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第二十五話 帝都

軍のアルゲン駐屯は一ヶ月にも及んだ。

一ヶ月にもなると富樫の髪は伸びに伸び、肩程でまとめる程の長さになっていた。

そして作業面では瓦礫、死体処理はほぼ完了し、後は埋葬の順番を待つのみとなった。

エリゼが行っていた指揮を再び富樫が執るようになり、火葬作業、埋葬の穴掘りなどの「死」に関わる作業を率先してとるようになった。

エリゼはほっと胸をなでおろしただろうな…。

富樫は自軍兵、敵兵をかまわず丁重に葬った。

富樫の目には相も変わらず泣き腫れが出来ていた。

火葬場の白い煙がもくもくと赤い夕焼けに加わっていった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

一方、帝都では…

「セドリックー? 寝てるのですかー?」


ミカエラは不審そうにセドリックの執務室を覗き込んだ。

どうやら寝ているらしい。


「あなたを見ると、どうも死んだ弟が蘇るのです…。」


ミカエラはセドリックに近づき優しく伸びた前髪をたくし上げた。


「目の下にクマが…教育省も大変ですね。」


産業指導省、文化教育省が主導して教育改革が行われているためミカエラは文化教育省に自由に出入りが出来るのだ。


「それにしても何なのですか、この紙の山は…。」


ミカエラは膨大な紙束からぺらりと一枚の紙を取った。


「…⁈ これは…。」


ミカエラは何かに反応して叫んだ。


「セドリック! 起きてください!」


「んんぅ…?」と目をこすっているセドリックにミカエラはどんどんと問い詰めた。


「セドリック! なぜあなたがオウェリナ主戦派の機密文書なんか持っているのですか⁈」


セドリックは一瞬にして目が覚めた。

この機密文書は本来この国にあってよいものではない。

この文書がこの国にあるというのはすなわち所有者の内通が疑われるのである。


「それはあれだ! み、密偵に盗ませたんだ。」

「嘘よ、教育省は軍事介入機関でないはずです!」

「ト、トガシ様の密命だ。それに教育省は教育の概念での軍事介入は許可されている!」

「でもそれは…これを持っていていい理由じゃないじゃない!」

「ミカエラ、落ち着きたまえ。」

「いいえ! 今すぐトガシ様に…!」

「くそっ…そうはさせない!」


セドリックは資料の上に置かれていた文鎮でミカエラの後頭部を殴った。


「ト…ガシ…様ぁ…。」


ミカエラは気を失い執務室に倒れこんだ。

黄色い絨毯にはぽたぽたと赤い血が垂れ落ちていた。


「許せ、ミカエラ。これも復讐のためだ。」


セドリックは襟を正すと眼鏡をはずした。

そして一息つくと。


「ごめん…ねぇちゃん。」

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