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第1話 入学

春のさわやかな日差しが降り注ぐ頃、僕は私立経徳寺(きょうとくじ)高校に入学した。


この高校を選んだ理由は2つある。


家が近いことと、もう1つ理由があった。


この高校には講堂がある。


言ってみればこの講堂が目当てであったのだ。


入学すると、早速部活を探す。


演劇部。


僕は中学の時に、舞台を見て感動した。


自分も演劇の世界に身を投じてみたいと思ったのだ。


しかし、いくら部活紹介を探しても演劇部はなかった。


職員室に行き、先生たちに聞いてみる。


「演劇部?以前はあったなあ」


「一昨年ぐらいまでは部があった」


どうやら今は、演劇部は無くなってしまったらしい。


「演劇部って作れますか?」と僕は引き続き先生たちに聞く。


「申請すれば作れるけど、5人以上じゃないとダメだよ」


僕はお礼を言った。


さっそく部員を勧誘を開始しよう。



僕には勧誘の当てがあった。


中学時代からの友人たちだ。


なかでも、黒逸(くろいつ)には是非とも入部してもらわねば。


黒逸はイケメンだからだ。


役者にとって顔がいいのは、舞台映えするをするのと集客が見込める。


さっそく黒逸に聞く「部活ってまだ決めてないよね?」


勇樹(ゆうき)、いきなりなんだ。俺は帰宅部にするんだ」


「そんなことを言わず、演劇をやらないか?」


「俺がやるわけないだろう。人前で演技なんて」


「頼む。演劇部をやりたいんだ。黒逸の力が必要だ」


「必要だ」と言われ、黒逸は少しだけ表情を(ゆる)めた。


「でも俺なんか、大したことできないし、他の人の方がいいんじゃないか」と黒逸。


彼の欠点はネガティブ思考なことだ。


「なあ黒逸。せっかく高校生になったんだ。自分を変えてみないか?」


その言葉に黒逸は反応した。


「俺だってこんな性格は嫌だ。でも性格なんてそうそう変えられるものじゃないだろう?」


「俺が変えてみせる。舞台でお前は脚光を浴び、自信をつけるんだ」


「……考えさせてくれ」と黒逸は言い去って行った。


もう一押しだなと僕は思った。




次は、同じく中学からの友人の、康太(こうた)だ。


彼は身長が高く舞台映えがする。


「康太。演劇部に入ってくれないか?」


「いや運動部に誘われてて、迷っているんだ」


「まあその身長と体格なら運動部もありだろう。でもお前そんなに運動得意じゃないじゃん」


「うっ。それを言われると」


「例えば、バスケ部。今から運動がそんなに得意ではないお前がやって、中学から3年間やってきたやつに勝てるのか?」


「それは、確かに」


「運動部も悪くない。でも、お前には演劇も向いてると思うんだ。ならその見た目を演劇で生かさないか?康太なら注目を浴びれると思うんだ」


「そうかなあ」


「頼む!」


「わかった。いいだろう。俺は役者でいいのか?」


「メインは役者だ。もし人が少なければ、他にもやって欲しい」


「わかった。任せろ」


こうしてまずは1人入部が決まった。


彼は明るい。


この明るさは演劇の練習などにとっては、必要になるだろう。



数日間、僕はクラスの生徒を観察した。


誰が演劇に向いているか、誰なら入ってもらえそうか。


僕はまず1人の男子生徒に注目をした。


これまでクラスでほとんど喋っていないでスマホばかりいじっている。


僕は何を観ているのだろうと、そっと後ろを通って覗くと、舞台を観ていたのである。


ちらっと見て、人気アニメの舞台だと思った。


舞台に興味があるなら脈ありだ。


「はじめまして京志郎(きょうしろう)君。僕は勇樹というんだ。今度演劇部を立ちあげようと思う。是非入ってくれないか」


「嫌だ。人前で演技なんで死んでも嫌だ」


「では裏方ならどうだ?脚本とか道具作りとか」


「う~ん。それならいいかな。演技は無理。でも脚本なら興味がある。」


そして「僕が脚本書いていいのなら。傑作を書くよ」


「じゃあ入部してくれるか?」


「ああ。いいだろう」そう言うと京志郎は黙ってスマホをいじりだす。


これで、2人入部してくれた。


先生は部員は5人必要だと言っていた。


しかし、5人では足りない。


5人で演劇はかなりきついからだ。



次は女性が欲しいと思った。


さすがに全員男では演劇にならない。


そしてクラスにはどうしても欲しい人材がいる。


まひなという人だ。


彼女の魅力は何と言っても見た目だ。


この人はきっと良い役者になる。


僕の勘がそう言っている。


タイミングを見計らって声をかける。


「まひなさん。僕は勇樹というんだけど、こんど演劇部を立ち上げたいと思っています。どうか入部して一緒に演劇をやりませんか?」


「園芸?花とかを育てるのですか?」


「園芸ではありません。演劇です。舞台で芝居をする」


「ああ。それでなんで私?」


「見た目が良いから演劇に向いています。あなたなら舞台映えします。どうでしょうか?芝居をやってみませんか?」


「司会ですか?」


「芝居です。演じることです」


「まひなは相変わらず面白いなあ」と横から別の女性が会話に入って来た。


「あなたは杏奈(あんな)さんですね」と僕が言う。


「私のことよく知ってたね」と杏奈さんが言う。


「もちろん。僕は演劇部を立ち上げようとしていて、人を集めているんだ。杏奈さんにも声をかけようと思っていたから」


「私に?」


「あなたのよく通る声は舞台向きだ。舞台でその声を生かさないか?」


「そう言われると照れるなあ。それに演劇面白そうじゃん。まひなもどう?」


「杏奈が入るならいいよ」


こうして僕も入れて5人集まった。


再度黒逸に状況を説明し、説得に成功。


6人で経堂高校演劇部の活動が開始した。


それからはみんな素人なので、演技のいろはに、裏方についても説明をした。


そして目指すは毎月の定期公演だ。

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