8
「我々の次元は、まぁ下から数えたほうが早いほうなんで、低位次元のうちの一つです。そして我々の仕事というのは、それよりも下に位置する次元に誕生した世界を管理すること。もっと具体的にいえば、『不合格』や『有害』と判断された世界の破壊です」
「だから破壊神なのか・・・」
無数に世界がいる、だが世界はまた、お互いを侵食し合えるような存在なのだ。
この空間に漂う無数の光は、青い以外にも赤や、緑、白などの色があった。そしてそのすべては世界の判定を示している。
その中で、赤い色の光を持つ世界は他の世界に対して有害とされているだとか。
有害の世界は他の世界に侵食し、そしてそれがやがて我々がいる次元にも届く存在となる。
すべての次元を含めて人体に例えるのならば、各次元に存在する有害な世界はいわゆる癌細胞かウィルスなどみたいなものだとか。
なにやらエネルギー循環などの問題もあるようで、そこら辺はもっと複雑の内情があるようなので、基本的に分かりやすいこのイメージでしか伝わっていないだそうだ。
「『有害』なのはわかったけど、『不合格』というのは?」
「ふむ・・・基本、『不合格』の世界の処理は破壊神ではなく、創造神の仕事なんですが。時々手が足りないときに、最終手段としてこちら側に回ってくるのです。そして破壊神の仕事は破壊するだけ、回ってきた時点でその世界の処分は決まっていますね」
創造神は「理」の完成度が高めるためのものらしい。
世界を一から創造するというよりは、世界を一から創造し直すことをメインの仕事としている。
不合格の世界はいわば、「理」の完成度が高くないのか、重要な欠陥があるのか、致命的な問題を抱えている世界。
いずれ自滅するか、そのまま常に上位に存在する次元から故意に「もの」を吸い取るようなものに成り下がるか、有害となる前の世界であるのがほとんどだそうだ。
そういう世界を補完し、修理・改造するのが創造神の仕事。
「あなたはどうも、破壊神よりも創造神寄りの適正を所持しているようですね。まぁ、適正があるだからと言って、そう簡単になれるものでもないのですが」
「それは・・・どういう意味なんだ?そもそも適正ってなんだ?面接のときもそう言われたけど、俺にはなにがなんだか・・・」
「・・・そうですね」
手の仕草で招かれて、俺たちは外へ伸びるような橋の一つを通る。その先にある円状の陣みたいな場所へ届くと、なにもしていないはずなのに、一つ赤い光を纏う「世界」がこっちにすこしつづ近寄ってくる。
「どこの世界の存在にも居るのです、特別な才能や資質を持つものが。それらを開花させられる者を時に『天才』などと呼ばれ、『普通の者』と一線を化す存在として扱われます。そしてそういった存在を前に皆同じことを言うのです、その才を持つ領域ではまるで次元が違うのだと」
「それってただの言葉のあやというか、そういうもんだと思うんだ・・・」
「いいえ、その感想は正確なのです。世界の誕生と存続自体に『理』が関わっている以上、すべてのものには『役割』とそれに適した『適正』を持って産まれるのです。正しい領域に適切した者を割り当てればどうなるのか、もはや言われるまでもありませんね。皆同じように言うのではありませんか、『彼/彼女は、《ナニカ》に成るべくして産まれた』のだと」
そう言われれば、俺も納得するしかなかった。
確かに、学校でも、社会でも、職場でも。天才と呼ばれるほどのものでなくとも、人員を適切に配置することで、その効率と成果がぐっとあがるもの。
その逆にすれば、才能があったとしてもなにも発揮ずに浪費されるだけ。
ならば、破壊神になるために必要なものを、俺も持っているということなのか?それって、どういうものなんだろう?
「破壊神に求められるのは、端的に言えば『理』の矛盾を見分ける能力と、『次元』を認識し区別できることです」
男はどこからか一枚の紙を取り出し、俺に渡す。
それはまさに面接時に受け取った三つの文章について書かれていたものだった。そういえば、適正を試すためのものだったなぁと思い出す。
たしか、簡易版だとも言っていたっけ。
「『理』について是非の見分けもできぬものは、その『理』の流れからは抜け出すことができません。『理』が正しいと定められたものをそのまま受け入れ、信じて疑わぬ唯の人となってしまいます。『次元』の違いを認識することができなければ、『次元』に囚われ、一つ『世界』の境界を定めることができず、抜け出すことができません」
ちょっと待て!それってどうやって試すんだ?
面接の時に俺がやったことといえば、渡された小説の文章にツッコミを入れただけだと思うぞ?
あれで『理』の矛盾を見分ける能力を試せるというのか?ありえねぇーだろう、オイ。
「いいえ。真に破壊神になるのであればそれ以上も求められてしまいますが、我々は破壊神の仕事を代わりにこなすことができる最低限の能力さえ持っていれば問題はないのです。――これはあくまでもバイトなのですから」
「あ、そうか・・・これはバイトの話なんだ・・・」
話の内容が内容だけに、思わずそれ自体を忘れてしまいそうになった。
簡単にまとめようとしていたらいつの間にかこの量になっていますね・・・3話以内で、実際のバイトまで持っていけるのでしょうか。




