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1話 プロローグ

 この世界には、三つの大きな帝国が存在する。

 エウレカ帝国、ブダヴェッダ帝国、ギブネス帝国がある。

 人々は、神より与えられた加護とよばれるものによりそれぞれ独自の発展を遂げた。

 武を極めたもの、秀でた才を持ち、後世に名を残したもの様々である。

 先天的に、神より与えられたものを加護、後天的に身に付けたものをスキルと呼ぶ。

 スキルも人それぞれであり、無限に近い程の数があるといわれている……十人十色とはこの事を云うのかしらね。

 

 私、フィオーレ・アルセナーリナは、友人、家族にも恵まれて幸せな生活を過ごしていた。

 中でも、親友のマルエラ・シェスタールは何でも言い合える最高の友人であると同時に私の憧れでもあった。

 ピンク色の長い髪が特徴的で私とは反対に社交的な性格である為、人気者であった。

 彼女は私の色々な相談を快く聞いてくれ、辛い時は


「フィオーレの苦しみは私の苦しみでもあるのよ」


 と、言いそれを共有してくれるのであった。

 そんな信頼出来る彼女にだからこそ、想いを寄せる相手私の幼馴染でもあるスザク・シュタイン公子についての相談をした。


「私が思うに、シュタイン公子様はフィオーレに惹かれていると思うのよね。今度会った時それとなく聞いてみるわね!」

「絶対私の想いがバレないように聞いてね……!」

「大丈夫よ! そこはちゃんと隠すから」


 マルエラは楽しそうにこの相談にも応じてくれた。       

 そして、スザクが参加するという舞踏会にマルエラは参加した。


 その後、私とマルエラが次に会う日になった。

 そこで、私は衝撃的な言葉を聞かされてしまったのだ。


「フィオーレ、ごめんなさい。私、あなたとスザク公子様の仲介役にはなれないわ……」

「え? どういう意味? 何か問題でもあったの?」


 そう言うと、彼女は言いづらそうに口を開いた。


「あのね、フィオーレ。私……スザク公子様に恋してしまったの!!!! 遠くから見ている時はただ外見がかっこいいとしか思っていなかったけれども……話してみると気さくで話しやすいし、近くでみると本当に顔が整っているって気付いてしまったの! 彼と同じ場にいたのだけれども、息を吸うことすら困難だったわ。これが好きという気持ちなのね! だから、貴女の力になれないわ。本当にごめんなさいね」


 これを機に、私と彼女の関係はどんどんと悪くなっていってしまった。

 彼女は、社交界で私の悪口を言いふらしスザクにまで嘘を吐き始めたのだった。

 そして、『社交界の花』であった彼女の言うことは、あっという間に広まった。

 終いにはシュタイン公爵の耳にも入り、どちらの方がスザクに相応しいのか狩猟の腕で測る事になってしまった。          

 ここで勝利したとしても、シュタイン公爵が素直にスザクとの仲を認めるとは思えないけれど……。

 そう言われてしまったら断ることも出来なかった。

 シュタイン公爵家は軍部を纏める一家のため、このような事になるのは予測がついていた。

 マルエラは狩などはからきしで、猿に棒を持たせた方がまだましな腕前であった。

 その結果、私の圧勝となった。

 スザクは狩猟対決の後、私をずっと前から好きだったと告白してくれた。

 そしてこの結果に不満を覚えたマルエラは、私を逆恨みしたのであった。

 それ以来、私が舞踏会に参加すると、多くの人は私のことを白い目で見るようになったのだ。


「フィオーレは私がスザク公子様を好きだと知っていたのに……あんたなんかにスザクは似合わないと言って、自分に有利な狩猟での決闘を申し込んできたのです……。私は彼女の事を親友だと思っていたので、まさかこんな事を言われるだなんて思いも寄りませんでした!」


 事実とは異なる事をでっち上げ、舞踏会が開催される度に言いふらしているようだった。

 それに、私が狩猟で決闘を申し込んだ訳ではない。

 これは、シュタイン公爵が決めたことなのに……。

 誰もその事実を知らないため、マルエラの言った言葉を鵜呑みにし信じた。

 そのおかげで私は、益々社交界での立場を失ってしまった。

 これを耳にしたスザクは、


「あんな戯言に耳を貸す必要はないよ。まさか、シェスタール嬢があんな嘘を言いふらすなんて思いもしなかったよ。父さんは、彼女の言ったフィオーレの悪口を信じてしまっているんだ。フィオーレより、シェスタール嬢の方が僕に相応しいと言い始めたんだよね。まったく……何のための狩猟対決だったのか分からないよね」


 と言って、自分はマルエラに一切興味がないと教えてくれた。

 スザクが彼女の言う事を全く信じていないと分かっただけでも満足だった。


「そうだわ。スザク! 私公爵様には、弁解したいわ。もし良ければ、来週の日曜日に私の家に来れないか伝えてくれない? 公爵様が大好物と噂の牛肉をお出しするから!」

「分かった、伝えておくよ。フィオーレ、僕もその席に参加しても良いのかな?」

「もちろんよ! 待っているわね」


 スザクが私の家に来るという事だけで、頭がいっぱいになりこの時は気が付かなかった。

 この会話をマルエラが聞いていた事に……。


――――――――――――――――――――――――


 影に溶け込むように二人の会話を聞いている者がいた。


「スザク公子のお父様にまで取り入ろうとするだなんて……本当にはしたない女ね、フィオーレ……。アルセナーリナ家は、娼婦を輩出する家系だったのかしら。あのような品位にかける女に、スザク公子は似合わないわ。やはり、私のようなお淑やかで上品な女性がお似合いなのよ」


 その女は、マルエラ・シェスタールであった。

 次のフェーズへ移行しましょう。

 そう言い、彼女は身を翻した。

 その姿は女神そのもので、彼女の悪意に満ちた心を理解する者はいなかった。


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