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神の声は聴こえない! ポンコツ巫女の私がこの手でひらく未来は   作者: 松ノ木るな
第三章 あなたの役に立ちたい

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① よもぎに託す 妻の愛

 ふたりが西の(むら)から中央に帰ってきた夜、当然すぐに引き離され、ユウナギはトバリからさんざん説教された。

 しかし、どれだけ叱られても自分の行動は変えられなかった自覚があり、反省はできずにいた。


 ナツヒが罰として、3日間の謹慎断食を丞相(じょうしょう)から言い渡されたと聞いたのは、それから3日たった夕刻のこと。

 彼は私の命令に逆らえなかっただけとトバリに食い下がったが、それを加味しての罰則量だと諭された。


 彼も弟に心は寄り添い断食していたことを、ユウナギは知らない。



「反省もしていない私が、何をどう謝ればナツヒは許してくれるの?」


 どれだけ考えてもついに分からぬまま、ユウナギは丞相一家の暮らす館の門まで走り、そこで正座をしていた。


 王女が門前に座っているので、もちろん侍女らは騒ぎ始め説得する者も現れたが、この頑固者には通じず。

 誰もが周りで、これはあの方に出てきてもらわないと――……と見張っていたら、謹慎明けの彼が門から出てきて、


「何やってんだお前」

と上から、呆れた顔で言った。


 ユウナギは立ち上がったが、何と言ったらいいのかまだ分からず、(うつむ)くだけだった。


「散歩にしては夜が更け過ぎだ。早く帰れ」


 彼は当然だが見るからに疲れている。声にいつもの覇気がない。


「ナツヒは……どこへ?」

「俺は、草でも食いに行く」


 それを聞いてぽかんとしたユウナギ、気を取り直して彼の裾を引っ張った。


「私、摘むから! 花の蜜も、働き蜂のように集めるわ」

「いや、暗いし……」

「いいから! ちょうど私も草、食べたかったの」


 そしてふたりは、すぐそこの暗い野原で月明りだけを頼りに、花の蜜を吸ったりした。




 ということもあったが、日々はまたゆっくりと過ぎていった。


 よく晴れたある日、屋敷内の林でユウナギは、子どもたち用に小さな木弓を手作りして過ごしていた。


 矢じりは丸みのある小石にして、元より玩具でしかないが、

「小さくてもけっこうサマになるんじゃない?」

と満足げ。

 それを背負って、木々に登ったり降りたりして遊んだ。まるで森を縄張りとする猿にでもなった気分だ。


 そこに、トバリが休憩にやってくる。


 木の上にてユウナギ、枝葉の間からのぞいてみたら、彼は2本向こうの木にもたれかかり、両手に持つ紙を真剣に見つめている。


 何か書いてあるのかな、ちょっと驚かせてみよう、とその紙を的に、上から木弓で小ぶりの矢を飛ばしてみた。


「!!」


 矢は上手いこと彼の手中の紙に当たり、驚いた彼は手からそれを落とす。


 何事だと周りを見渡すトバリに向かって、ユウナギは枝から振り子のように飛び降り、紙を拾い上げた。


「ユウナギ様? …………」


 そのお転婆ぶりに、深い溜め息をつく。


「兄様、敷地内とはいえ油断は良くないわ」


 彼を出し抜いて得意げなユウナギは、その紙の中身をちらっと目にした。


 それはとても達筆な、()の国の文字で書かれている(ふみ)だった。

 不審に思い、勝手に読み始める。


「返してください」


 無理強いはされないので、ユウナギは立ち止まって真剣に読み進めた。


「兄様……これは!?」


 その内容は、こうである。


“あなたの健やかな暮らしのために、たくさんのよもぎを贈ります

この香りも大好きでしょう?

