第八話 天才な4人と努力な俺 戦闘編
「さて、これで優也さんを除いた全員が魔法具を持っていますね」
確かにそうだが、そこまではっきり言われると、ちょっぴり傷つく。
「みなさんのそれ、どれぐらい使いこなせるか試してみたくないですか?」
フィーアさん、不審者みたいだ。お菓子いらないかい?みたいな。
だが他の4人はそう思わなかったらしく、試してみたい!とウズウズしていた。
攫われたな、この4人。
「では、早速試してみましょう!」
フィーアさんもノリノリである。
俺とオルガーさんは、顔を見合わせて苦笑したのであった。
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庭、といっても家の敷地とは比べ物にならないほど大きいところで、剣で素振りをする人たちと、魔法を撃つ練習をしている人たちが居た。どうやらあれが、魔法隊と剣士隊らしい。
「では、此処で模擬戦をしてもらいましょう」
え、いきなりですか!?
そう思う俺に構わず、フィーアさんとオルガーさんは、隊の中でリーダー格になっていた2人を連れてきた。これで4人だ。
あれ?一人足りなくない?
「ちなみに優也は俺とだ」
え、マジですか。俺初心者なんだけど。
にやりという効果音の付きそうな笑いに、俺は乾いた笑いを返した。
「そこそこ才能はあるようだな。だが、まだまだ甘い!」
木刀を持って突っ込んでいく俺を、オルガーさんは軽くあしらい、その度に改善点を挙げてくる。
それを俺は聞き、うまく生かしながらもう一回突っ込む。その繰り返しだ。
「なあ、なんで俺を教えようと思ったんだ?啓とか拓斗とかの方が、もっとうまく戦えると思うんだが」
「だってよ、ちゃんとした魔法具を持ってる奴が居ねえじゃねえか。それに、まあ、その、なんだ。おまえが一番、成長できそうだと思ったんだ」
照れながら言われた言葉が、俺には純粋に嬉しかった。
なら、なおさら頑張らないと。そう思えた。
「そろそろ休憩にするか」
息があがっている俺に対して、オルガーさんは汗一つかいていない。何故だ。
「なあ…。なんか、あっちはすごいことになってねえか?」
オルガーさんの指す方を確認して、俺はため息をついた。
やっぱり、こうなったか。
「あれ、本当に人間か?」
あちらでは、魔法隊と剣士隊の人たちが、数十人と束で4人に立ち向かっていた。傍には倒れた人たちが転がっているというおまけ付きで。
「強い、強すぎる!」「これが異世界人の力か!」「勇者の盾硬すぎる!」
耳を凝らせば、戦っている人たちの声と思わしきものが聞こえてきた。
俺的には、拓斗が一番ずるいと思う。だって、盾絶対壊れないし。
その風景を見ていたオルガーさんは、何を思ったかこちらを向くと、しみじみと呟いた。
「お前、苦労しているんだな」
そうして肩に置かれた手に、俺は深い同情を感じたのだった。