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ドラゴンすくらんぶる!  作者: 葉月 都
第壱章 封じの姫
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其之八

今日、やっと二十七族生の龍精全員のプロフィールを書き終わりましたぁ……

色龍がラストでした(苦笑)

そして、佳穂が睦月寮にやってきた次の日。



「おーい、佐久っ。」

「よ、佳穂。」



二人が佳穂と一緒に伏見町を歩いていると、ばったり佐久と出会った。

はあー、とため息をつきながら苦笑いする佳穂に、巴樹は聞いた。



「佳穂さん。佐久さんとはどのようなご関係なんですか?」



佳穂は小さく笑うと言った。



「佐久とはね、」

「佳穂とは、家が隣同士のご近所さんなんだ。」



佳穂の言葉を遮って、佐久が言う。

そこできいが何か思い出したよう。



「あーやっぱり。あの隣の家の本の虫。」



きいは、いとこである佐久の家に遊びに行ったことがあるから、あやふやに覚えていたのであろう。



「失礼ね。読書が好きなだけ。」



むっとして佳穂は、なぜか隣に立つ佐久のおなかをバシッとたたく。



「ぐっ………なんで俺………」

「私をわざわざ探してまで、何の用なの?」



佐久の反論を華麗に無視して言う佳穂のその顔は、少し不満げな表情だった。



「最近のクラの活動について聞こうと思ってな。でも、龍雅会から正式に依頼が来たし。」



ふっと笑い、佐久は「春花」をかまえた。



「それじゃあ、またなー。」



ひらひら~といつも通り手を振ると、ジャンプして近くの家の屋根に上ってどこかへ去っていった。



「ったく。いったいなんだったのよ。」

「いつになっても自由人だな、あの小悪魔め。」」



嫌味たっぷりに佳穂は言い、二人の肩に手を置いた。



「"あれ"のことは置いといて、クラ退治に行こっか!」



にっこりと微笑んで先頭に立つ佳穂を見て、二人は思った。


(佳穂さんも、意外と超絶自由人だな。)

(佳穂さんって、マイペースかも!)









「いた!いました、佳穂さん。」



伏見町の北側、清水きよみず地区にやってきた三人は、そこでクラを発見した。



「うわぁ、ちょうど三体だね。」



笑っているようだがまったく目が笑っていなく、いつになく真剣に、その黄色の瞳がクラをにらみつける。



「それじゃあ、一人一体でいいかな?」

「「了解」!」



三人は一斉に飛び上がると、それぞれの武器を構える。



「光輝龍派!」

「天霊っ!」



きいと佳穂の飛びかかっていった三階建てのビルくらいの大きさのクラが、パチンッと弾ける。浄化されたのだ。



「どうやら、『妬み』のクラだったみたい。」



後に残った黒玉を拾って、佳穂はつぶやく。



「そういえば、巴樹は?」



思い出したようにきいがきょろきょろと見回すと、少し遠くの方に似たようなクラの姿が見える。



「ええっ?さっきまで一緒のところにいたはずじゃ……?!」



佳穂も驚いて叫ぶ。



「とにかく、行きましょう。」

「そうだね。」



二人は顔を見合わせると、一斉に駆けだした。







一方、巴樹は。


(このクラっ、なにか違う!?)


目の前に立つクラを見上げて、巴樹は思っていた。


(色も違うし、なんだか大きさが桁違いに大きい?!)


巴樹の武器、「風華」を持って、そのクラをにらみつけていると、どこかからおちゃらけたような声がした。



「なんだァ、お前。俺様の下僕になにか用かァ?」


「誰っ!」



いっそう強くにらんでいると、クラの上から一人の男性が現れて、巴樹を見下ろしていた。

紫色の髪に黄色のサングラス。ロックスターが着そうな、袖に長い白の紐がヒラヒラと垂れ下がっている服を着た、真っ黒な男だった。



「俺かァ?俺はなァ……黒亜、『ごう』だァ!」



ヒッヒッヒッ、と気味の悪い笑い方をすると、號は叫んだ。



「お前…龍精か?」



巴樹の持つ風華を見て、號が言う。

サングラスの奥から、心を見透かされているような感覚に陥る巴樹。



「その通りだけど………それがどうしたのよ。」



強気で答えた瞬間、目の前のクラの姿がゆらぁっとゆらいだ。


(え……?)


戸惑い、体を揺らす巴樹。

すると、その瞬間。


突然ゼロ距離に號が突然現れた。


(へ……?!)


巴樹が声を出す前に、號の拳がみぞおちに入る。



「かはっ……………………!!!」

「女だからって容赦しねェ。龍精なら、倒すだけだぜェ!!」



不敵な笑みを浮かべて、號は、おなかを抑えてうずくまる巴樹の腰を蹴り飛ばす。



「グッ………!」



電気のように、鋭く速く、痛みが全身に伝わる。



「ヒャッハッハッハッハ!!このままボロボロになるまで殴ってやるよっ!」





何度も、


何度も、


何度も蹴られる巴樹。





そこで、巴樹の「何か」が切れた。


小さくうずくまる巴樹の体が、突然金色に光り輝き始めたのだ。



「な、んだァ?」



驚いた號が少し距離をとる。



『やめなさい。』



突如、巴樹の口から、そう言葉が漏れる。

だが、まるで巴樹と違う、艶のある声だった。



「はァ?」



ゆっくりと起き上がる巴樹。その姿を見て、號が叫んだ。



「こいつ、何者だァ!あれだけ殴ったのに、何事もねェように立ちやがった!」



巴樹の体を包む金色の光は、どんどん、大きく、広くなっていく。






二人が着いたのは、その時だった。



「な、なんなの?あの光!」



佳穂が、目を見開いて叫ぶ。

すると、



「封じの姫……。」



幻の中にいるかのように、きいがぼそりと言う。



「え?」

「この感じ、何かが違う。…巴樹の何かが変わってる……。」



そう言うきいの顔は、なぜか真っ青な顔だった。

その変化に何か気づいたように、佳穂はつぶやいた。



「……押し込めて。」







「龍風巴」



そうつぶやくと、巴樹の手に持つ風華が緑に光り輝き、形が変わる。


薄い黄緑色と水色の長い紐が、扇の横に三本流れる。

その紐の根元には、金色の小さな鈴が二つずつ。


扇面は緑色のままだが、その模様が桜から、七色をした龍が泳ぐ絵に変化している。



「やめろォ!やめてくれェ!!」



號の叫びは、金色の光に吸い込まれるように消えていった。



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