅茶苦茶良い人そうだったから

 何かあれば良いと思ったのに」


親父は舌打ちをしながら言う。


「アンタの子供だからな」


「言っておくが、俺は妻持ちだぞ。つまり、祐也よりもモテる」


実の子とモテるかどうかで争う父親って一体......。


「俺としては今でも親父が母さんみたいな人を

 手に入れられたって言うのが信じられないんだが」


「まあ、俺はお前よりも男らしさがあるからな」


「俺、別に『男』って言葉に引かれないから羨ましくないぞ。

 どちらかと言えば『女の腐った奴』って言われる方が良い」


男の友情とか男らしさとか全く共感できない。

女子力が高いのだろうか?


「女の腐った奴ってな、お前」


親父は呆れた様に首を振る。何時もと同じ親父との会話。

しかし、俺の心の何かがそれに身を委ねさせようとしてくれない。

まるで、何かを忘れているぞと言うように。


「......すまん、用事が有るから少し出掛ける」


徐に俺は親父にそう言い残すと、扉へと向かった。


「お、おう。分かった行ってこい」


そんな親父の言葉に見送られ、外に出た。気分転換に本屋にでも行こうと思ったのだ。

只、それだけ。他意はない。その証拠にきちんと財布を握り締めて、本を買う準備も

出来ている。そう自分へと言い聞かせ、俺は丁度一週間前に訪れた本屋へと向かった。


本屋に着くと、真っ先に向かったのは生物学のコーナー、滅茶苦茶広いわけでも

無いのでこないだの一度で場所は覚えてしまった。目当ての生物学の

コーナーを見つけて俺はその列に入ると、其処には


「......あら、この前も此処で会った気がするのだけれど

 曜日まで合わせて、付け回すとはストーカーとしては一流ね」


と、挨拶代わりにそんなことを言う、少女の姿が会った。




ユニークアクセス500行きました! ありがとうございます。

他の方の小説のユニークアクセスは5桁、6桁いっている人もざらに居ますが

底辺なりに頑張ります! そして、ポイントが30を越えました!

0ポイントでさ迷っていた時代も長く感激です。


評価、ブクマ、感想本当にありがとうございました。

引き続き、10000ユニークアクセスと50話までに50ポイントを

目標に頑張りますので、まだされていない方はどうか、どうか評価、ブクマ感想を

お願い致します。これからも『前科部!』をよろしくお願いします。

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