第六話 個性豊かな仲間達
ガサガサ、ゴソゴソ。
「なあ、魔法具ってなんだ?」
「魔法具とは、魔法によって特別な効果が施された物のことを言います。魔法が付与されている物なら、宝石でも、あの埴輪でも魔法具となります。持ち歩くのに不便なので、基本的には指輪やブレスレットが一般的ですね」
ガラガラ、ガッシャーン。
「ただ、魔法具によって相性があるため、そんなにたくさん所持している人はいませんがね。…って、私の話をちゃんと聞いていましたか?」
埋もれた俺を助け出しながら、いかにも怒っていますというような顔で言うフィーアさん。
この山のような魔法具のバランス崩して俺を埋めたの、あんたなんだけどね!
怒ろうかと思ったが、出鼻を挫かれて、なんだか気が萎えてしまった。ドジっ子、恐るべし。
俺たちが手間取っている間に、啓と瑠香はもう見つけたらしく、早速手で持って振り回していた。
啓が持っているのは…、おい、それは確かに振り回すという使い方もあるよ、あるけどさー。
いくらなんでも、それを片手で、っていうのは無理があるだろ。
啓は、俺の両手を使ってやっと持ち上がるかというくらいのハンマーを、ぶんぶんと片手で振り回していた。あれ、人間か?
瑠香が選んだのは、紅色の扇子か。
武器にはならなさそうだが、瑠香にはお似合いだな。
そう俺が独りごちていると、何を思ったのか、突然瑠香が扇子を壁に投げた。
ええ!?それ、そんなに似合ってるのに、捨てちゃうのか!?
驚愕の面持ちで見守っていた俺だが、次の瞬間には、別の意味で驚愕した。
帰って行ったのだ。投げた瑠香のところに。壁に二本の傷跡を残して。
…どうやら、随分と珍しい物を選んだようで。
俺はついに、2人も普通人ではないという現実から、眼を逸らすことができなくなった。
そういえば美咲と拓斗の姿を見ないな、と思ったら奥の方に居るのが見えた。
声を掛けようと近づき―――――俺は固まった。
「僕が付けてあげるよ」
「ありがとう」
なんと、拓斗が美咲の手をとり、指輪をはめようとしているではないか!
といっても、あの二人だから、恋愛、という線は今のところ全くない。俺も見かけたことないし。
多分あれは美咲が選んだ魔法具で、届かないところにあったから、拓斗が代わりに取ったのだろう。
だが、指輪を相手の指に填めるというのは、シチュエーションとしては完全に…。あれで2人はわざとやっているわけではないのだから、すごいもんだ。
そのまま見守っていると、拓斗は美咲の左手の薬指に指輪を…ってそこはだめだって!いくらなんでもそれはない!
止めようと動こうとした俺は、誰かに思い切り掴まれ、ついでに口も塞がれた。
誰だよ!?と思い振り向くと、そこにはにやにや顔のオルガーさんが。
そしていつのまにか、啓も瑠香もフィーアさんも、興味津々で2人を窺っていた。
皆が見つめる中、拓斗は美咲の指に…填めちゃった。
ようやく2人は、自分達のしでかしたことに気付くが、後の祭り。
後で散々4人にからかわれましたとさ。
え…?俺?
俺は誰かさんにボコボコにされたくないので、何も言わないよ。だって、痛いのやだもん。
ちなみに、俺と拓斗はまだ魔法具を持っていない。
拓斗は『勇者の刻印』を持っているから、専用の魔法具があるらしく、選ばせてもらえず、俺は自分に合う魔法具を見つけられなかったのだ。
フィーアさんは、縁があれば、何処かで見つかるって言ってたけど。
早くみつかるといいな。
気絶した瑠香と啓、それに、未だに顔を真っ赤に染め上げて啓の上に跨り、ぼかぼかと殴る美咲を見てそう思うのだった。
てか美咲、いくらなんでも啓が可哀そうだから、そろそろ解放してあげようよ。
拓斗と美咲には少量の天然属性が入ります。
フィーアさんのドジっ子とはまた違います。というか、フィーアさんも天然ですね。書いてて今さらながらに思いました。
あと、オルガーさんの活躍の場が少ない!これから増える予定ですが。