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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
交流区

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深淵を貫く

 ユリが目を覚ますと、何故だか身体が一切動かなかった。

 ぎゅっと顔を顰めながらユリが周囲を確認すると、ヴェルディーゼが全身を使ってユリを抱き締めて眠っており、ユリは呆れた顔をする。


「あーるじーさまー? 起きてくださ〜い、おやすみの時間は終わりでーす」

「……んん……? ……あ~……おはよ〜……」

「はい、おはようございます。調子どうですか〜、二日酔いとか」

「無いよ……あるわけないでしょ。……ふぅ……まだ休んでいたいところだけど、そうも言っていられないな」

「!」


 ヴェルディーゼの言葉に反応して、ユリがバッと立ち上がって胸を張った。

 これからあの神の追跡を行う――ということは、ヴェルディーゼが無防備になるということである。

 つまり、ユリの出番だ。


「へへ、へへ、ひひひ……私が主様を守ってあげますからね……♡♡」

「それ怖いからやめて。気味の悪い動きでにじり寄ってこないで」

「主様だって昨日にじり寄ってきてましたけど。……コホン……やりますか? 調査。全力でお守りしまっす! えへへっ……」

「ユリは可愛いね……ええと、そうだね。念入りな準備もしたいけど……今はとにかく、位置を突き止めることから。やろうか」


 ヴェルディーゼはそう言うと、ユリの隣に立って目を閉じた。

 ユリは大鎌を取り出して警戒態勢となり、神経を張り詰めさせ、周囲の気配を探ることに集中する。

 ヴェルディーゼの周囲に魔力が集まり始め、圧縮され、ユリには到底真似できない、大きな魔法の気配がする。

 きっと、位の低い神は、立っていることはおろか、その魔力だけできっと命すら散ってしまう、そんな恐ろしい力。

 だが、ユリにとってそれは、胸が切なくなるくらい愛おしくて、酔いしれてしまいたくなるようなものだった。

 警戒なんて手放して、全身でその魔力を受け止めて、その魔力で溺れたい――


「……ッぐ!?」


 零れた短い苦悶の声にユリは即座に反応し、大鎌を深淵へと変換した。

 深淵はヴェルディーゼの目元を守るようにして展開し、それに少し遅れるようにして、紫電がその目元めがけてどこかから放たれた。

 ユリの深淵は間に合った――だが、その指先が、衝撃により微かに震えるのを、ユリは見た。


「あるじさ――ッ!」


 急いで傍で支えようとするユリだが、自分に向けられた魔法を感じ取って急いで深淵を自分の周囲に巡らせた。

 だが、紫電は再び深淵を通り抜け、ユリの腹部を貫く。

 痛みは無い、だが身体の内側に知らない魔力が渦巻くのを感じて、ユリは顔を顰める。

 そうしつつも、ユリはそっとヴェルディーゼの背中に腕を回し、その手を取った。


「主様……主様! 大丈夫ですか!?」

「……あ……だい、じょうぶ。……ちょっと待ってね……」


 ヴェルディーゼは大切そうにユリの手の甲を撫でると、緩く握って脱力するようにしてベッドに腰掛けた。

 その様子にユリはおろおろしながらも、どうすればいいのかわからずぎゅっとその手を握り締め、ヴェルディーゼの顔を覗き込む。

 疲れた顔をしていた――だが、そんなことはどうでもよくなるくらい、その顔には動揺が浮かんでいる。

 それを隠そうとして、できなかった表情だ。


「主様……喋れますか? 辛いなら、横になった方が……」

「そこまでじゃない。……ふぅ……よし、大丈夫。心配かけたね、ごめんね。ユリは? 平気? 攻撃……ごめん、見えたんだけど、咄嗟に動けなくて」

「そんなことっ……私のことはどうでもいいんです! 主様っ……酷い顔でした。……隠さずに教えてください、あの雷は……主様に、何を……」

「……隠せないか。記憶……」


 す、と目を眇めて、記憶を消そうかどうか検討するヴェルディーゼの手を、ユリは強く握った。

 そして、真剣な眼差しでヴェルディーゼの目を見ると、はっきりとした声で言う。


「記憶を消されても……私は構いません。でも……それは、主様の為にはならない。……わかっているでしょう?」

「……はは……困ったな」


 ヴェルディーゼは乾いた笑みを浮かべると、ユリを強く抱き締めた。

 ぽん、とその肩に頭を預け、ヴェルディーゼはその耳元に囁くようにして言う。


「主は僕なのに、君には逆らえないね」

「……ぅ……あ、あの、耳……」

「なのにユリは、こんなにもふわふわしてて、なんにもわかってなくて……はぁ……」

「なんにもわかってないって酷くないですか!? 主様が私のこと大好きってことくらいわかってます!」

「わかってないよ。僕、ユリに言われたら……最高位の座も譲るし、君の眷属にだって喜んでなるよ」


 ヴェルディーゼはそう言うと、そっとその耳に口付けてから離れた。

 羞恥で耳を押さえて座り込んでしまうユリを気にすることなく、ヴェルディーゼは何事も無かったかのように話し始める。


「ユリは……大丈夫そうだね。なら、僕について話すけど」

「ま、待って、今、何にも頭に入ってこないぃ……」

「具体的に何をされたのか……については、わからなかったんだけど。断片的に得られた情報から推測すると、いわゆる……マーキングみたいなものだよ。それと……ほら、あれ……なんだっけ? じー……」

「……じ、GPSぅ……?」

「あ、それそれ。それみたいな感じ。今すぐどうこうって感じじゃないし、対処しておくから心配しなくていい……何か言いたげだね?」


 ヴェルディーゼが苦笑い気味にそう言うと、ユリはゆっくりと息を吐き出した。

 そして、キッと目尻を吊り上げると、不機嫌そうな声で、ユリはヴェルディーゼに言う。


「それは安心ですけど……私の不安をわかってて言及していませんよね」

「……これから話すつもりだったよ?」

「嘘吐き」


 ふん、と顔を逸らして言い捨てるユリに、ヴェルディーゼは苦笑いを浮かべながらその頭を撫でた。

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