あなたは上手に立ち回れるお人ではないのですから、出世などはしなくても

早くお帰りくださいね

浮気はほどほどにしてくださいね”


 といった、詩のようなものだった。


「……兄様、どういうこと!?」


 この国で一定の教養を持つのは、地位のある者とその親族くらいである。そこらの侍女や平民に、これが書けるわけもない。


 ユウナギは感情的に攻めたてる。


「妻をどこかに隠しているの!!?」


 文を乱暴に、彼の胸に押し付けた。


「そういうことはないです」

「じゃあなんなのこれ!?」


「落ち着いてください。これは親族が、ええと、私と血の繋がった者が……手習いを披露しようと送ってきたもので……書かれていることに意味はないのです」


「手習い?」

「美しいでしょう? 披露したくなるのも、無理はないと思いませんか?」


 確かに見事な手跡で、彼の言うことも一理あるが、どうにも誤魔化されているような気がしてならない。

 いわゆる女の勘である。


 彼は牽制するために「血の繋がった者」とあえて強調した雰囲気だ。


──文の主はどこの誰? そのひとは、私の知らない彼の顔を知っているの?


 不信感の塊と化したユウナギは、誤魔化す男の嘘を炙りだす薬なんてないものか、と思い立った。


 そこからの、そうだ魔術師に会いに行こう! である。


「ダメです」

「……まだ何も言ってない」

「またどこかへ行こうとしているのでしょう?」


 なんでことごとく見透かされるんだろう? と首を傾げた。


「ええ、まぁ。魔術師のところへ。また6日間いってきま―す」


 くるっとその場でまわって、愉快なユウナギ。対照的に、トバリは神妙な顔つきになった。


「その魔術師は男性ですよね」

「そうだけど?」


「安易に異性のところへ、王女を向かわせるわけにはいきません。何かあったらどうするのですか?」


「異性と言っても……彼はもう中年の、丞相と同じくらいの年頃よ? 製薬実験熱狂者で……」


「それが何か? だから問題ないとあなたが考えているなら、なおさらです」


 ユウナギは悔しくなった。自分はどこかに女を隠しているくせに。いやそれは裏が取れるまで、言い切れないけれど。


 ただの勘ぐりだと捨て置きたい自分と、丸めこまれるものかという意固地な自分を、行ったり来たりで苦しい。

 彼が自分に嘘なんてついたりしないと、本当は信じていたい。


「ナツヒを常に真横に置いて行動するから。私たちの身体を縄で繋いでもいいわ。だから今から6日間、留守にしますっ!!」



 というのが、今回の外出を決めた顛末(てんまつ)だ。


 ナツヒは馬車に乗ってから、それを聞かされた。


 実際出かける時、おかしな顔のユウナギに縄で縛られかけたので全力で逃げた。という出来事も忘れない。


 痴話げんかに巻き込まれての仕事か……と彼は肩を落としたが、どうせ上役には逆らえないので。

「さっさと行ってとっとと帰ろう。新しい投石器を試すところだったんだからな」

「ん?」

「あ―、声に出てたわ」



 2回目なので順調に、魔術師の住処へと辿り着いた。


 魔術師の彼は一見ぶっきらぼうな応対をするが、本当は2度目の来訪者が嬉しいようだ。ところどころ態度に歓迎の気持ちが表れる。


 中に通されたユウナギは、前回の礼として彼一人なら10日は持つ量の米を渡した。


 その後、近況を話すのもそこそこに、彼が今度は何がお望みかと尋ねてきたので、「隠し事をしている男に洗いざらい吐かせる薬」と率直に伝えた。


 それを耳にしたナツヒは、心の中で「くだらね―帰りて―」と叫ぶ。事の経緯は馬車で聞かされていたが、想像以上の執念だった。


「自白薬ねぇ……」


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しっかり改稿してとても読みやすくなっております。ぜひこちらでもお楽しみいただけましたら嬉しいです。.ꕤ
― 新着の感想 ―
[一言] この世界での米の相場はヤバそうですねw 売ったら何倍もアワが買えそう。
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