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ひとりで、おとなり、

ピピピピ、ピピピピ…


土曜日の朝、睡眠大好きな僕でも朝は早い。この週末をよりよく眠るために、やるべきことを土曜の朝に全て終わらせる。それが僕の流儀だ。

とはいえ、早く起きたところでおはようを言う相手は家にいない。というか僕1人だ。


「誰もいない家にもすっかり慣れたなぁ…」

高校生になったタイミングでの一人暮らし。うちは裕福なわけではないが、早めの一人暮らしで生活能力を鍛えようという教育方針だ。別に反対はしないし、家事自体できないわけではないから苦痛ではない。自由に過ごせるし。


今日は朝から洗濯と軽い掃除。朝食は面倒なので食パンと牛乳でササッと流し込む。男子高校生のご飯がそれでいいのかと言われると弱いが、その分昼と夜に栄養は摂っている。つまり問題ない。


洗い物を済ませる頃には、洗濯機の完了の音が聞こえる。本当は外で干した方が良いのだが、風が強いと予報で見たのでビビって室内干ししている。この状況を世の主婦の方々が見たらブチギレるかもしれない。いや、キレるかも。


半月に1度と決めている掃除も、掃除機を軽くかけるだけにしている。普段から面倒にならないように散らかさないように徹底している。そもそも物があんまりないのはあるけど。


「やらなきゃいけないことも終わったし、僕の相棒よ今行くz (ピンポーン)…嘘だろ」

出鼻をくじかれた。来客の予定も配達の予定もなかったはずなのだが、一体誰だろうかタイミングの悪い。


しかし、出ない訳にもいかないので「今出ます」と声をかけながら玄関に向かい、扉を開けると…

「初めまして、つい先日隣に越してきました小鳥遊と申します。本当は初日にご挨拶するつもりでしたが、様々な手続きで遅れてしまい…こちらお蕎麦です。良ければどうぞ」


昨日覚えた顔が、今日も見れるとは思ってませんでしたね。というか、同級生の顔見て顔色1つ変えないってことは、僕の顔覚えてないんだろうな。まあ帰り際にチラッと顔合わせただけだもんな。


「あの…?何か?」

明らかに不機嫌そうにこちらを見てくる。まあ顔ガン見してるからね。そりゃそうだよね。

「す、すみません…隣に人が越してきてたの知らなくて…あと、クラスメイトです。小鳥遊さん。僕、大庭です」

「…?すみません、まだクラスメイトの名前と顔覚えてなくて、そうなんですね」


…まるで興味無いかのごとくスルーされた。僕もそこまでクラスメイトと仲良く…とか気にする方じゃないけど、せめてクラスメイトって分かったならもうちょっと興味持って欲しい気持ちはあった。まあ別にいいんだけどさ。


「…お蕎麦ありがとうございます。引っ越してきて大変でしょう。お隣のよしみで、何かあればいつでも仰ってください」

社交辞令だ。本音で言えば、来ないで欲しい。

「ありがとうございます。クラスメイトの方がお隣さんなのは心強いです。ぜひその時があればお力をお貸しください」

絶対社交辞令だ。来ないやつの言い方だ。


まあ僕としては、必要以上に関わってこなければなんだっていい。僕は僕の睡眠ライフを満喫したいのさ。邪魔しないでくれたまえ。


「まだ荷解きだったりで大変でしょう。そろそろお部屋に戻られては?」

「…では、お言葉に甘えて」

転校生は、そう言うと蹄を返し、自身の部屋へと帰って行った。僕は安堵して、玄関を閉め、鍵をかけ、眠りに着きに向かった。


こうして、転校生との謎の関係が幕を開けた。いや、開けないで欲しい。ほんとに。


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