197話 20日後
バインダー破壊事件から二〇日。
「樹海の偵察もかなり進んできたな」
「そうでありますな!」
俺とワフは砦の一室で、壁に張られた地図を確認していた。そこには、ここ二〇日で判明した、樹海の細かい地形が書き込まれている。
モンスターたちの多くは喋れないので、ミノタウロスなどが聞き取り、彼らが地図に書き込んでくれたものだ。
これをワフが清書し、大きな地図を作ってくれていた。砦の壁に張っておけば、どこまで樹海の探索を進めたのか、一目瞭然である。
ああ、砦とは言っても、俺たちがいるのは太古の一枚岩・ガルフ=ナザに作った最初の拠点ではない。
樹海の攻略を効率的に進めるため、大精霊の座の横に新たにストーンフォートレスを使って拠点を築いたのである。X10も使った、村と同じレベルの大砦だ。
ただ、ここの場合は砦そのものよりも、石兵を最大で10体まで運用できるという点が大きいだろう。
砦の屋上へと出て、樹海を見渡す。塔まではもう少しに思える。だが、ここからが遠かった。出現する魔獣の数が数倍に増し、時にはトロールのような巨獣も姿を現すのだ。
「新デッキも、残り6枚。明日か明後日には回しきれそうだ」
「それまでに、塔への道筋を探しておきたいところですな」
「だが、無理すると折角増やしたモンスターたちが全滅する危険性もある」
「うむむ。それは確かに……」
樹海の北部の危険度は、俺たちの想像以上であった。この20日間のことを思い返す。
村にある程度の戦力を残したまま出発した俺たちは、数日かけて樹海の砦に戻ってきた。その道中でもモンスターを召喚しまくり、その時点で新デッキの15枚ほどを使用できていただろう。
道中でドローしていた木偶の成る樹、聖なる樹の幼木を砦の脇に召喚し、ミノタウロスたちと情報を交換する。
すでに兵士たちによる岩塩の採掘が始まっているらしいが、約束通り砦の周辺まではやってこないらしい。
そして、そこからが本当の戦いでもあった。樹海の奥に行けば行くほど、魔獣の数は増え、こちらのモンスターたちの損害も増えていく。
損害の穴を即座に埋めることができる、灰色狼や蔦鼠たちのような魔力1で召喚できるモンスターが本当に有り難かった。また、倒す敵の数が増えれば、達成できる試練も比例して増えていく。
そのお陰で魔力を大量に補充でき、俺は魔力切れを恐れることなくカードを使い続けられた。ただ、何度かピンチもあった。
例えば、樹海の中を流れる川で遭遇した魔魚の群れ。水を飛ばして狙撃をしてくる魔魚たちは本当に厄介だった。
オークの群れにも遭遇した。ハイオークに率いられた、50匹ほどのオークの群れだ。戦術的な動きをするオークたちの集落を強襲し、何とか勝利をした頃には俺のモンスターもかなり消耗してしまっていた。
だがその先では、それ以上の強敵が俺たちを待ち受けていたのだ。
それが、混沌憑きとの遭遇である。トレントという植物の魔獣が混沌に憑かれていたのだが、その強さが段違いであったのだ。
ゼド爺さん曰く、人間の国に出現していれば間違いなく魔王と認定されるレベルであったという。
薙ぎ払われるモンスターたちだったが、そこで俺は切り札を引き当てる。トレードでゲットしたばかりの、神鳴る獣だ。
とは言え、それだけで倒せるほど、魔王は甘くなかった。神鳴る獣は大ダメージを与えることと引き換えに倒され、あとはバルツの森の主などによる総攻撃で、なんとか仕留めることに成功したのであった。
最後の止めは、黒霧の長剣と世界樹の木刀の二刀流で超人と化していた、ゼド爺さんの必殺技だ。10メートルはある気功の刃で、魔王と化した大木を両断する姿はマジで勇者チックだった。
