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「うぅ…」
あ、頭が痛い…
私が悪いのはわかっているけれど、ここまでぐりぐりしなくても…あともうちょっとでくびれができてしまいそうな力加減だった。…頭骨ってくびれるのかな?
まぁそんなこと置いといて、
「魔力を持つ生き物は魔族と魔物に一部の人間、それと精霊憑きの四種族だ」
「精霊つき?」
「精霊を身体に宿した生き物のことだ」
(はーわからんぞ)
「そのクスカがそうだ」
クスカ…たぬきのこと?ここには私たち以外にポチしかいないし
「はーポチすごいんですねー」
(流石わが子、すごい?んだなー)
とか思っているとレイさんが顎に手を当てて渋い顔をしている。
なんか言いたげだな、なんだ?
「なんですか?ポチについてなにかあるんですか?」
「いや…お前、グリズリーにも懐かれてたな」
いや、あの、専門用語的にこの世界の名称使われても困ります…
「グリズリーって何のことですか…」
「グリズリーはお前が餌やりしてるときに来る白いでかい生き物だな。今の季節冬眠してんだろうが、撫でてただろ」
…餌やりで撫でさせてくれたのは、熊ですね。あの灰色の熊のことですか?
え、あれも精霊つきとやらなんですか?
あー、あの子しか私に触らせてくれなかったな。ポチも素直?に触らせてくれたし、精霊つきは人懐っこいのか!納得~
「理解しましたわ~」
「絶対理解してないだろ」
(信用して…)
「まぁいい。精霊憑きは平たく言えば、母体にいるときに精霊が入り込むことでその生き物が精霊の属性の魔力が扱える生き物のことだ」
「え、じゃあ人間も精霊憑きになることも…」
「あるな」
おい!魔力持ちなのになんで差別されてんだ!!
「お前すぐに顔に出るな」
え?そうですか?
「この国の人間じゃないお前からしてみれば魔力を持っているのに恐れられない精霊憑きはおかしい存在なんだろ」
「そうですね、レイさんだって魔力を持っているからいけないみたいな話していませんでした?」
「したな。だがそれは黒いことが重要だからだ」
「?」
「いっただろ、魔族と魔物は身体に黒を宿す。魔力は黒を指す。一目でわかる指標なんだよ」
…まぁ黒いからだめなんですね、理解しましたわ~
そういえば、
「魔族とか魔物が黒いなら精霊つきは白いんですかね」
思い出せばあの熊は灰色、ポチは白。白っぽい。魔力魔力って魔力が黒ならなんで白いんだ?
「そうだな、精霊憑きになるとそうなるな」
「なんで白いの?黒くならないんですか?」
「俺は研究者じゃないぞ」
はーなるほどー知らないのか…
でも、そんなわからないことでも、いたずらが好きだけど人間に協力してくれる精霊とめんどうな魔族や魔物を区別できる色があるから…同じ人間でも黒かったら差別されるのかな。理不尽だなー…
「思うにお前は精霊に好かれる体質か魔力を持っていると思う」
「え?そうなんですか?」
「さっきも言ったが、俺は研究者じゃない。俺の少しばかりの知識ではそれぐらいしか考えられん」
「そうですか…」
レイさんは肩眉を上げ、他人事だな、と呟く。
まぁ、そんなこと言われても、ピンとこないし。
「今回の出来事があったんだ、原因ははっきりさせた方がいい。何回もこんなことがあっちゃ心臓に悪い」
「いや、お酒飲まなきゃいいんじゃないんですかね?」
「それはそうかもしれないが、酒が飲めないなんて退屈だろ」
(そんなにお酒好きなわけではないんですけど…)
「それに、そうやって出来なことを増やしていってみろ、なんも出来なくなったらどうすんだ。生きてても楽しくないだろ」
(んー?つまり?)
「原因がわかれば、それにどうすればいいのか考えればいい。お前が我慢する必要があることもあるかもしれないが、それが少しのことで済むかもしれない」
私はその言葉を聞いて、とても恥ずかしくなって視線を下に向ける。直視できない。
レイさんめっちゃ私のこと考えてない?やっぱり私のこと子どもだと思ってるでしょ?過保護だよ…私だったら他人のことそこまで考えない。それはその人の問題であって、自分が考える必要のないことだと思う。
そう考えるのは私が冷たい人間だからだろうか?
私のことを考えてくれることに嬉しく思う反面、そんな自分を恥ずかしく思った。




