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神の声は聴こえない! ポンコツ巫女の私がこの手でひらく未来は   作者: 松ノ木るな
第七章 あなたに示してあげたい

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② 初めての一人旅

「気付いたんだが」

 ふたりは馬に乗ってゆっくりと山を下っている。

「魔術師のところで手に入れたもの全部、この山から飛ぶ神隠しの間に消費してねえ?」

「え――?? 気付くの遅い~~」

「おい。何しに来てんだここに」

 その時、ユウナギは自分の身体の妙な異変に気付いた。

「ああぁ……」

「?」

「あれが、きちゃった……」

「神隠しか!?」

 しかしユウナギにいつもの慌てる様子はない。代わりに表情がげんなりしている。

「それじゃなくて。……月のもの、が……」

「へ?」


 そんなわけで道から少し外れ、ナツヒは2頭の馬と休憩、ユウナギはもっと奥で掻き集めた葉を使って対処していた。

 しばらく時を費やしユウナギがなんとか手当も終え、そばに置いておいた瓶を担いだ時だった。身震いするほど冷たい風に晒されて、彼女は声を上げる。


「ナツヒ――!!」

「!? ユウナギ?」

「あれがっ、今度こそっあれっ……」


 ナツヒは彼女に向かい駆け出した。そしてその手前の藪を突き抜けようとした瞬間、ぴたりと止まって叫ぶ。

「俺、今、そっち行っていいのか!?」

「いいから!! 早く!! 身体が動か……」


 がさっと藪をかき分け、半身が向こう側へ抜け出たナツヒの視界に、彼女の姿はもうなかった。

「あ、ああ……」

 腰を落として項垂れるナツヒを心配して、馬2頭も藪の向こうから頭を突き出してきたのだった。




「ここは……? 暗い……。水の匂い?」


 ユウナギが目を開けたら、そこはまだ暗い夜。

 ではあるが、だんだん白み始める向こうを振り返ると、明けの明星が輝いている。

 多少明るくなってきて、周りを注意深く見渡したら、近くに人の気配を感じた。どうやらそこにいる者もユウナギに気付いたようだ。


 ふたり、いや3人か、と認識し、ユウナギは彼らに近付く。

「お、お願いです……誰にも言わないでください!」

「えっ?」

「この子のことは……私たちのことは。お願いですから」

 よく見ると、若い男女が、彼らより少し小さい子どもの身体を拭いているようだ。そこは川沿いだった。

「えっと、私、旅の者で、ここに来たばかりで……」

 男女は顔を見合わせている。

「あの、ここで何を?」

 そうユウナギが問いかけた時、その子どもの様子が一変した。呼吸が苦しくなったようで、悶え始めたのだ。

 彼らは焦る。女の方が子どもを抱きしめ背中をさするのだが、どうにもならない。

「あ、あの、私、薬持ってるから湯を!」


 ユウナギはすぐ近くだという彼らの家屋に連れていくよう頼み、湯を用意させた。

 即効性のあるこげ茶色の瓶の方の薬を使おうかと一時迷ったのだが、やはり不安だったのでもう片方の瓶のを煎じた。

 魔術師にこれは朝日を浴びながら飲むと良いと聞いたので、そうしてみる。

 その少女には「とても良く効く薬だから」と何度も言って聞かせた。ユウナギにとっては祈る気持ちでもあった。その場はそれで、彼女の呼吸もなんとか落ち着いたのだった。


「これは一度飲んだだけでは多分だめなの。続けて毎朝、日の光を浴びながら飲めばきっと大丈夫。とても評判のいい薬師の調合薬だから」

「ありがとうございます……。あの、親切にしていただいて……」


 彼女はその子の母にしては若すぎる、ユウナギと同じ年頃の娘だった。とりあえず子どもが落ち着いたことには安心したが、何やらまだ戸惑っているようで。

 そこにユウナギは頼み込む。

「あの、代わりと言っては何なのだけど、麻布を、できるだけもらえないかしら……。ぼろぼろの物で構わないので……」

「?」



 ユウナギは応急処置に使っていた葉を捨て、麻布で快適な手当にありつけた。

「ありがとう、助かったわ! 旅の途中で用意もないのに月のものがきて困ってたの」

「いえ、これくらいなら、いくらでも……。それにしても、女性がおひとりで旅、ですか?」

 娘は落ち着いて眠った子どもを撫でながら、ユウナギの話相手になる。

「え、ええ、まぁ。それでこの(むら)にしばらく滞在したいのだけど、泊まれるところないかしら」

「私たちの持ち家が、小さいけれど隣にありますから、良ければ……」

「いいの!? 嬉しい」


 実際、明け方彼らと出くわした時には夜逃げでもする男女かと思ったが、ここは十分立派な住居で身なりも悪くない。なのになぜ、こうも人に対して怯えたような態度なのか。


「その子はあなたの家族? 暗いうちに川辺で何をしていたの?」

「……妹です。川でこの子の身体を洗ったりしてました……」

「あんな時間の、冷たい川の水で!?」


 娘はびくっとする。ユウナギは驚いただけで、責めているわけではないのだが。ただ確かに、それは病にもなるわ、とは思う。


「あ、自分の名を言ってなかった、私は“ナギ”。これから少しの間、世話になるわね。私が世話になる方なんだから、もっと気楽に話して」

「……私はナズナ、妹はツルナ。一緒にいたのは夫でシカダよ」

 ナズナは妹の頬を撫でながら、笑顔を見せた。



 それから三日三晩、ユウナギは妹のツルナに朝夜で薬を飲ませた。初日には不憫なほどやつれた印象であったが、4日経つと少し表情が明るくなったせいか健全な雰囲気を取り戻した。ナズナは胸を撫でおろす。

 そして妹を献身的に介抱してくれるだけでなく、家のことなども積極的にこなすユウナギを見て、最初は薬をくれる人だからという思いで接していた面もあったのだが、信頼できる人なのではという期待が勝ってきた。しかも肉体労働まで請け負ってくれて、女性一人で旅をしているだけあり逞しい、と羨ましさも抱くのだった。

 ユウナギはユウナギで、彼女が妹のことをとても大切に思い、夫婦仲も良く温かい家族だと感じるのだが、ある違和感が拭えない。なので気を張りながら切り出した。


「ねぇ……どうしてツルナを外に出そうとしないの? いえ、病人だからっていうのもあるだろうけど、それにしても彼女のことをひた隠しにしている気がするの。違う?」

「……いえ」

「それに、この集落の人たちとの交流が、異様に少ないよね」


 4日間共に暮らしただけで分かるほどに。ユウナギは時空の旅をし人々と接した経験から、民は協力して生活を成り立たせるのが自然のなりゆきだと理解している。彼女は衣料品をこしらえる仕事をしているようだが、彼女の夫による最低限の交流で、それと交換し日々の食料などを得ている様子がある。


「あなたが地域の人々の目を避けて暮らしている理由……聞いてはいけないかしら?」


 ナズナは首を横に振った。


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『子爵令嬢ですが、おひとりさまの準備してます! ……お見合いですか?まぁ一度だけなら……』

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しっかり改稿してとても読みやすくなっております。ぜひこちらでもお楽しみいただけましたら嬉しいです。.ꕤ
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