表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・ブレイク――スキルコピーするだけで最強の俺、ダンジョンで恋も奪う  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/53

第6話 恐怖を殴る拳

――湿った空気が肌にまとわりつく。

 

洞窟の奥、暗闇に沈んだ空間を、俺と真琴は再び踏みしめていた。


「……なぁ真琴。今の音、絶対一匹じゃないよな?」

「ええ。複数の足音が聞こえる」

「いや、複数って聞くだけで心折れるんだが!?」


 昨日の戦いから一晩。

 身体の傷は回復しても、心の震えはまだ残っていた。

 暗闇の奥から、湿った風と低い唸り声。金属の擦れる音が微かに響く。


「遼、息を整えて。敵の数は……三体。近いわ」 「三体ぃ!? チュートリアル終わってないよな俺!?」


 スマホが青く光る。《敵影反応:ゴブリン×3》。

 まるでRPGのウィンドウが現実に溶け出したようだった。

 現実離れしたその光景に、恐怖と同時に、妙な興奮も混じる。



 姿を現したのは、三体のゴブリン。

 緑の皮膚、濁った瞳。手には錆びたナイフ。

 鼻を突く臭気が、胃の奥を刺激する。


「ひっ……くっさ! 鼻が死ぬっ!」

「遼、集中して。私が左を引きつける。あなたは右の一体を狙って」


「了解っ……いや、了解って言ったけど心が追いつかねぇ!」


 真琴が前に出た。

 足元の砂利が散る。銀色の短剣が月光を反射し、ゴブリンの喉元を貫く。

 一体目が絶叫とともに崩れ落ちる。


「うわっ……うわっ……リアルすぎるっ……!」 「見るな。次が来る!」


 残る二体が突進してくる。

 俺は咄嗟に拳を握った。

 震える手。だが逃げる足は、もうなかった。


「――うおおおおっ!!」


 拳が頬骨にめり込む。鈍い音。

 感触が指に走ると同時に、ゴブリンの頭が跳ね上がった。


 倒した。俺が。

 逃げずに、殴って、倒した。


「……勝った。俺、生きてる」

「ええ、立派だったわ」


 真琴が微笑む。

 その笑顔に、緊張で強張っていた心が少しだけ軽くなる。




「ふぅ……なぁ真琴。あれ見てみろよ、宝箱あるぞ!」

「嫌な予感しかしないわね」


 洞窟の奥の広間に、石造りの台座。その上に古びた宝箱が置かれていた。

 ゲーム脳の俺が、当然のように言う。


「開けるしかないでしょこれは!」

「典型的なフラグ発言ね」

「フラグって言うな! 俺は行く!」


 ――カチリ。


「……あれ? 今の音なに?」

「罠って言ったでしょ!!」


 床の魔法陣が光を放ち、爆発的な衝撃が広がる。

 遼の身体が吹き飛び、壁に叩きつけられた。


「ぐっ……ぉおおおっ!?」

「遼!!」


 HPゲージが赤く点滅する。《HP:8%》

 痛みで視界が滲む中、頭の中に浮かぶ――あの文字。


《アビリティジャック発動条件、確認》


 ……きた。

 死にかけの時だけ発動する、俺の唯一の能力。


《対象選定:ゴブリン(戦闘不能)/能力データ取得失敗》


「……ははっ、マジかよ……死にかけて発動って、どんなドMスキルだよ」

「生きてるだけ奇跡よ。次は爆弾踏まないで」 「うるせぇ! 俺だって好きで死にかけてねぇ!」


 二人の会話が洞窟に反響する。

 命懸けの現場なのに、どこかコントみたいな空気が流れていた。



「で、箱の中身は……お、光ってるぞ」

「これは……《マナストーン》。魔力の結晶よ。燃料にも武具強化にも使えるわ」


 真琴が石を手に取り、淡く青く光る表面を見つめる。

 遼は呆然としながら呟いた。


「マジでゲームじゃん……いや、これ現実だよな?」

「現実よ。でも“ゲームの理屈”が通る世界、ってこと」

「世界バグってない? まだデバッグ終わってない感じだよな」

「あなたの発言もバグってるけどね」


「おい、それツッコミ辛辣すぎね!?」


 死と隣り合わせの探索。

 けれど、その中にほんの少しだけ、冒険のワクワクが混じっていた。




 静寂。

 次の瞬間、奥の闇から低い唸り声が響いた。

 空気が震え、湿気が熱気に変わる。


「……この感じ、やばくない?」

「ええ。空気が……重い。違う、これは“格”が違う」


 スマホを確認するが、反応が出ない。

 《エラー:未確認種》の文字。


「え、いや待てよ。反応しないって、どういうこと!?」

「想定外。つまり――強敵ね」

「まだレベル3なんですけど俺!」

「ここが“最初の関門”なんでしょう」

「チュートリアル詐欺だろ!!」


 地鳴り。

 奥の闇から、黒い鱗がゆっくりと姿を現した。



「……俺、また死にかけるのかよ」

「大丈夫。今度は、二人で勝つわ」


 真琴が前に出る。

 闇の中、二人の影が重なった。


――“恐怖”の次に待つのは、“覚悟”の戦いだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