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秘密とおっさん

更新遅くなり申し訳ありません。

今年もあと僅かですがおっさんは風邪をひきました。

みなさんよいお年を。


「ぷはー!生き返りましたー!」


口の周りに食べカスを付けたエーリンさん。

インベントリに溜めていた食材をいくつか与えると、元の体形に戻るまで回復した。


「まったくひどい目に遭いましたよー!あのまま放置されてたら死んじゃうところでした」


怒る余裕ができたのか、頬を膨らませる。


「ごめんねー妖精さん」

「エーリンさんが油断しすぎなんですよ」

「なんですかその言い方は!」

「そうでしょう?動けなくなるまで飲み食いして、あまつさえテーブルの下で寝てたなんて」

「うぐっ。痛いとこ突きますね」

「私も大変だったんですからね」

「あー……やっぱり何かあったんですね。色々感じましたから」

「それについてはまた。シェリルさん、ご迷惑お掛けしました」

「ううん。シェリちゃんこそごめんね。それで、おじ様達はこれからどうするの?」

「魔王さんに会いに行くつもりなのですが、そう簡単には行かないようで。まずは共和国と言う所を目指すつもりです」

「遠いねー。また戻って来てくれるのかな?かな?」

「ええ、いずれ」

「にゃはは!約束だよー?シェリちゃん待ってるからねー」





















ロッテ様やマリアンヌさんにも事情を話した。

船の手配については申し訳ないがキャンセルしてもらった。

何か力になれることはないかと聞かれ、大量の金貨や王家に伝わる宝剣を持ってきた時は正直焦ってしまった。

金銭には困っていないし、武具の類なら扱いきれない程あるので丁重にお断りしておいた。

するとロッテ様は捨てられた子犬の様な顔をするのでさらに焦った。

マリアンヌさんと一緒に励まして事無きを得たが、あれは危なかった。

代わりと言ってはなんだが、ロッテ様からは書状を頂いた。

王国に縁のある所であれば、何かの役に立つかもしれないと。

もちろん王国内での効果は絶大。

これで王国内は顔パス状態らしい。関所もなんのそのだ。

乱用する気はないが、必要な時はありがたく使わせてもらおう。


その後、城下で旅支度を済ませて城に戻った。

共和国は遠いらしいので、色々と買い込んでいたら夜になってしまった。

しかしこれで明朝には出発できる。

3人で。……いや4人だった。


この町とも今日でお別れか。

自室のテラスで町を眺めながら考える。

時間で言えばさほど経過していないが、随分長いこと居た気がする。

ロッテ様やシェリルさんと出会い、アルマゼルさんと戦い、ルミさんと……。


今までこれ程頑張ったことがあっただろうか。

いや、そもそも他人と接すること自体少ない人生だったしな。

状況の変化に頭が着いて行かないよ。

おっさんだからね。仕方ないね。


「おっさん」

「はい?」


振り向くと、そこにはネグリジェ姿のルミさんがいた。

大人っぽい紫のレースを基調として、下品じゃない程度にセクシーな服。

犯罪的だ。可愛いすぎるだろ。

……じゃなくていつのまに。


「ノックしたんだけど、返事がないから勝手に入っちゃった」

「そうでしたか。すみません気づかなくて」

「ううん。それでさ……その、あ、明日出発だね」

「あ、そうですね」

「「……」」


な、なんだ。

なにか妙な空気が流れている。

空気の読めなさに定評がある私でもなんとなくわかるぞ。


「あ、あのさ」

「は、はい」

「旅にさ、出る前に話しておきたいことがあるんだけど」


……そうきたか。

よし、切り替えよう。

口元を引き締めてと。


「はい、お願いします」

「お願いしますって、ふふっなにそれウケる!」

「う、ウケますか」

「あは!あはは!ダメっ、ツボに入ったっ、くるしー!ここ見て見て」

「お腹見せてもわかりませんよ」

「あはは!あはっ!はーっ……。うん、落ち着いた。……じゃあ話すね」


相変わらずおもしろい子だ。

なんだかほっとしてしまう。

さて、いよいよ本題か。


「あたし、魔族なの」


……わかってはいたが、やっぱりその話か。

私から話を聞くべきか悩んでいたが、結局切り出せずにいた。

ルミさんから話しに来てくれるとは、ありがたいやら情けないやら。


「正確には魔族と人族のハーフなんだけどね。ママが人族で、パパが魔族なの」

「ルミさんは半耳族ハーフエルフなのではなかったのですか?」

「パパがね、黒耳族ダークエルフって言う種族だったの。黒耳族は魔族の一種だけど、長耳族エルフの親戚みたいなものらしいの。あたし普段は半耳族と同じ見た目なんだけど、あっちの魔力を使うとあの姿になっちゃうの」


あの姿とは黒ルミさんのことか。


「あっちの魔力とは?」

「うまく説明できないけど、あたしには魔力の源が2つあるって言うか、人族の魔力と魔族の魔力があるんだよね。それで魔族の魔力を使うと見た目が黒耳族に近くなるの」


確かにあの時のルミさんの魔力はいつもと様子が違った。

しかし2種類の魔力を持つなんてことができるのだろうか?

車で言えばエンジンが2つある様な物だ。いやガソリン?バッテリー?

