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227話 水原の目覚め


 水原の状態を確認した後は、ボーナスを使ってゼド爺さんの傷を全て癒しておく。さすがライフ全回復なだけあり、失っていた足も完全に復活していた。


「その少女は、まだ目覚めぬのか?」

「ああ、死にかけたんだし、仕方ないけどな」


 手足を再生されて一命を取り留めた水原伊織であったが、未だに目は覚まさない。ワフの見立てでは、死にかけた衝撃のせいだろうということだった。


 無理矢理起こすのも、ちょっと怖い。素っ裸の彼女のお世話はエミルに任せて、俺たちはワフとともに魔法陣の解析を済ませてしまうことにした。


 レムリアスを始めとするモンスターたちの犠牲の末、ようやくスフィンクスを排除したのだ。何らかの不測の事態が起こる前に、さっさと魔法陣を解析してしまわねば。


 ワフが解析している間に、俺は勝利報酬を決めてしまうことにした。


 今後、水原と協力するのであれば、強いカードを奪ってしまうと、警戒されてしまうかもしれない。


 そこで、カードを奪うのではなく、ライフバリアの回復と魔力で報酬をもらうことにした。


 目ぼしいカードは頭に入れてあるので、水原が目覚めたらトレードを頼んでみるとしよう。


「ゼド爺さん、ワフはどうだ?」

「そちらの作業はもういいのか?」

「ああ、一段落だ」

「ふむ。儂には詳しいことは分からんが、前回のように手が止まったりすることが一切ない。順調なのではないか?」


 ゼド爺さんの推察は当たっていた。


 すでに一度操作した魔法陣を、ワフは驚くほど速く操作できたらしい。


 それから程なくして、必要な情報を集めることに成功していた。驚くほどの速さである。


「……混沌の王の居場所。分かりましたぞ!」

「もうか?」

「早かったのう」

「そうであります!」


 俺だけではなく、ゼド爺さんも驚きの顔である。何せ、15分ほどしか経っていないのだ。


「それで、混沌の王の居場所は?」

「それが……」


 ワフが微かに言い淀む。言いにくい場所だっていうことか? もしかして、竜のいる山脈のどこかとか? だとすると、確かに危険すぎる場所だ。


「ナール国の中心部なのであります」

「ナール国って、俺たちが手配されてる、あのナール国か?」

「そうであります」


 危険は危険でも、違う意味での危険だったか。


 ナール国とは、ワフを取り戻すために領主の館に潜入し、散々暴れ回ったあの町がある国である。特務騎士を倒し、領主館にも大きな被害を出した。


 しかも、領主を殺した罪まで被せられてしまっている。もう戻る気もなかったので、あまり気にはしていなかったんだが……。


「しかも、場所的には、王都のすぐそば。もしくは、王都のどこかであります」

「王都?」

「はい。以前見た地図と照らし合わせたので、間違いないと思われます」


 貴族殺しで手配された国の王都なんて、できれば足を踏み入れたくないんだがな。


「だとしても、行かない訳にはいかないのだろう?」

「だよなぁ」

「ならば、潜入する方法を考えねばな」

「そうだな。ただ、手配書からばれる心配はないと思う」


 何せ、手配書の人相書きは俺とは似ても似つかない、厳つい獣人の顔だった。獣人を連れているという情報は載っていたので、ワフのことさえ気付かれなければ意外と誤魔化せるのではなかろうか?


「うーん。変装して潜入するしかないな」

「そうでありますなぁ」


 そんなことを話していると、エミルが声を上げた。


「目覚めそうですよ!」


 俺たちに対してそう告げながら、エミルは水原から僅かに距離を取る。まだ絶対に味方だと分かっていないからだ。


 予め、そう指示してあったのである。水原が敵に回るというよりは、精神面がスフィンクスに支配されているとも限らないからだ。


「……ぅぅ」

「水原?」

「……だ、れ?」

「俺はトール。一応、あんたを助けた者だ」

「……思い出した。あなたは、私と同じカード使い?」

「ああ、そうだ」

「なぜ私は生きているの?」

「それは――」


 俺は、彼女が意識を失ってからのことを簡単に説明した。


 彼女が負けを認めたからか、意識を失ったからかは分からないが、投了した扱いになったこと。そのお陰で、俺は勝利者報酬を得たこと。その勝利者報酬を使い、水原の治療に成功したこと。基本的なことはだいたい話した。


 本当はカード使い同士の対戦で勝利したら報酬をもらえるという話は、黙っているかどうか悩んだのだ。


 だが、これを黙ったままだと、彼女のデッキからカードを拝借したことの説明が難しい。


 それに、今後彼女と力を合わせるのであれば、情報を隠しておくことは不義理になると思った。こちらだけが情報を握り、どの口で仲間やら信頼やら言えというのか。


 それに、どこかで彼女が勝利報酬の情報を得た場合、確実に俺たちが疑われるだろう。下手したら、どこかで彼女を殺して、報酬を狙っていたなどと勘違いされるかもしれない。


 だったら、明かしてしまう方がメリットが多そうだった。


「……プレイヤー同士で、戦って勝つと、報酬がもらえる?」

「ああ」

「だから……神様は……」


 驚いているようだが、どうも俺が想定していた驚きとは違っているらしい。神様とか聞こえたんだが?


「意識を取り戻す直前、変な夢を見たのです。その夢の中で、ブラスログン様とお話ししたのですが……」

「水原をこっちに転生させた神様だったか?」

「はい。そのブラスログン様が、こうおっしゃっていたのです。私を直接助けることはできないが、近くにいるカード使いに可能性の欠片を渡した。それによって、私は助かるかもしれないと……」


 特殊ボーナスの最後の1つは、ブラスログンの仕業だったらしい。自分の使徒を救う為に、ボーナスを1つ追加したのだろう。


 うーん、なんて真面目な神様。セルエノンと交換してくれんかな?


8月の後半に夏休みをいただくと思います。よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] よかった……真面目な神もいた! 今の所、愉快犯じみたセルエノンが一番マシな神様とかいう嫌ーな状況でしたからね…… セルエノンの信用がないのかなんなのか、すごい足を引っ張ってる神様勢にしか見え…
[一言] 休みは大事!
[良い点] ああ、セルエノンっぽくねぇなと思ったら、マジでセルエノンじゃねーのか。
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