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11.たとえば、私がまんなかにいるとして。

 

 毎日毎日来る日も来る日もシヅキが特訓をしてくれたおかげで、私もだいぶ刀に慣れることができた。

ときどき危ないって思った時は何故かいつも不思議なことが起こって私は無事だった。

だけど、それが起こるといつもぼうっとしたり、身体から力が抜けたりするから私はあんまり好きじゃない。






 萎びた木にかろうじて縋りついていた最後の葉が風に誘われて枝を離れた冬も間近な秋。

今日は十一月二十七日。

透は朝からボスに呼び出されて、眠たい目をなんとかこじ開けてボスの部屋の大きな戸を叩いた。




「おはようございます、透です。ボス」




 口を開けるとすぐに飛び出そうとする欠伸を堪えながら言うと、部屋の中からいつもの落ち着いた低い声で




「入れ」




とだけ返ってきた。

失礼します、と言って(これはシヅキから教わった)、戸を開けた。

ボスの部屋の内装が視界に飛び込んでくるより早く、

パアンという何かが破裂したような音がして、

色とりどりの四角い紙屑や長いテープが飛びかった。

突然のことに透の思考は一時活動を停止して、ぽかんと口を開けた状態で動かなくなった。




「透、ハッピーバースデー!」




 聞きなれた明るい声がしたほうを向くと、いつのまにかシヅキがいた。

シヅキだけじゃない。

アルーさんももちろんボスもそれから良くしてくれる隻眼テディベアの幹部の人たちも数人いる。

それでも状況が飲み込めなかった。

珍しく早朝からボスに呼び出されて部屋へ行ったらパアンと音がして、

なんだろうと思ったらハッピーバースデー……? 

いつかもこんなことがあったような気がするけど、思い出せない。




「透、お前今日が自分の誕生日ってこと忘れてんな!」


「たんじょうび……」




 たんじょうび。

そうだ。

去年のちょうど今頃もこんなことがあったんだ。

隻眼テディベアのいろんな人にハッピーバースデーと言われて、嬉しかった。

みんなでケーキを食べて、美味しかった。




「そうだ。透、今日十一月二十七日はお前の誕生日だ。覚えたか?」




 ボスが微笑んだ。

ボスの滅多に見せないその表情はいつも私の胸をほかほかと温めてくれる。




「十一月、二十七日……。私のたんじょうび」


「そうよ。透」




 アルーさんが笑う。




「誕生日おめでとう、透」




 幹部の人たちが笑う。




「ハッピーバースデー透!」




 シヅキが笑う。

 みんなが笑う。

その中心に私は今、立っている。






もうひとりぼっちじゃないの。

シヅキがいる。ボスがいる。アルーさんがいる。

幹部の人たちがいる。隻眼テディベアのダンインの人たちがいる。

みんなが私の名前を呼んでくれるから、私は私の名前を忘れたりしない。

たんじょうびだってみんながハッピーバースデーって言ってくれるなら、きっと忘れたりしない。






昔、ときどき考えてたことがあるの。

私はなんのために生きているんだろうって。

今ならわかる。

今なら、私に生きている意味があるとしたらそれは、






隻眼テディベアのみんなのために生きている。






私を守ってくれるみんなを守りたい。

私に笑いかけてくれるみんなに笑いかけたい。

私を愛してくれるみんなを愛したい。




そのためなら私は、一振りの剣でも盾だっていい。

みんなの役に立てるようなものになりたい。




「ありがとう、みんな」




 みんなを護る盾になりたい。みんなを護るため、敵を排除する剣になりたい。




「透。お前は今日で十三だ」




 ボスが顔から笑顔を消して、真剣な面持ちで話し始めた。

視界には入らないところでシュボッという音がして、

ああ、シヅキが煙草を吸うんだと思った。




「刀の練習を始めて、もう半年以上経った。お前の実力は俺が思っていた以上だ。

こんなにも早く、ここまで刀を扱えるようになるとは思っていなかった。

もうこれ以上の力を訓練だけで付けていくのは難しいだろう。

だから、お前には実際の任務に就いてもらう」




 それは思ってもみない言葉だった。

いつかは自分も任務という死と隣り合わせの戦場に出ていくことを承知の上で武器を得ることを決めたのに、

それがこんなにも早くくるとは思わなかった。




「もちろん最初からひとりで、というわけではない。

シヅキとペアでやってもらうつもりだ。

シヅキはこれを承諾したが、――透、お前はどうだ」




 ひとりで戦うわけじゃない。

シヅキがいる。

たったそれだけの言葉で、胸の内に隠れていた不安は消えていく。

というよりも、シヅキがいるならなんとかなるだろうとかそんな気持ちだった。




「やります。ボス」


「そうか」




 ボスが時間をかけて頷いた。




「大丈夫だって、ボス! 俺がついてるんで」


「だといいがな」


「なんすか。それ!」




 そんなボスとシヅキのやり取りを見ていて思わず笑った。

するとアルーさんや幹部の人たちが、驚いたような表情で私を見た。






 そのあと、ボスから初めての任務の内容と日程が言い渡されたけど、私は自分でも不思議なほど何も怖くはなかった。























If I stand in the middle of my friends.

たとえば、私がまんなかにいるとして。


いつも読んでくださって、お気に入り登録までしてくださって本当にありがとうございます。幸せです。

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