↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
243/285

243話 人の混沌憑き


 ユイを見送った翌日。


 俺たちは準備を済ませ、ライアン爺さんの屋敷を出発していた。ユイとの合流地点へと向かうためだ。


「世話になったな、ライアン」

「この程度では、恩など返しきれておりませんぞ。また寄って下され」


 爺さんたちがガシッと抱き合って、互いの背中をバンバンと叩き合っている。


 俺たちの荷物は少ない。ライアン爺さんに用意してもらった大容量の拡張袋のおかげだ。


 食料に魔道具に薬類。3つの背嚢に全てが仕舞いこまれている。


 さすが大商会だ。金を出せば手に入るってもんじゃないと思うんだけどな。欲しいと伝えて、たった1日で手に入れてくれていた。


 このまま町を出て、モンスターたちを待機させている森まで戻ることになっている。そこでモンスターたちを拾い、夜まで待ってユイと合流する計画だ。


 そうして、俺たちは町の出口へと向かっていたのだが――。


 ドガアァン!


「きゃああああぁ!」

「うわあぁぁぁ!」


 何かが破壊されるような音とともに、人々の悲鳴が聞こえた。最初は喧嘩か何かかと思ったが、どうやら違っているらしい。


 人々の悲鳴は一向に止まず、破壊音も連続して聞こえてくるのだ。同時に、獣のような咆哮が轟いていた。


「ウガアアアアァ!」


 住宅街へと続く路地の方だ。魔物でも町に入り込んだのか?


「ゆくぞエミル!」

「はい!」

「ワフたちはここでトールを守れい!」

「了解でありますぞ!」


 ゼド爺さんがエミルを連れて駆け出していく。元騎士として、見過ごすことができないんだろう。


「ワフ、ポーションを用意しておこう。怪我人が出てるかもしれない」

「そうですな!」

「イオリ、周囲を警戒していてくれ。何が起きたか分からないし」

「わ、わかりました!」


 うちの奴らは、遺憾ながらこういった突発的なトラブルに慣れている。ワフもエミルも、即座に動き出したしね。


 ただ、仲間になったばかりのイオリに、そこまで求めるのは酷だろう。目を白黒させながらも、慌てて周囲に目を走らせている。


 そもそも、慣れるのがいい事なのか分からないし。それだけ、トラブルに巻き込まれているってことだからな。


 しばらくすると、ゼド爺さんたちの叫ぶ声が聞こえた。


「皆の者! 逃げよ!」

「逃げてくださーい!」

「ガアアアアア!」

「かかってこい! 化け物め!」


 さほど離れていない場所で接敵したらしい。様子見で済まなかったか。


 俺たちも現場へと向かうべきかどうか悩んでいると、数人の人影がこちらへ走ってくるのが見えた。


 正にこけつまろびつ。誰の顔も恐怖に染まっている。


「おーい! 大丈夫か? 何があった?」

「ば、化け物が急に……。人が、化け物になって……!」

「人が化け物?」


 それって、もしかして……もしかしちまうのか?


「ど、どんな様子だったのかわかるか?」

「お、女の人が、急に黒い煙みたいなのに覆われて、それでデッカくなって……!」


 黒い煙。間違いない。混沌憑きだ!


 人間の混沌憑きが、遂に出現するようになっちまったってことかよ!


「フォル?」


 俺が視線を送ると、フォルが硬い顔で頷いた。残念ながら間違いないらしい。


「イオリ、ここで荷車を見ていてくれ! けが人がいたら、ポーションを飲ませてやってほしい!」

「は、はい」

「我らはジジ殿たちへの加勢ですな!」

「ああ! いくぞ!」


 ゼド爺さんたちだけで混沌憑きとやりあうのは無茶過ぎる! 早く加勢に入らないと!


 そう思っていたのだが――。


 駆け付けた俺たちが目にしたものは、予想外の光景であった。


「たあああ!」

「グガァ……!」


 エミルの突き出した槍が、まるで巨人のような姿の混沌憑きの胸を貫いてる。混沌憑きの上げる咆哮は、先程と違って悲壮感が漂っていた。明らかに、断末魔の悲鳴だ。


 どうやら、手助けをするまでもなかったらしい。


「大丈夫かっ!」

「トールか。なに、この程度の相手、我らだけで十分よ」

「でも、混沌憑きなんだぞ?」

「やはりそうだったか。だが、以前戦った者たちよりも、大分弱かったぞ?」

「そうなのか?」

「うむ。儂が手助けするまでもなかったのう」


 なんと、ほぼエミルだけで倒してしまったらしい。足や手に穿たれている傷も、彼女が戦って付けた傷であるそうだ。対して、エミルは無傷である。


「エミル、大丈夫か?」

「はい! 頑張りました!」


 本当に一撃も貰わなかったらしい。いくら強化されているといっても、混沌憑き相手に無双できるのか?


「エミル、こいつは弱かったか?」

「はい。動きも遅いですし、単調で……。以前の私が、体だけ大きくなったって感じでしょうか」

「なるほど」


 もしかして、素体が弱いから、混沌憑きになっても大したことがないってことか? 身体能力はアップしても、戦闘技術がないのだ。


 だから、エミルやゼド爺さんからすると、デカイだけの鴨なのだろう。


 ただ、これが大量に出現するようなことになれば、大きな被害が出るはずだ。町中に急に出現する人の混沌憑き。その厄介さをようやく理解できた気がした。



申し訳ありません。

予約日時を間違えておりました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。