うーん。いまいち魔力とはどういう物なのか理解できない。

……でもまあ、言えることはただ1つ。


「ルミさんが魔族でも、私にとっては大切な仲間ですよ」


そう。ただそれだけのこと。

そんなことくらいで、ルミさんを拒絶する理由にはならない。

これからも、絶対に。


目を見開いてから、少し俯くルミさん。


「……そう言ってくれるかなって思ってたけどさ」



「こんなに嬉しいとは思わなかったよね!」


満面の笑み。少しだけの雫。

私も嬉しいですよ、ルミさん。


「でもさ、もう1つ聞いて欲しいことがあるんだけど」


もう1つ?いったいなんだろう。

まあなんでもござれなのだが。


「おっさん勘違いしてるかも知れないけど、あたしは勇者ヨシテルの実の娘だから」


……ん?


「ヨシテルさんは4代目の勇者なのでは?」

「そうだよ」

「実の娘と言うのは」

「そのまんまの意味。勇者ヨシテルはあたしのママなの」


マンマ!?

どういうことだ。

4代目と言うことは何百年か前の勇者の筈だ。

実の娘であれば生きている筈が――いや、よく考えたらタケルヒコ様も生きているし不思議ではないのか?しかしそうなるとルミさんは私よりずっと年上と言うことになる。

というかママってなんだ。

おっさん混乱してきた。

まずは順番に処理しよう。


「えっと、それはつまりヨシテルさんは女性だったと言うことですか?」

「男だと思ってたでしょ?」

「イメージでは」

「ママはちょーちょーちょー美人だったんだからね!それこそパパが一目惚れするくらいに。あ、パパは4代目の魔王なんだけどね」

「ちょ、ちょっと待ってください。情報が多すぎて理解が追いつきません」

「単純な話だよ。ママは勇者で、パパは勇者に惚れた魔王、その間に生まれたのがあたし。

ここまでは理解できた?」


なにラブストーリーだそれは。

いくら美人だったからって魔王が勇者に惚れるってことがあるのか。

……あるんだからしょうがないのか。


「そこまではなんとか。ではルミさんもタケルヒコ様のように長生きでいらっしゃるのですか?」

「なにその喋り方。言っとくけどあたしは正真正銘ピッチピチの17歳だから」

「どういうことですか?」

「ずうーっと眠ってたみたい。目が覚めたらこの時代にいたの」

「眠っていた?」

「あたしもどうしてこうなったのかよくわかんないの。ただ気づいたらこの時代にいて、ママもパパもいなくなってた」


つまりどういうことだ。

ルミさんは何百年か前の人で、でも最近まで眠っていて、理由はわからない。

なるほどわからん。

わからんけれども、それはつまり。


「ルミさんは、大丈夫なのですか」


何百年か先の未来で目覚めて、訳もわからず1人ぼっち。

私も異世界に飛ばされてはいるが、理由はわかっているし一応サポートしてくれる人もいた。

私とは事情が違う。


「最初は混乱したよ。だからおっさんに会いに行ったの。勇者に会えば何かわかるじゃないかと思って」


役に立たずすみません。

まったく何も知りませんでした。


「まだこうなった理由はわからないけど、今は大丈夫。おっさんに出会って、エーリンに出会って、サクヤに出会って、1人ぼっちじゃないから」


そう言ったルミさんは、それでも少し寂しそうだった。

それでも明るく振舞っているのが見て取れた。


「それにさ、手掛かりがない訳じゃないんだ。あのタケルヒコさんは何か知ってるっぽかったんだよね」


タケルヒコ様。

確かに初代勇者のあの人なら、なにか知っていてもおかしくはない。

しかしいまいち信用されていない様に感じるんですよね。

訳を知っていても話してくれるかどうか。

まだサクヤさんに手を出すとでも思われているのでしょうか。


「ごめんね、混乱させちゃって。でもおっさんにはちゃんと今のあたしのこと話しておきたくてさ。タケルヒコさんにも、そのうち話を聞くつもり」

「……ありがとうございます、話してくれて。この事はサクヤさんには?」

「サクヤにも話すよ。……嫌われるかな?」

「大丈夫ですよ。サクヤさんですから」

「……うん」


エーリンさんは……特に問題ないだろう。

何か言ってきたら瓶に詰めよう。


「じゃ、じゃあそろそろ戻るね」

「あ、はい」

「おやすみおっさん」

「おやすみなさいルミさん」


部屋を後にするルミさんを見送った。






















ぶふうっー!!


大きく息を吐き出す。

前半は予想していたが、後半はまったくもって予想外だ。

まだ頭が混乱している。

いや、ルミさんが話すことによって少しでもスッキリしてくれればそれに越したことはないのだが、おっさんには難しいお話だった。

ルミさんが困っているのなら助けてあげたいが、私はルミさんに何をしてあげられるのだろう。

ルミさんのこと、サクヤさんのこと、魔王さんのこと。

やることはいっぱいある。

もっとよく考えて行動しないと、また彼女達を危険に晒してしまうかもしれない。

それだけはだめなんだ。


まずは共和国に行って、タケルヒコ様に魔大陸への行き方を聞く。

その時にでもルミさんの件を相談してみよう。


そんなことを考えながら、私は寝慣れないベッドに潜り込み眠りについた。




次回。出立。目指すは共和国。

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