ある夜道の男
初投稿です。小説を書いたのも初めてなので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
冬もいよいよ本格的になってきた12月中ば、寒気さが身にしみるという言葉の意味が文字通り体で感じられるようになった頃、1人の男が寒空の下電灯がただただ連なっている住宅街の夜道を歩いていた。男が一人暮らしするアパートへはこの道が最も近いのだ。
「あぁ、さみぃなぁ、寒波かなんか知らねえけど、どうしてこんなに俺を虐めるのかねぇ」
その男は誰が聞いているわけでもないのに一人ボソボソと理不尽な気象への愚痴をこぼし、お世辞にも立派なスーツとはいえないが、大学入学式から就職活動まで自分の人生の節目を共にしてきた黒いスーツを身にまとい、なんかかっこいい、と意気込んで衝動買いしてしまった薄茶色のトレンチコートの前を母親が地元から送ってくれた手編みの灰色の手袋に包まれた手で閉じながら、営業でパンパンになった足でトボトボと歩いていた。
「あぁ、こんな時に俺のことを家で待ってくれる彼女がいればなぁ」
生まれてきて20数年間恋愛のれの字もなかったこの男は、叶うはずもない願いを電灯の光で星が見えなくなってしまった都会の空に一人呟くのだった。その空はまるでこの男の希望のない未来そのもののようであった。その時、
「アハハハハハ、お父さんのお背中流してあげる〜!」
ふと近くの家から子どもの無邪気な声が聞こえてきた。就職祝いに親から送ってもらった安物の腕時計を見てみると、もうすでに20時半を回っていた。
「そうか…、子供は風呂入って寝る時間か…」
さらに、同じ家から
「そうか翔太!それじゃお父さんの背中頼むわ!」
と、これまた元気のいい声が聞こえてきた。おそらく翔太くんのお父さんだろう。
「お父さん、か…」
男は遠い実家にいる父親の姿を思い出した。地元の役場の公務員でいつも祭りだの、イベントだのと色々と忙しくしていた父の姿は、幼い日の男にとっては全然遊んでくれない薄情な父に思えた。
「今度連絡してみるか…、正月にでも顔を出すかな」
手に持った残業がたくさん詰まったカバンを持ち直して、
男は再び歩き始める。
「おっ、一等星かな」
星のほとんど見えない夜空に1つだけ輝く星、男は過酷なデスクワークですっかり曲がってしまった猫背を伸ばしながら、遠くに見え始めた自分のアパートに向かって歩いて行くのであった。
いかがだったでしょうか?個人的に独り身のサラリーマンの方の心情を勝手に書かせてもらったのですが…




