其二十一
Wi-Fiの調子が悪く、イライラしながらシャットダウンさせてしまいましたぁ………
シャーーッ!
「そういえば、きいくん、どこ行ってたの?」
夕日が傾いてきたオレンジ色の空を背に、二人は睦月寮への道を歩いていた。
話題は、青龍の間からの、きい消失事件である。
「……別に。もう一つの本の山ん中で資料採取。」
本の山…図書室を思い出して、巴樹はぶるるっと身震いする。
「あそこ、本多すぎだよ。頭がヒート寸前だったぁ……」
しょんぼり顔で巴樹は言う。
きいは、まっすぐに前を見つめている。
「きいくん?」
どこか物悲しそうな表情に、巴樹は声をかける。
「大丈夫?」
「………ああ。」
そうは言っているが、その瞳は未だ悲しみに飲まれていた。
そして、月曜日。
早朝から、全校生徒が体育館に集合していた。
なぜなら、全校朝会という、地獄の講演会が始まるからだ。
「ふわーぁあ。」
大きなあくびをしながら、きいは思う。
(ねむー。しかも、さむー。)
春だというのに、この寒さ。
そして、その寒さに打ち勝とうとする春の陽気。
暖寒のダブルパンチに、きいは半死寸前である。
列の前のほうにいる巴樹は、不安そうな表情であたりを見回している。
そんな空気を破って、生徒会の委員が、ハウリングを起こしてからしゃべり始めた。
『えーえー、ではこれから、皐月学園生徒会より発表がありまぁーす。』
そのセリフの後、一人の少女が壇上に上がる。
『おはようございます!みなさん。』
その凛とした声に、くたびれはてた生徒達の目に生気がよみがえる。
にっこりと微笑んで、少女は叫んだ。
『生徒会長の
南佳穂
です!』
その栗色の髪を風になびかせ、佳穂は話を続ける。
『今回、皆さんに集まってもらったのは………』
だが、巴樹の耳には入ってきてはいなかった。
巴樹が思っていることは、ただ一つ。
(か、か、佳穂さぁん?!)
そして、全校朝会が終わった後、巴樹はクラスメイトの女の子に急いで話しかけていた。
「ね、ね、せせせ、生徒会長の、南佳穂さんて!!」
女の子は、にっこりと笑って巴樹に教えてくれる。
「そっか。巴樹ちゃんは初めて会うよね。佳穂さん。
佳穂さんはね、二年生なのに生徒会長を務めるっていう、いわば、『規格外の生徒』なんだよ。
テストでも、トップ3以内だし。
運動大会だって、いつもトップの成績だし。
すごいよねぇ~。」
その説明に、巴樹は唖然とする。
すると、巴樹の後ろから、聞き慣れた声が聞こえた。
「おい。廊下でぼけーっと突っ立つな。邪魔だ。」
きいの声が聞こえた途端、「きゃあっ。」と女の子が悲鳴を上げて、教室に駆け込んでいく。
「巴樹、お前も。さっさと入れ。」
肩を押しながら教室へと誘導する。
自分の席に着くと、巴樹はきいに問う。
「佳穂さんて、すごい人なんだね。びっくりしたよ。」
くすっと笑うと、たまたま聞こえていたのか、鳴海が会話に乗り込んできた。
「でしょでしょ!入学当時から有名人だし。ねー、きーい?!」
「は?なんのこと。」
あからさまにいやな顔をするきいの肩に、しっかりと手を置くと、「ニヒヒッ」といたずらっ子みたいに笑う鳴海。巴樹は、そんな二人を見ながら、ほほえましく見守る。
「おーい、授業始めるぞー。」
先生が入ってきて、佳穂談義は幕を閉じた。
教科書を開きながら、巴樹は思った。
(うーん、なんか、すごい嫌な気配がビンビンするんだけど………)
「巴樹ちゃーん!一緒にお弁当食べよーっ。」
「巴樹~、早く早く~。」
お昼休み。
転校早々仲良くなった、茉奈と優香が、お弁当を持ってきて、巴樹の目の前に現れる。
「今行くね。」
机の横にかけてあるバックの中から、緑と黄色のタータンチェック柄のお弁当包みを取り出して、二人とともに、巴樹はどこかに行ってしまった。
そして、その数十秒後にきいも、お弁当を持って立ちあがる。
その姿を見て、鳴海が不思議そうな視線を向ける。
「どこ行くの?きい。」
その問いに、きいは小さく笑って言った。
「ご飯を食べに。」
ぽかーんとする鳴海を横目で見てから、きいはある場所へ向かった。
少し雲の覆う空の下、きいは屋上にいた。
「やっと来たか。」
「なによ。その言い方。言っとくけど、私、あなたよりも年上なんですけど。」
「私も同感です。」
きいの目の前には、
白色のミディアムヘアに、薄緑色の鋭い瞳をした黒縁眼鏡の女の人と、栗色ボブの佳穂が立っていた。
眼鏡をかけた女性の恰好は、まるで先生のようだ。
「それで、何の用なの?」
佳穂が聞くと、ふいにきいの後ろに一匹の黒猫が現れる。
佳穂の横に立つ女性の警戒心がますます強くなる。
「この学校に、現れる可能性がある。」
黒猫が何かを口にくわえて、二人の元へ歩み寄る。
女性がその紙を受け取ると、二人の目に驚愕の色が浮かび上がる。
「陵様には。」
強いまなざしで、佳穂はきいに聞く。
大きく息を吐くと、きいは近くのベンチに座り込む。
「知ってるよ。……あの日に、伝えた。」
その視線を睨み返すと、きいはお弁当を広げた。
佳穂は隣の女性に声をかけた。
「小冬さん。警戒を強めましょう。」
「ええ。そうね。」
【ドラすく誕生日公開こーなー】
仲浜夏樹・奈月 七月七日




