表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/108

鮮血のディアノック(後編)


「参られよ」


お互いに構える。

相手は片腕をこちらに向けた構えだ。

魔術を放つ時、意識を集中させる為、ああやって狙いを定める者は多い。

強力な魔術も当たらなければ意味がない。

だからああ言う行動をするのだが、正直見えていればなんてことはない。

魔術を放つ瞬間を見定め、躱。

後は接近して一太刀浴びせれば終わりでゴザル。

デュフフww魔術士、恐るるに足ら――ぬ!?


放たれた雷撃。

紙一重で避けた。いや、避けれた。

そして驚いた。

魔術にしろ武術にしろ、何かを極めると言うことは並大抵の事ではない。

仮に魔術であれば、1系統を極めようとすれば他の魔術はなかなか覚えられない。

こいつの場合、特級の風魔術士であろう。

だから別系統の魔術を使えてもせいぜい中級、あっても上級だと高を括った。

それなのにどうだ、今の雷魔術、最上級か、それ以上。

そして奴から迸る膨大な魔力。

これはなかなかどうして、予定変更。

地面を抉り、砂埃を上げる。


そして奥義! 【投影真とうえいしん


拙者の分身が砂埃の中に数体現れる。

実のところ、拙者は火と雷に弱い。

風魔術も効かない訳ではないが、雷よりは幾分ましだ。

これは風魔術を誘発させる為のエサだ。

この砂埃の中、魔力を宿した分身もいる。拙者を捉えて雷撃を入れるのは至難の業。

奴からすれば、急に拙者の魔力が分裂したと思うであろう。

であれば、風を使って何が起こっているのか見たくなるのが性と言うもの。

その間に接近してコロース!

おら、こい。打ってこい。

っと奴から魔力の高まりを感じる。


ファ!?


飛んできたのはまたも雷撃。

なんで!?分身もいるのになんで拙者の位置がわかるのでゴザル!?

ってうそお!?分身全部消えたでゴザル!こいつ分身もまとめて殺しに掛かってきたでゴザル!

一応風じゃないと恐いから魔力が高まった瞬間思わず避けちゃったけど、避けてなかったらやばかった。

ていうか拙者の分身をいとも簡単に……分身だってランクSはくだらんぞ。

ああもう!こっちの思惑を無視しくさってクソがあ!もうキレたでゴザル!

奴まで後少し、魔力を高め、一発もらっても根性で耐えてコロス!

いったれオラアアアアア!!!













って打ってこないいいいいいいいいいいいいいいいいいい。

もう一足の間合いだぞ!?拙者の覚悟を返せ!!


砂埃を抜ける。


!?


拳を構えている。

え?なにしてんのこいつ。

理解不能でゴザル。

諦めたのか?いや、そんな風には見えない。

あ、読めたでゴザル!超至近距離で魔術を使うつもりでゴザルな?相討ち覚悟で!

おもしろいwwやってみるでゴザルwww

拙者の【業断ごうだん】で全て断ち切ってやるでゴザルwww

さらば魔術士!フォーエバー!


迫る【業断】。相手は死ぬ。

筈だった。

拙者の斧が魔術士の脳天をすり抜ける。


……ファ?


ファアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?


すり抜け!?ナンデ!?ナニユエSURINUKE!?

すり抜けていいのはゴーストタイプだけでゴザル!!


ってなに近づいて来てるんだこいつ。

拳なんて握っちゃって。

あ、これやばいやつでゴザル。

死ぬやつ、これ死ぬやつでゴザル。拙者こんな所で死――


――死ねぬうううううううううううううう。


得物を手放し、両手に全魔力を集中させる。

そして迫る死拳を、胸元で受けた。


「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」


痛ああああい!死ぬ!死んじゃううううう!!


足で地面を削りながら、後退する。

しばらくして、止まった。


はあっ、はあっ。生きてる。ギリギリ生きてる。

もうダメかと思った。ここに顔があったら絶対に泣いてるでゴザル。

気を抜いたら粉々になりそうだ。う、動けない。


しかし何者だこいつ。

何をされたのかはわからなかったが、今の動き、魔術の波動を感じなかった。

つまり……武術だ。

こいつは高位の風、雷魔術を使い、さらに【業断】を凌ぐ武術を使う。

魔王様と同等?そんな存在。

そんな存在。


「……勇者?」

「あ、はい。なんですか?」


自問が漏れただけ、別に問いかけた訳ではない。

ないのに、期待していない返事が来た。


ふふ。


聞いてないよおおおおおおおおおおおおおおおお。

勇者って、あの勇者?アルマゼルを倒した奴でしょ?

『ウィンポート』に行ってるんじゃなかったでゴザルか!?

