第3話 刺客
汚れきった服、激しく切れた息、元々は綺麗な金髪であろう髪も汗やら何やらでベタベタで汚らしくなっている。
明らかに食事をしに来た雰囲気では無さそうだ。
青年は店内をキョロキョロと忙しなく眺め、
「少し匿って!」
とアッシェ達のいる厨房に飛び込んで行った。
突然の出来事に店にいた3人は呆気に取られていたが、ふと我に返ったアッシェが、
「コラお前!そんな汚い格好で厨房に入るな!」
と怒鳴る。
そんなことお構い無しに謎の汚れた青年は、人差し指を口の前に当て、かなり怯えた表情で、シーー!のポーズでアッシェとピケに目配せした。
そんな表情を見たら、さすがに厨房から追い出す気は無くなってしまった。
ピケが何かあったのかい?と言いかけた時、また店の入口のベルがカランと音を立てた。
3人がまた一斉に入口を見る。
そこには、黒いスーツをピシッと着た3人組。
後ろの2人はサングラスをかけたスキンヘッド、屈強な体つきで見た目はほぼSP。
そしてその真ん中に立つ男。
ポッケに手を突っ込んで、鋭い眼光でこっちを見つめる長い黒髪をオールバックにした男。
明らかにこの男が後ろの2人を従えてるんだろう。
その男は、変わらぬ眼でアッシェの顔をじーっと見つめていた。
しばらくの静寂の後、ピケが切り出す。
「いらっしゃいませ。空いてるお席へどうぞ?」
ピケの言葉に少しハッとしたような表情を見せた男は、さっきの目つきとは打って変わってあまりにわざとらしく笑って言った。
「いやー!すみません!食事に来たわけではないんです!ちょっと人を探してて!」
ヘラヘラしながら言う男がさらに続ける。
「金髪の若い男を探してるんですが、コイツ見てないですか?」
胸ポケットから取り出した写真には、つい先刻厨房に飛び込んできた青年が写っている。
足元で膝を抱えながら、これでもかと怯えている青年をアッシェとピケがちらっと見る。
「さあ?知らないですね?」
ピケがシラを切ると同時にアッシェも続ける。
「飯食いに来たんじゃないなら出ていって貰っていいです!?営業の邪魔なんだ!」
源さんが、営業なんてしてない様なもんだろ、と小声で憎まれ口を叩く。こんな時にも呑気なもんだ。
男は、再びさっきの表情に戻ると、
「そうですか…。分かりました。」
と、玄関の方を向いて出ていくかと思ったら、こちらをチラッと振り向き、
「近々、また会うかもしれませんね。」
と、意味深な言葉を言って出ていった。
「ピケ」
「ああ、わかってる。」
後ろの取り巻きの靴に向かって、ピケの手元から何かが飛ばされた。




