250話 王の真実
イオリのスペルカードである自白の影響により、特務騎士が虚脱したような状態になる。
「……」
何も言わず、天井だけを見つめる状態だ。
「まずは……立ってもらえるか?」
「……」
「あの、自白はあくまでもこちらの質問に答えるだけなので、命令は聞きません」
「あ、そうなのか」
なるほど、操ることができる訳じゃないんだな。意識が混濁して、どんな質問にも答えるというだけであるらしい。
「自白の効果はどれくらいだ?」
「前は10分ほどでした」
「意外に短いな……。メー、こいつを椅子に座らせてくれるか?」
「メ!」
メーが再び特務騎士の体に覆い被さり、無理やり動かして椅子に腰かけさせた。これで、少しは話を聞きやすいだろう。
「トールよ。質問は任せる。その間に、我らはこやつの鎧を脱がそう。目覚めた時に、暴れられても厄介だからな」
「ああ、頼んだ」
確かに、今の内に戦闘力を奪ってしまう方がいいだろう。兜はメーが既に脱がしたようだから、あとは鎧である。
「俺たちは尋問を始めちまおう。時間がないからな」
「は、はい」
イオリと一緒に、特務騎士の前に立つ。こちらを見ようともしないが、大丈夫か?
「えーと、名前は?」
「バルフ・ルードス」
「よし、ちゃんと答えるな。特務騎士で間違いないな?」
「間違いない」
「エミルよ、そちらを持て」
「はい。えーっと、ここを外すんですかね?」
「ジジ殿、ここですかな?」
俺が質問をする間にも、ゼド爺さんたちがバルフの鎧を脱がしにかかる。なんともカオスな空間だが、気にしないでおこう。
「普通の鎧とは形状が違いますな」
「魔導鎧だからな」
「このベルトはどうしますか?」
無理やり鎧を脱がされているのに、バルフは気にした様子もない。これって、ただ情報を聞き出すだけじゃなくて、戦闘にも利用できるんじゃないか?
相手の動きを止めることができそうなのだ。プレイヤーにも効くカードだし、スフィンクスに使われなくて本当に助かった。
「お前の目的はなんだ?」
「カルセン侯爵。リシュー子爵の暗殺」
「その命令を下した相手は?」
「第一王子」
「王と宰相はどうしている?」
「王は幽閉。宰相は行方不明」
予想していた通りの答えである。やはり第一王子が王様と宰相を排除して、権力を握ったらしい。
「特務騎士は、第一王子に付いたのか?」
「私ともう1人だけだ」
「なに?」
詳しく話を聞くと、残っていた4人の特務騎士は意見の相違から、第一王子陣営に所属するものと、王の救出に動くもので分かれてしまったらしい。
「お前は、どうして第一王子に仕えているんだ?」
「王のためだ」
なんと、こいつはある目的のために、あえて第一王子に仕えるように見せて派閥に潜り込んでいたらしい。
その目的とは、本気で王を裏切ったもう1人の特務騎士を暗殺し、姿を消したアイオールを探すことだという。
「王様って、無能だったんだろう? どうしてそこまで忠節を尽くす?」
「あの方は暗愚などではない」
「へぇ? でも、ロトスを根回しもせずに解放したりして、かなり酷いように思えるけど?」
国王が就任した際の初勅は、罪人への恩赦が慣例であるらしい。民の前で自ら発表することで、国王の慈悲を示すわけだ。
だが、現国王は発表の際に勝手に内容を変えてしまい、ロトスを解放してしまった。俺の想像以上に初勅というのは重要らしく、一度発表されてしまえば守るしかないそうだ。
神への誓いであるうえに、国としての面子もあるからだろう。それに、南部貴族たちの「初勅を実行せよ!」という熱烈な後押しもあったらしい。
これによって北部は追いつめられ、現在の反乱に繋がっているのだ。
自身の初勅が首を絞め、就任からわずか数年で反乱を起こされ、息子に幽閉された人間が、暗愚じゃないというのか?
「あの方は王となるために、暗愚のふりを成されていただけだ」
大貴族たちが操りやすいという理由で、あえて暗愚と名高い現国王が擁立されたと言っていたが……。
もし王になるためにわざと愚かなふりをしていたのであれば、確かに油断できない。
「でも、どうしてそこまでして王になって、ロトスを解放した?」
「カルセンの力を削ぐため」
「はぁ? どういうことだよ」
「カルセンは王位の簒奪を狙っていた。その戦力であるロトスを奪うことで、力を削いだ」
主戦力であるロトスを失えば、北部は大きく弱体化する。穴を埋めるには時間もかかるし、カルセン侯爵の戦力と発言力を削ぐことができるだろう。
その間に南部を懐柔することで、王家の制御下から離れつつあった北部と南部を再び支配下に置こうと考えていたらしい。
北部の利権を南部に与えることで恩を売りつつ、北部領主内でのカルセンへの信認を奪い、追い詰められた北部へと手を差し伸べることで親国王派へと誘導する。
南部にも優遇される領地と冷遇される領地を作ることで不和をばら撒き、国王派としてまとめ上げた北部の力で南部を弱体化させ、最終的には親国王派を最大派閥とする。
そんな絵図を描いていたらしい。
権力争いに巻き込まれる民衆にはたまったものではないが、国王は全然暗愚じゃなかったな。むしろ、かなり計算して動いていた。
国王の権力は小さくとも、特務騎士がいればなんとかなると考えていたようだ。アイオールによって殺された特務騎士隊長のルファスが国王と友人同士であり、様々な仕事を請け負っていたらしい。
アイオールともう1人は最近になって任命された特務騎士であるため、国王の本当の顔については知らされていなかったのだろう。
その後、俺たちは混沌の王や、敵の内情について質問を重ねたが、重要な情報はあまり得られなかった。
現在の第一王子の居場所くらいかな? やはり王都にいるらしい。
「じゃあ、自白が切れたタイミングでカルセン侯爵に引き渡すか」
バルフから得た情報により、腹の中真っ黒の野心家だとハッキリしてしまったが、一応味方だからな。
ここは恩を売っておく方がいいだろう。今は混沌の王を倒すために、余計な争いに首を突っ込んでいる暇などないのだ。




