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星が降る街  作者: るな
さようなら
1/2

人生最後の旅


貴方の背中をそっと撫でるような

隣に座ってただ綺麗な風景を

眺めてるような

もうちょっと生きてみようかなって思えるような。



これで人生最後の旅になるんだろうな。




旅と言っていいのだろうか。

私はこの旅で自分の命とさよならをしようと

溜まりに溜まったお金を全て持ち

迷いもなくスイス行きの飛行機を

今搭乗ロビーで待っている。


外は晴天。雲一つもない

今年初の夏日を観測したんだって。

暑さも感じない。空が綺麗とも思わない。

今から死ぬ為に旅立つ私と裏腹に

旅行を楽しそうに話している家族、恋人。


同じ場所に行くのにね。

楽しそうな声すらも雑音でしかない。

あぁ もう 早く 消えちゃいたい。


「サト?」


顔を伏せている私の顔を覗き込むように

名前を呼ぶ相手。


「え?サキ?」


そこには。CAの格好をしていた

中学 高校と共に青春を送った

友達のサキだった。


化粧もなにもしていない私。

恥ずかしくて上手く目が合わせれない。

サキはそれでも私の顔を見て

昔から変わらないテンションで話を始める。


「元気だった?久しぶりだね!高校卒業以来だね!」


「うん。元気だったよ。サキは?」


「バタバタ毎日だけど元気に過ごせてるよ!

 12年ぶりだよね?サト高校卒業して

 地元離れたまま会えてなかったもんね」


あ、そっか。そんなにも月日が経ってるのか。

よく、私の事を覚えていたな。

そう思いながら握りしめたお茶を飲む。


しかし、本当昔から変わらない。

綺麗で華があるのに親しみやすい。


「夢だったCAになれたんだね。」


「そうなの!逃げだしたかったけどね。

 今となっては、綺麗な景色を沢山見れて

 頑張ってよかったなーって思ってる。」


うん。わかるよ。頑張って追いかけた夢を

叶えるのって簡単じゃないしね。

わかるんだけど、今はキラキラしている

サキを見るのが正直辛い。

早く入場時間にならないかな。


「サトは今からどこいくの?」


「スイス。綺麗な景色を見たくてね。」 


「スイスか〜。綺麗だよね!!

 私まだ行けてないんだ〜!」


揚々と話しを続けるサキだったが

何を思ったのか周りを見渡した。

誰かを探してるのかな?


「サト、1人?」


「え?そうだけど…」


「あ、そうなんだね!てっきり

 家族みんなで行くのかと思ったよ!」


その瞬間、私の鼓動が早くなった。

なんて言ったらいいのか。

小さな子供を置いて、一人旅なんて

贅沢だと思うだろうか。可哀想だと思うのだろうか。


サキは知らない。

離婚したことも。子供を父親に託したことも。

周りには誰にも言ってないからな。

言いたくもない。誰も知らないまま

私は旅立ちたかったのだ。


「…気晴らし…に。旦那が行っておいでって

 贅沢だよね?主婦がこんなスイスなんて…」


気晴らしなんて言うもんじゃないよね。

スイスだもん。明らかに嘘だと思うような言葉しか

出ない。


でも、サキは私の戸惑いを見て見ぬふりを

してくれたのか、態度も変えずこう返してくれた。


「そっかー!いいね!!

 息抜きも大事だよ。しっかり楽しんでね?」


察したのか、探らずそっとしてくれるサキ。

昔から変わらない。ほんとありがたい。


「うん。ありがとう。

 また、会えたらゆっくり旅の話聞いてね。」


またなんていのにね。

これで本当のさよならなのにね。

私は目線をしたに向けた。

早くこの場から立ち去りたい。

その気持ち察したのかサキは

私の手を握り最後にこう言った。


「帰ってきたら、会おうね。

 ここで会ったのも何かの縁だし。

 だって12年ぶりに会えたんだよ?

 ゆっくり話聞かせてよ。」


真っ直ぐ私の目を見て言うサキ。

目を逸らしちゃいけないと思った。

最後くらいちゃんと目を見ていよう。

嘘でも。もう会えないことをわかってても。


「うん。会おう。連絡先変わってないよね?

 帰ったら連絡するね」


「変わってないよ。絶対だからね?」


私は深く頷いた。強く握りしめる

サキの手は少し震えている。

私は握り返す事はできなかった。

答える事はできないと思ったからだ。


「ただいまより、スイス行きのー…」


「あ、搭乗時間になったから行くね。」


サキの手をゆっくりほどき

私は荷物を持った。

サキも自分の荷物を待ち私を見送ると言い

入り口まで来てくれた。


「じゃあ、サト。気をつけてね。」


「うん。ありがとう。行ってきてます。」


手を振り私は行った。振り返る事もなく。

きっとサキの事だから見えなくなるまで

見送ってくれてるんだろうな。

長い間会ってなくても、わかる。

私達の青春時代は色々あったから。

あの時はあの時の時間が流れてる。

同じ物が好きだったり、同じ場所に向かってるような。運命共同体なんて言っちゃってね。

楽しい時間を共に過ごしたよ。


でも今は全く違う。

今は今の時間が流れてる。


川で例えるなら、私は下流でサキは上流かな。

私の行先はどんどん深く深く

足がつかなくようなとこを彷徨って


サキは上に上に。

そのくらい私達のいる場所は違う。


サキ。夢が叶ってよかったね。

昔からの夢だったもんね。嬉しかった。


あーなんか疲れた。

ようやく席に着き出発するところまできた。

さぁ、もう帰ってくる事ないよ。

ありがとう。今まで。

私が生きた場所。さようなら。


スイスまで沢山時間ある。

とりあえず寝よう。









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