『進化』と『進歩』
「生徒......会長?」
「はい、岬川高等学校の生徒会長です」
「その、息子とはどの様なご関係で? まさかお金を借りていたりは......」
自分の息子をなんだと思っているのだろうか。
「あはは、違いますよ。転校生の祐也君とは最近、知り合っただけのただの友達です」
「ちょっと、おい、祐也。こんなに可愛い先輩の知り合いを作ってるなんて聞いてないぞ」
本人は耳元でヒソヒソ喋っているつもりなんだろうが、先輩と単純に距離が近いのと、親父の声がそもそも大きいのとで先輩には丸聞こえである。その証拠に先輩、少し苦笑いしてるし。
「別に言う必要無いだろ」
俺がそう言うと二人は重ねて
「「可愛いは否定しないのか(しないんだ)?」
駄目だこれ。やっぱり、この二人、混ぜるな危険だ。気を紛らわせようとハンバーガーにかぶりついても、味がしない。早くこの状況から脱さねばと本能が言っている。
「芦原さん、生徒会長と部長を兼任してるんだろ? 大変だな」
「いえいえ、そんなことありませんよ。ウチの部活、部員が少なくて廃部の危機にあったような、こじんまりとした部活なので」
「そっか。精々、好きなだけ祐也をこき使ってくれよ?」
ふざけんな。
「あはは、分かりました。これからは祐也君を使わせて頂きますね」
「おい、祐也も黙っていないで何か言えよ」
親父は笑いながらそう言ってきた。この男、絶対俺が苦しんでいることを分かってて言っただろ。祟ってやる。末代まで。あ、末代俺か。
「別に話す事とか無いし」
「すまん。こんなコミュ障の息子だが、仲良くしてやってくれ」
こんな奴とは何だ。こんな奴とは。
「はい。祐也君とはこれからも良くさせて頂きます」
「はああああっ......」
俺は鬼のようにデカい溜息を吐いた。
⭐︎
それからも先輩と親父は気が合ったらしく長々と喋っていた。そして、その間、ずっと俺は恥ずかしさと気まずさに悶えていた。
「あ、見たい映画が始まるのでそろそろ失礼します」
不意に立ち上がった先輩が俺と親父に告げた。時刻ら1時。食べ始めたのが12時前だったのを考えると、かなりの時間が経っていた。
「この、ショッピングモール映画館もあったんですね」
「うん、4階にね。じゃあ、失礼します」
先輩が親父にペコリと頭を下げ、俺に軽く手を振った。
「じゃ、バイバイ、祐也君。また月曜日ね?」
「あ、はい。さようなら」
「ああ、またな」
俺と親父がそう言うと、先輩は手を振りながらエスカレーターの方に行ってしまった。
「行っちゃったな」
親父が少し寂しそうにアイスコーヒーを飲みながら言った。
「ああ、行ったな」
対する俺は緊張と気まずさから解放された事もあり
、非常に脱力していた。
「うし、そろそろ帰るか」
親父がコーヒーを一気に飲み干し、俺に言った。
「了解」
すると、その道中、駐車場へと歩きながら親父が
「お前、良い友達に恵まれたな」
と何やら、感慨深そうに言ってきた。
「先輩の事か?」
俺が聞くと親父は『ああ』と頷いた。
「性格も良さそうだし、フレンドリーだし、おまけに生徒会長で可愛い。ギャルゲーの主人公か何かか? お前は」
ギャルゲーならもっと学校生活が円滑に進むはずなんだが。
「あのな、俺は転校生でありながら知り合いも殆ど居ないし、クラスの奴らにすら、声を掛けられたこと無いからな」
しかも最近、調月と険悪になったばかりだ。
「まあ、予想はついてた」
「俺がクラスで孤立するだろうと?」
「ああ」
「酷い予想だな」
事実だが。
「お前もそうは言うがな実の所、そこまで傷付いてないだろ?」
親父が見透かした様に言ってくる。
「まあな。前の学校でも似たような物だったし。元々、群れるのは苦手だ。そりゃ、本当に仲の良い相手とたくさん付き合うなら良いけどさ。如何に空気を読んで周りに合わせるか、如何に孤立しないようにするか、そんな事ばかりの関係に自ら飛び込もうとは思えない」
うまく立ち回り、巧みに駆け引きをしなければそこに残れないのなら、わざわざそんな場所に居る必要などない。すると、急に親父は立ち止まった。幸い、人通りの少ない道だったので邪魔になる事は無いだろう。
「お前.....強いな」
そして、立ち止まった親父が発した言葉は予想外の物だった。
「はい?」
俺が強い? ......そりゃあ弱者を極めすぎて逆に強いかもしれないが。
「......俺に守れなかった物をお前になら守れる気がする」
意味不明だ。
「親父、マジでなに言ってるんだ?」
「祐也、お前はお前のままで居てくれよ。頼む」
意味が分からない。
「いや、だから何の話......」
「俺が言いたいのはそれだけだ」
親父は俺の質問を遮る様に言う。思わせ振りな発言
しときながら、自己解決するって、一番嫌なやつだと思うの。
「人間の価値観や考え方なんて常に変わる物だろ。そのままでいるなんて無理だ」
勿論、その『進化』が『進歩』に繋がるかは別だ。生物学的に言っても進化なんて有利にも不利にもならない『中立進化』が殆どだっていう説も有るし、人間の変化だって似たような物だ。
「常に変わる、か」
親父は何故か、俺の言葉を聞いて寂しそうに笑っていた。
ポイントが15になりました!
遅れましたが評価してくれた方本当にありがとうございました
そして、感想を書い頂いた方にも心からのお礼を言いたいです
良い点を更に生かせるように 指摘された点を治せるように
頑張っていくのでこれからもよろしくお願いします




