ファッションとバーガーと生徒会長
さて、突然だが問題だ。
Q、今日は土曜日、英語で言うならSturday。サービス業等の職種を除く多くの人間達が学校、会社から解放される尊き日......なのだが、そんな今日、俺は一体何をしているだろうか。
「おお、これも良いな。祐也、どうだこれ? 試着してみてくれないか?」
「ああ......分かった」
A、親父に着せ替え人形にされている。
上里徹也によるファッションショーが絶賛開催中である。どうもこの微妙に田舎と都会が共存した街にもショッピングモールという物は存在するらしく、親父に朝早く起こされて気付いたらファッションショーに参加させられていたのだ。
「親父、後どれくらいで終わるんだ?」
流石に30着強も試着させられていると飽きるし、店にも迷惑だ。
「お前が、一番大切な物に気付いた時、だな......」
何だそれ。
「はあ......疲れた」
ファッションショーが閉会し、親父の気に入った服数着買った頃になると、俺は精神的にも体力的にもかなり疲労していた。
「若干、早い気もするが、飯行くか」
俺は親父の言葉に頷きフードコートへと向かった。
「さてと、祐也、何を食う?」
フードコートは中々賑わっており、たこ焼きやら
焼きそばやら、ホルモン焼きやらの店がずらりと並んでいる。というか、こなもん多いな。
「任せる」
ついでに、不味かったときの責任も託す。
「了解、じゃあたこ焼きはどうだ?」
「タコ嫌い」
「じゃあグラタン」
「玉ねぎ嫌い」
「海鮮丼は?」
「生魚、タコ、イカ、エビ、カニ貝類が入ってないなら良いぞ」
「食べられないものばかりじゃねえか!」
親父が急に声を荒らげた。いや、だって俺、嫌いな物多いですし、そこを考慮した上で言って頂かないと......。
「はあ......お前な、あの子が作ってきた弁当は普通に食ってただろ?」
親父の言葉に背筋が凍る。
「いや、アレは何というか、食わないと殺されそうだったし。量も調整してくれてたからな」
「はあ......もう良い。ハンバーガーなら食えるだろ。それで良いか?」
俺が頷くと親父は『やっとかよ』と苦笑し、俺に席の確保を命じて長蛇の列に突撃していった。俺も親父の服選びに長時間付き合わされたからおあいこだろう。
「おーい!」
俺がそんなことを考えていると、威勢の良い少女の声が聞こえてきた。女子高生が待ち合わせでもしているのだろうか。
「休日のショッピングモールで待ち合わせ、か。楽しそうだな」
俺の呟きは周囲の人間の話し声によって残響も残さずかき消された。ふと、親父の方に目を向けると、彼はうんざりした顔をしている。15番目くらいに並びながら。......ちょっと、可哀想。
「あのさ、ねえ、君、祐也君だよね?」
すると、突然、先程『おーい』と叫んでいた女子高生が俺に話しかけてきた。
「違います」
「え? いや、祐也君でしょ?」
「人違いです」
「じゃあ、君、誰?」
「勘解由小路と申します」
「何その苗字!? 華族!?」
「......で、何の用ですか先輩」
「あ、結構、あっさり観念するんだ」
「いや、結構、抵抗したんですが。首都機能、奥地に移動させてもっと、徹底抗戦した方が良かったですか?」
「いや、しなくて良いから。私のことを何だと思ってんの」
「敵軍」
「いや、あのさ敵軍.....んう!? 私のこと敵軍だと思ってんの!? 後、先輩じゃなくて白嶺先輩ね!
「白嶺先輩、何でこんな所に居るんですか」
「この辺の人達、大体、休みは此処に集まるよ?」
他に娯楽は無いのかよ。やだこんな街。
「俺の所に来た理由は?」
「さっき、祐也君がお父さんみたいな人と一緒に居たのを遠くから見つけてさ、見つからないように付いて行ったんだ」
「さらっと言ってますけどストーカーですからね、それ。で、用件は何ですか?」
「用がないと君に話し掛けちゃ駄目なのかな?」
「いや、うん。別に良いですよ。じゃあ、特に用は無いんですね?」
「そそ。取り敢えず、ご飯一緒に食べて良い?」
「親父もセットで付きますけど」
「お父さんがOKしてくれるならご一緒させて貰おうかな?」
絶対あの人面白がってOK出すじゃないですかヤダー。
「おーい祐也バーガーセット......」
「あ、どうも。祐也君の学校の生徒会長で、祐也君の部活の部長で、祐也君の友達の芦原白嶺です」
母さん、俺は今から地獄の方が幾らか生温いような状況を味わいます。先輩と親父、混ぜるな危険の匂いしかしません。どうか、其処で見守っていて下さい。