あのクソピエロ、適当な情報よこしやがってええええええ。

しかしこいつが勇者なら、この強さにも納得がいく。

やばい、やばいでゴザル。

こんな奴と戦ったら命がいくつあっても足りないでゴザル。

戦いたくないでゴザル!絶対に戦いたくないでゴザル!

なんとかうまいことこの場を離れなければ。

しかしどうする。どうすればいい。


一騎打ちを挑んだ手前「負けましたww」って訳にはいかないし、そんなことしたら女にモテない。

どうにか拙者の顔を立てつつ退くのだ。

本当は勝てるけど、今回は退いといてやるよ?勘違いするなよ!?別にお前の為に退く訳じゃないんだからな!?ってな感じで逃げる!

デュフww震えてきやがったwww一世一代の大芝居いくでゴザルwwww


「そうか、貴殿が勇者殿であったか」

「あれ?言ってませんでしたっけ?」


聞いてないよ!そういう大事なことは初めに言えよクソ眼鏡!


「なるほど、貴殿がアルマゼルを、同胞を屠ってくれた勇者殿であったか」

「まあ、そうですね」

「……クックック、ハッハッハ、デュハッハッハッハ!なんという偶然!なんという運命の悪戯!よもやこの様な場所で仇敵である勇者殿に巡り会えようとは!」

「そうですか」

「では勇者殿、このままここで決着を――と言いたい所だが、少々興が乗らぬ」

「興……ですか?」

「さよう。勇者殿との一戦、このような場で済ますのは勿体無いと言うもの。勇者殿と雌雄を決するのであれば、もっと相応しい場所がある筈だ」

「はあ」

「そこでだ。今日のところは一旦退こう。そして貴殿と戦うに相応しい場を用意させてもらう」


ひょおおww拙者カッコイくない?カッコイくない?www

よし、流れは完ペキ。ここらで締めるでゴザル。


「では、さらばだ勇者殿、またいずれ相見えよう」


決まったあああああ!!!ゴルゴルゴルゴオオオオル!!!

鮮やかなミドルシュート!!あの子のハートにハットトリックでゴザル!!


あとはこの場を去るだけでゴザル。

やっぱり拙者は天才でゴザったwww


「ちょっと待ってください」

「ゴザっ!?」

「ござ?」

「あ、いや、ゲフンゲフン、なにようか?」

「いえ、少しお話がありまして」


なんなんでゴザル!?もう完全に許される流れだったでゴザル!!

空気読めよクソ眼鏡!!

……落ち着け。落ち着くんでゴザル。

まだ慌てる時間じゃないでゴザルよ。


「ほう。申されよ」

「国に帰るんですよね?私も連れてってください」


……もうだめだ。こいつが何を言っているかわからない。

連れてって言ったのか?

拙者の国に連れてってって言ったでゴザルか?

拙者の国って、どこかわかって言ってるのか。

魔王国だぞ、魔王様のいる魔王国だぞ。

そこに連れてけって、いったいどういう意図で言っているのか。

というかそのセリフおっさんが言うなでゴザル!


「ほ、ほう。それは、な、何故?」

「ちょっと魔王さんとお話がしたくて」


やばい、聞いてもよくわからないなんて。

クソ、眠った様な顔しやがって、全然表情が読めん。

しかしこれは受けてもいいんじゃないか?

魔王国には魔王様がいる、それに他の八雷神も何人かはいるだろう。

いくら勇者でも、勝てる訳がない。

そうだ、むしろ拙者が連れていけば拙者の手柄でゴザル!


……いや、そんなことはいくらアホでも想像できる筈。

ではなぜこいつはそんなことを言うのか。

それは。


本気で勝てると思っている。


いやいやいや、そんなことある訳ないでゴザル!ある訳、あるわ……け……。


もしも、もしもこいつがそれだけの力を持っていれば、招きいれた拙者の罪は重い。

魔王様が倒される様なことがあれば……。


無理!無理でゴザル!

十中八九ありえないと思っていても、こいつは連れて行けない!


「さ、さあ。どうだろうな、拙者の一存ではなんとも」

「そうですかー……」


残念そうにする勇者。

こいつ真剣ガチだった!!真剣ガチで来るつもりだったんでゴザル!!

やばい、勇者恐いでゴザル、もうおうち帰りたい。


「まあいいか。待っててくれるんですよね。魔王さんによろしくお伝えください。あ、あとできれば侵略を一旦中止してもらえるとありがたいです」

「あ、はい。わかりました」

「なぜ敬語?」

「なんでもないです。失礼します。チャッス」















こうして拙者は、逃げるように帝国を去った。

逃げるようにというか、部下も置いて全力で逃げた。


国に帰った拙者は、気の知れた仲間にこう言うだろう。


「勇者恐すぎワロタwww」




鮮血のディアノック。撃退。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