2話 裏切り
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私は公爵様がいらっしゃる日に向けて、万全な準備を施した。
スザクとの仲を認めて貰うためにも、マルエラの言葉は全て虚言なのだと弁明する必要がある。
だから、最後の確認として牛肉の用意は出来ているか料理長に確認した。
「料理長、牛肉の用意は万全よね」
「――はい、万全で御座います。お嬢様」
その言葉を聞き安心してしまった。
この時、料理長の言葉を信じずに確認しておけばあのような結果にはならなかったのに……。
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そして、公爵様がお越しになる日となった。
「シュタイン公爵様並びにスザク公子様ようこそお越しいただきました」
「久しぶりだな、フィオーレ嬢。今日は、招待してくれて嬉しいよ。ありがとう……」
そう言ってはいたが全く嬉しそうではなかった。
スザクの頼みでようやくアルセナーリナ邸へ赴いたという感じが伝わってくる。
その反応で分かるが、彼の中での私の評価はどうやら最低らしい。
けれども、直ぐにマルエラが嘘を広めているなんて言っても信用されないだろう。
その点は、料理でも振る舞いながら徐々に話せば良いだろう。
「そんな、滅相もございません。ありがたきお言葉ですわ。では、ご案内いたしますね。本日は、公爵様が好んでいると噂の牛肉を仕入れましたの」
「父さん。良かったね! フィオーレ嬢がわざわざ用意してくれたらしいよ。」
スザクがフォローしてくれたが公爵様の反応は、あまり良くなかった。
公爵様は、これくらい当然だと言うかのように鼻を鳴らした。
食卓へ案内し前菜が運ばれて来た。
公爵様は、悪くないと言ってくれた。
「美味しいね! 僕こんなに美味しい前菜食べたことないよ」
スザクは、重い空気を察してわざと明るい口調で話してくれた。
これは、どう考えてもお世辞ではあるが彼の気遣いを理解できる。
「ふふっ……これは、前菜なんだからまだまだお料理はくるわよ」
「うん! 楽しみだな〜」
そのような、会話をしている間に次の品物。
スープが到着した。
スザクが何か話そうとしたが話しすぎるのはマナーが良くないと公爵様に静止されていた。
黙々と食事を進めていると気が付けば、メインである牛肉が運ばれて来た。
そして、従僕が牛肉の説明を始めた。
「こちらは、コーンウォールで育てられた特別な牛を使いました牛肉のポワレで御座います。ソースと共にお召し上がりくださいませ」
その時に、スザクの顔色が少し悪い気がした。
先程まで楽しそうに食べていたスザクとは違い元気があまり無さそうであった。
公爵様は、待っていましたと言わんばかりに牛肉を切り口に運び入れた。
そして、公爵様は不思議そうな顔で私に尋ねてきた。
「これ……は? 明らかに牛肉ではないが何の肉を使っているのかな? フィオーレ嬢」
「え? そんな筈は、ありませんわ。牛肉ですよ」
そう言われ、反射的にそう返事をしてしまったが私の口に入っている物も牛肉ではなかった。
明らかに食べたことのない味である。
「あら? おかしいですね。これは牛肉の味ではないような……」
そう言った時に、スザクが真っ青な顔で呟くように口を開いた。
「ごめん、少し気持ちが悪いから席を外すね」
スザクは、今まで我慢していたようで早足に御手洗いへと向かって行こうとした。
その時、彼が苦しそうに倒れたのであった。
驚きで、私は悲鳴にも似たような声をあげてしまった。
「スザク!!!」
公爵様も私が叫ぶと同時にスザクが倒れている事に気付いたようで、血相を変えてスザクに駆け寄った。
私も急いで駆け寄ると、スザクは苦しそうな呻き声をあげていた。
それを聞き公爵様は、私に向かって指示を出した。
「直ぐに医者を呼んでくれ! 速く!!」
「分かりました」
そう言い、直ぐに医者を呼ぶ手配をした。
医者は、直ぐに駆けつけてくれスザクをベッドへと移動させた。
「公子様はいつ頃から体調が悪くなられたのですか?」
「私が気付いたのは、牛肉のポワレが運ばれ料理の説明を受けている時です。スザク公子の顔色は真っ青で体調がとても悪そうにみえました」
「ありがとうございます。その情報を元に考えますと……公子様は、毒を盛られた可能性が一番高いと思われます」
「なんだと⁉︎」
医者の言葉を聞き、公爵様はまるで私がスザクに毒を盛ったかのような形相で私を睨みつけてきた。
だから、私は状況を把握させようと促すような口調で公爵様に話し掛けた。
「そうですか。ならば、確かめてください。スザク公子が倒れた原因を。まだ本当に毒を盛られたのかも分からない状況です。公爵様」
もしも、本当に毒を盛られたのだとしたら誰に?
マルエラの顔が頭を過ぎったが流石にこのような真似をしないと信じたい。
それに、マルエラと決めつけるのは早計過ぎるかしら。
医者はスザクが食べていた物に銀色の棒を突っ込んだ。
取り出すと突っ込んでいた部分が、黒く変色しているのが見えた。
「これは……!毒です」
公爵様は、医者が来る前に警備隊を呼んでいたのだろう。
「フィオーレ・アルセナーリナが、我が息子・スザクを毒殺しようとしたのだ。早く捕らえよ」
私は、警備隊に拘束されてしまった。
公爵様に弁明する暇もなく。
私がスザクを毒殺しようとするなんて有り得ない。
先ず、仮に私が毒を盛ったとしてこんなにあからさまにするはずはないわ。
そもそも、スザクは無事なのかしら?
それだけが気掛かりだ。
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