ただ、それらの激闘がもたらしたものは、損害だけではない。
「土地カードも増えた。魔力は問題ない」
「ですな!」
魔魚の住処、オークの集落、倒した魔王樹。それぞれで土地カードを入手できていたのだ。これで、土地カードは6枚。
太古の一枚岩・ガルフ=ナザ 緑1
暗黒精霊の鎮め祠 黒1 万能1
大精霊の座・フォルタル=クルア 万能1
大いなる河の水源 万能1
瘴気祓われし翁樹 万能1 緑1
緑溢れる地熱地帯 赤1 緑1
やはり、魔力の豊富な土地には、それなりに強い魔獣が巣食うということなのだろう。これで日々の魔力収入も大分増えた。
それ以外にも、緑地の首飾り×4、黒闇の首飾り、黄風の首飾り×2、雨乞い蛙、シルバーシープから色魔力がゲットできている。
それら全てを足した毎日の魔力収入は、万能魔力5、緑8、黒2、赤1、黄2、青1。転生直後では考えられない量だ。
次に予定している、大型カード主体のデッキも十分回せることだろう。
「ライフバリアも満タン。試練大量達成のおかげでポイントもまた100を超えて、ワフの復活も可能」
「頑張りますぞ!」
「……無茶はするなよ? まあ、ここからは俺たちも樹海の探索に加わるからな」
「はいであります!」
ここまで俺たちは、新たに作った拠点で待機していることが多かった。
ライフバリアの回復に専念したい俺。ポーションの増産に励むワフと、保存食作りを任されたエミル。そしてその護衛のゼド爺さん。そんな感じだった。
しかし、地図もかなりでき上がり、俺のライフバリアも完全回復。装備品やオブジェクトにより仲間たちの強化も進んだ。その他の準備も万端だ。いよいよ、塔に向けて出発の時である。
手札は大地の魔力、生命回復、灰色狼、魔力を統べる者・レムリアス、肉体強化の呪印、バルツの森の主。明日の朝、灰色狼とバルツの森の主を呼び出すつもりだ。
それでバルツの森の主が3匹。バルツの森の主たちは+2/+2。他のバルツビーストたちは+3/+3だ。ぶっちゃけ、下位竜の群れと比べても遜色ない戦力だろう。
「メー。お前も一緒にきてくれるか?」
「メメッ!」
「そうか。また、混沌を探してくれよ」
「メー!」
俺は新たな精霊を召喚している。解放されし闇の精霊・メーメック=ヌー。宙をフヨフヨと漂う、不定形の黒い霧のような姿をした、不思議な精霊だ。顔などもどこにあるか分からない。
日の光を嫌い、普段は砦の部屋の隅っこか、俺の背負う背嚢の中に隠れている。ただ、強い。その不定形の体は意外に物理的な力があるらしく、俺を覆い尽くして盾となってくれるのだ。
それに、黒い弾丸のような物を飛ばして攻撃もできる。あと、声が意外と可愛くて、呼ぶと「メー」と嬉しそうに反応してくれるのだ。
魔王樹を発見したのもメーメック=ヌーだったし、俺があの激戦で無傷だったのもこいつのおかげだ。
セルエノンのアドバイスを聞いておいて本当に良かった。
「頑張るぞ!」
「おう! であります!」
「メー!」
同行中、所持中のカード
緑地の首飾り×4、黒闇の首飾り、黄風の首飾り×2
虎人の大剣士、ガルフ=ナザ、伝令のペガサス、フォレスト・ラプター、比翼のワイバーン、ワイバーン
バルツの森の主×2、バルツの森の見張役×2、バルツビースト×3、バルツの森の大牙、バルツの森の偵察者、バルツの森の号令役
灰色狼×2、蔦鼠×2、風読みの白鷹×2、コボルトの薬師、森梟、解放されし闇の精霊・メーメック=ヌー、テンペストバード
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