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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
神の世界

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好きになった切っ掛け

 ユリに急かされながら、ヴェルディーゼはそっと目を閉じる。

 そう、あれは、ユリを見つけて間もない頃だった。

 きっと偶然だった。

 偶然に過ぎないとわかっているのに、あの時のヴェルディーゼは――


「……一目惚れ……っていうのも、嘘ってわけじゃないんだ。それに限りなく近いものだと思うから」

「……えっと、つまり?」


 少し困惑気味に、ユリは訊ねた。

 それにヴェルディーゼは、少しだけ躊躇ってから、ユリに惚れた理由を口にする。


「……目が、合ったんだ」


 ぱちくりと、ユリが目を瞬かせた。

 それを眺めながら、ヴェルディーゼは小さな声でもう一度口にする。


「目が……合ったんだよ……」

「は、はい。……えっ、目……? 私が人間だった時に……??」

「目が!! 合ったんだよ……ッ」

「怖い怖い怖いです……肩掴まないで……そしていつまでもそればっかり繰り返してないで詳細について教えてください……わかりません……」

「偶然だってわかってる。わかってるけど……目が合ったあの瞬間に、衝撃があって……次の瞬間には、好きになってたんだよ……」


 ヴェルディーゼはそう言って、ユリを抱き締めた。

 とりあえず、ヴェルディーゼはユリと目が合った瞬間に好きになったらしい。

 だが、目が合ったという部分がどうしてもわからなくて、ユリは眉を顰める。

 だって、ユリは人間だった頃に、こんなにも綺麗で格好いい人を見たことはないと、はっきりと言える。

 もしそうなっていたら、いくら幼い頃とはいえきっと一目惚れしていたに違いないから。


「ふふん……小さい頃に会ってたら、絶対一目惚れしてました。絶対」

「いや、ユリは別に一目惚れじゃないよね。……コホン……その、ね。目が合うのって……特別なんだよ。僕の姿は……僕が一方的に覗き見ているだけじゃ、見えるわけないから。目がちゃんと合う確率なんか、そう多くない」

「……それを……小さい時の私が、偶然その低ぅ〜い確率を掻い潜って、ばっちり目を合わせちゃったってわけですか。……目が合ってたら、相手が私じゃなくても惚れていたかもしれないと……?」


 ユリが低い声で、静かにヴェルディーゼに圧をかけた。

 そんな未来があったかもしれないと考えると、それすらも許せなかったのだ。

 だが、ヴェルディーゼは嬉しそうに頬を緩めると、優しくその頭を撫でながら言う。


「そんなことないよ。君だから惚れたんだ」

「証拠が無いですもん。もし平行世界があるとしたら、その隣にいるのは限らないんですもん。そんな主様がいるとしたら、こっちの主様の方が絶対絶対幸せですけどっ」

「妄想で拗ねないで、可愛いから。僕はユリにしか惚れないよ。あのタイミングで、ユリ以外の人間を見ることは無かったしね」

「どーゆー意味ですかぁ。ふーん」

「ユリがシュヴァーシーリの生まれ変わりだってわかってたから。だから見守ってたんだよ。人間に生まれ変わったの、初めてだったから。恩人だから……見つけた時から、目を離さないようにしてた。せめて……変な因果に巻き込まれないでほしいと思ったから。……結局、好きになってからシュヴァーシーリのことはどうでもよくなったけど。むしろ、僕が変な因果そのものになった感じはするけど」


 拗ねていたユリが、ヴェルディーゼの説明に目を丸くした。

 そして、ユリは照れたように目を逸らすと、それでも嬉しそうにはにかんで言う。


「じゃあ……えへへ。運命の出会いだった……って、ことですか?」

「そうだよ。シュヴァーシーリがいなければ、僕は……僕は、どうなってたかわからない。あのまま利用され続けてたかもしれない。だから……僕が他の誰かを選ぶなんて、絶対にありえないんだよ。シュヴァーシーリがいなければ、今の僕はいないから。シュヴァーシーリがいたからこそ、ユリが生まれて……彼女に対する恩があるからこそ、僕は君と出会った。そんなもしもは、想像する価値も無い」

「わあ……ふふ、凄い言い草。そうですか……そうですかぁ。運命の出会い……目が合った瞬間」


 ユリは嬉しそうにそう呟きながら、しっかりとヴェルディーゼと目を合わせた。

 〝一目惚れ〟の瞬間とは、色の違う黄金色の瞳。

 甘い蜜のように、とろけるような甘さを秘めた綺麗で愛らしい瞳。

 変化した瞳は、けれどヴェルディーゼに衝撃を齎したあの瞳と同じ色を宿している。


「ユリの目が好き。あの時と同じ目……いつだって輝いてる、美しくて可愛い瞳。明るいのに、どこか静かで凪いでる、綺麗な瞳」

「……あの、それ……静かで凪いでるって、私の闇的な部分じゃ……記憶が無くても心の傷は消えませんし。主様が私を見つけたのって、私の……その、本当のお父さんとお母さんが死んだ後ですよね。そんな目でときめかないでぇ……」

「好きになっちゃったんだからしょうがない。今も時々そういう目をするから、そういう時実は……悲しんでほしいとは思わないんだけど、ね?」

「うぐっ……主様が見惚れてくれるのは、まぁ、嬉しいんですけど……はぁぁ……生きてますもん、明るいだけじゃないですよそりゃあ……」


 ユリはそう言い、ぺしゃりとヴェルディーゼに向けて腕を広げながら脱力し、完全に身体を預けた。

 ユリとしては、明るいところをヴェルディーゼに見てほしいのだが、ヴェルディーゼがユリの暗い部分も好きと言うのだから仕方が無い。


「……ユリは、僕のどこに惚れたの? あの時……助け出してから好きになったのは知ってるけど、ちゃんと言葉にしてもらったことって、あんまりないよ」

「ああっ、カウンター飛んできたっ……う、うぅ、き、切っ掛けと致しましては、あの、本当、絶望してたところに希望の光が射し込んできたっていうかそんな感じでっっっ……はい!!!!」


 ユリが勢いで誤魔化し、羞恥で赤く染まる頬を両手で包み込んだ。

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