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第一話:『努力』も『友情』も、データの裏付けがないならただの妄想ですよね?

処女作です、よろしくお願いします

「レイン! 貴様は今日限りで我が『聖なる剣』パーティをクビだ!」

豪奢なギルドの会議室に、勇者アレンの怒声が響き渡った。

彼の傍らには、聖女や魔導士の仲間たちが「当然だ」と言わんばかりの冷ややかな視線を僕に向けている。

原因は分かっている。

先ほどダンジョンの作戦会議で、アレンが「明日の階層主は、俺たちの強い【絆】と【熱き魂】で押し切る!」とか熱弁し始めたからだ。

だから僕は、ごくごく客観的な事実を述べてあげただけなのだ。

「いや、アレンさん。あのボスの推定HPは5万で、僕らの平均DPSだと討伐までに最低でも2時間はかかります。気合で攻撃力が3倍になる仕様なんてこの世界の物理法則に存在しませんし、精神論で突撃するのはただのタイパ・コスパ最悪の自〇行為なんですけど……それ、感情論以外に何か根拠あります?」

そう。僕の前世は、ネットの掲示板で夜な夜な論破レスバに明け暮れる冷笑系ゲーマーだった。

異世界に転生して授かったスキルは**【冷笑者の眼レスバ・アイ】**。

攻撃力『1』。防御力『1』。

しかし、相手の熱意やロマンといった「エモい感情」を感知した瞬間、それを冷酷なロジックで全否定し、世界の概念そのものを書き換えるという、実に性格の悪い固有スキルだ。

「ええい、黙れ! 仲間を信じる心が奇跡を起こすんだ! お前のような冷笑気取りの雑魚に、俺たちの熱い友情が分かってたまるか!」

アレンは顔を真っ赤にし、腰の聖剣を抜いた。

眩いばかりの光が剣に宿る。勇者固有の必殺技——【気合一閃】。気合の熱量に比例して威力が跳ね上がる、まさに王道の主人公技だ。

「冷笑しかできない無能め! その口、二度と叩けないように叩き直してやる!!」

轟音とともに、目も眩むような光の斬撃が僕へ向かって放たれる。

普通なら跡形もなく消し飛ぶ威力を前にして、僕ははぁーっと深く溜め息をつき、眼鏡の奥の目を半目にした。

そして、ニチャァ……と口角を吊り上げ、スキルを発動する。

【それってあなたの感想ですよね?】

「……は?」

アレンが間抜けな声を漏らした。

僕の口から放たれた言葉が、不可視の概念衝撃波となって空間を揺らす。

迫り来ていた絶対的な光の斬撃が、僕の鼻先数センチのところで「ピキッ」と亀裂を入れ、まるでガラスのように木っ端微塵に砕け散った。

「な……!? 俺の【気合一閃】が……消えた……!?」

「だから言ったじゃないですか。気合で攻撃力が上がるっていうのは、あなたの脳内にある『感想』であって、客観的なデータではありません。根拠のない主観で物理現象を起こそうとしないで発生源ロジックを考え直してもらえます?」

「く、くそがぁぁぁ! 『仲間との絆は絶対だ!』」

錯乱したアレンが、仲間たちとの想い出を胸に物理で殴りかかってくる。

その身に宿る「友情の熱量」を感知し、僕はすかさず次の技を繰り出した。

【ニチャつきの盾カオティック・スマイル】

「熱い友情、ねぇ……。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいイタいですね」

ドガァァァン!!

「ぎゃあああああっ!?」

アレンの拳が僕の1メートル手前で謎の力場に弾かれ、彼自身が壁に叩きつけられた。

【ニチャつきの盾】——相手が語る熱量やエモさが「イタい」と判定された場合、その熱量に比例した衝撃をそのまま跳ね返す無敵の反射障壁だ。熱ければ熱いほど、ダメージは跳ね上がる。

「アレン!?」「勇者様!?」

パニックに陥るパーティメンバーたちを余所に、僕は肩をすくめた。

「まあ、そういうわけですので。追放の件、謹んでお受けします。どうぞお仲間同士で熱い友情ごっこを続けてください。僕の貴重なリソースの無駄なので」

僕は手をひらひらと振りながら、ギルドの会議室を後にした。

……ただ、この時の僕はまだ知らなかった。

僕が去った後、壁にめり込んだアレンを介抱しながら、聖女が恍惚とした表情で呟いていたことを。

「素晴らしい……! 感情という愚かな迷妄を一切排し、世界の真理データのみで万物をひれ伏せさせるあのお方……! 彼こそが、この世界を救う『真理の絶対神』に違いないわ……!」

こうして、ただ斜に構えてニチャついていただけの僕は、知らぬ間に世界中から「冷徹なる絶対賢者」として崇め奉られることになるのだが——それはまた、随分と先のお話である。


ぜひコメントよろしくお願いします!


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