26.命を懸けて。
金髪の髑髏に入団して何日経っても私は、金髪の髑髏のボスをボスと呼ぶことができなかったし、クロネコと私を未だにいまいち見分けられない上層部の人たちに話しかけられても、作り笑顔を浮かべることさえできなかったし、ましてや自分から話しかけるなんてことはなかった。
――ルーナを除いては。
別にルーナ以外に喋る人がいなくとも平気だったし、此処へ来てからは一人でいるほうが楽だと感じることが多かった。
そんな風に暮らしていたら、金髪の髑髏のボス、シェーデルさんに呼ばれた。
「なんの用ですか」
こういう言い方は目上の人に対しては失礼だ、とルーナに言われたけど、他に言葉を知らないのだからしょうがない。
シェーデルさんは一瞬だけ、嫌な顔をした。
「お前にはルーナのボディガードになってもらう」
「ボディガードって何するんですか」
「任務などでルーナが危険に晒されたら、お前が身を挺して護るんだ。例えそれで、お前が死ぬことになったとしてもな」
「はい」
「それでは、もう戻っていいぞ」
「失礼します」
シェーデルさんの広い部屋を出て、溜息を吐いた。
ルーナが危なくなったら、護る、か。
お前が死ぬことになっても、という言葉にシェーデルの本心が伺い知れて思わず苦笑いを浮かべた。
そんなに私のことが気に入らないなら殺しにこればいいのに。
シェーデルとの話の内容をルーナに報告するために、ルーナの自室へ向かっている途中だった。
長い廊下の真ん中あたりのドアから男性の声が漏れ聞こえた。
「ルーナになんて隊長を任せたりして大丈夫なのかあ、月隊」
足が止まった。
部屋の中にいる人々は私が聞き耳を立てていることに気づいていないのか、話が止む気配はない。
「イチザキさんのときは名実ともにナンバー1だったのにな。もうダメだろ」
「あんな若造に任せてうまくいくはずがない」
「女性団員には人気があるようだが、いくら顔がいいからって実績がなければ意味はない」
そうだそうだ、と意見に賛同する複数の聞き覚えのある声がした。
幹部の、オヤジたちのものだったか。
「私はあのガキはどうしても好かん」
「ああ、私もだ」
わざと大きな音が鳴るようにヒールを思いきり廊下の硬い床に叩きつけるようにして歩きだした。
なんだか、悔しかった。
ルーナは別に弱くない。
私と戦って、私は彼にやられたんだ。
それにルーナが気に入らないのなら直接文句を言いに行けばいい。
両者ともにシュッツァーという名の戦士なんだから決闘でもすればいい。
それなのに陰でこそこそ悪口を叩くことしかできない人たちは、弱い。
そんなやつらよりよっぽどルーナのほうが強い。
比べ物にならないぐらい、ルーナのほうがつよい。
ああ、なんだかルーナも嫌われてて、私も嫌われてて。
嫌われ者が嫌われ者のボディガードをするなんてね。
私たちを嫌っている人にとっては、一石二鳥なのだろう。
ルーナを危険な任務に向かわせれば私も必然的に付いて行くことになる。
そして二人とも死ぬことになったら、それこそ直接手が下せない弱虫たちの思うつぼだ。
そんなことになんて、させるものか。
まもって見せよう。ルーナを。この命を懸けて、まもって見せよう。
私と、クロネコの違いに気づいてくれたたったひとりのひとを。
私の新しい月を。
I will protect you at the risk of my life.
命を懸けてあなたを護る。




