第十七話 開戦
戦車もできたしヘリコプターもできた。
歩兵の装備も近代化が進んでいるし第三方面隊の戦艦大隊だって戦車の砲塔を付けてそれなりにはなった。
いつでも戦う準備はできている…が僕はいまだに開戦を布告しない、いや出来ないんだ。
僕みたいな人間は平和ボケしていて戦争なんて考えたこともないししたいとも思わない。
そこで考えることはただ一つだけ、専守防衛論である。
自らの手で他国を害さず侵略されたときにのみその手を振るう。
そのために俺は何が出来るのだろう…。
~そして二ヶ月の時が過ぎた~
本当にあっという間だった。
サリエール暦二十三年四月 サリエール帝国北方都市アルゲン 同サリエール陸軍第一師団アルゲン駐屯地
新型迷彩服を身に纏った若い兵士らが鉄櫓から双眼鏡を構えている。
「主戦派が攻め込んでくると聞いていたがなかなか来ないな…。」
「だがこれだけ時間が経ってくると妙に不気味だな。」
「まあこっちには不死身のトガシ様がいるし問題はないだろう。」
「…⁈ ちょっと待て…あの黒い影は何だ⁈」
「ああ? 黒い影?」
「俺から見て七時の方向だ。」
「あっ、あったぞ! おいハンス本部に連絡、軟性の方向に敵兵大多数。行け!」
「ハイっ!」
ハンスという若い兵士は櫓を降りて本部へと走っていった。
櫓に残った兵士は額に冷や汗を流して迫りくる敵影をまじまじと見つめていた。
「これは…これはやばい数だ…。」
「俺、お前らの分のライフル取りに行ってくる。」
「おう、頼んだ。」
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同時にサリエール宮殿に伝達が入った。
富樫が皇帝用制服に着替え自室から出ると宮殿内は各省庁の職員や陸軍文官などがあわただしく作業をしていた。
「とうとう専守防衛論のご活躍か…。」
僕は小さく呟いた。
するとそこに陸軍大臣オルゴ、海軍大臣ミネルバ、航空大臣ゼウが会議室に集合していた。
「これは皇帝。只今アルゲン駐屯地から伝達がありました。」
「とうとう…開戦です。」




