108.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
上松と贄川が去り、部屋に残ったのは俺たち四人になった。
「……さて」
咲耶が一つ息をついて、床に座り込んだ。
普段の凛とした立ち姿からは想像できないくらい、脱力した座り方だった。
「疲れたわ」
「珍しいな、咲耶がそんなこと言うの」
「言わない方がおかしいでしょ。今日どれだけのことがあったと思ってるの」
まあ、確かに。
俺も壁にもたれて座る。
玉姫はその隣に静かに腰を下ろし、ももかは俺の目の前にどかっと胡坐をかいた。
「ねえゆうじ」
「なんだ」
「お腹すいてない?」
言われた瞬間、腹が鳴った。
盛大に。
「……否定できないな」
「でしょ! あたしもめちゃくちゃすいてる!」
ももかが嬉しそうに声を上げる。
なんでそんなに嬉しそうなんだ。
「今何時だ?」
「九時過ぎてるよ」
そりゃ腹も減る。
妖刀使いの集会に乗り込んで、シェイプシフターの話を聞いて、上松と贄川を凍らせて、解放して。
気づけばそんな時間になっていた。
「うちに来るか。なんか作る」
「え、ゆうじ料理できるの?」
「異世界で五年間、自炊してたからな」
ももかがぽかんと口を開ける。
「……そっか。そうだよね」
少し間があった。
さっきまでのにぎやかさが、すっと静まる。
俺が異世界にいた五年間。
こっちの時間では一瞬だったかもしれないけど、俺にとっては確かに五年分の時間だった。
「行こう」
玉姫が静かに立ち上がって、場の空気を切り替えた。
さすがだと思う。
「悠仁の手料理、楽しみにしてるわ」
咲耶も立ち上がりながら、ちらりと俺を見る。
普段より少しだけ、表情がやわらかかった。
俺の部屋に四人が揃うのは、これが初めてだった。
咲耶は部屋に入るなり、本棚を眺めはじめた。
無言で背表紙を読んでいる。
「趣味わるくないわね」
「褒めてるのかそれ」
「褒めてるの」
玉姫は窓際に座って、外の夜景をぼんやり見ていた。
ももかはというと、台所に立った俺のすぐ隣に陣取って、作業をじっと覗き込んでいる。
「何作るの?」
「パスタでいいか。材料はある」
「手伝う!」
「じゃあ湯を沸かしてくれ」
「沸かす係ね、任せて!」
やけに張り切っている。
沸かすだけなのに。
包丁を動かしながら、俺はふと思った。
こういう時間が、なんか、いいな。
異世界にいたとき、こんな風に誰かと飯を作ったことはなかった。
ずっと一人だった。
修行して、戦って、また修行して。
気を許せる相手なんていなかった。
「……ゆうじ」
ももかが、少し低い声で呼んだ。
「なんだ」
「楽しい? 今」
包丁が止まる。
楽しい。
そんなこと、聞かれると思っていなかった。
「……まあ」
「まあ、って」
「楽しいよ」
ももかがにっこり笑った。
台所に立って、お湯を沸かしながら笑う女子高生。
なんでもない光景のはずなのに、なぜかうまく言葉にできない感情が胸のあたりにあった。
リビングから咲耶の声が飛んでくる。
「ねえ、この魔道具なに? 見たことないんだけど」
「触るな」
「触ってないわよ、見てるだけ」
「その『見てるだけ』が一番信用できない」
「失礼ね」
玉姫がくすくすと笑う声がした。
パスタが茹で上がる頃には、部屋の中がすっかり落ち着いた空気になっていた。
四人で鍋を囲んで、たいした話もせずに食べた。
それでよかった。
しばらくして、咲耶が箸を置いた。
「……関西、いつ行く?」
やっぱりこの人は、どこかでずっと考えていたんだな。
俺は少し考えてから答えた。
「三日後でどうだ。準備もあるし、向こうの情報も少し集めたい」
「賛成」と玉姫。
「あたしも」とももか。
咲耶は小さく頷いた。
「じゃあ、三日後ね」
それだけ言って、また静かになった。
誰も急かさない。
誰も騒がない。
時計を見ると、十一時を回っていた。
「遅いな。送るか?」
俺が言うと、三人は顔を見合わせた。
「泊まっていく」
ももかがさらっと言った。
「……は?」
「泊まっていくって言ったの。聞こえなかった?」
「聞こえたけど」
「ダメ?」
ダメかどうかで言えば、ダメではない。
ダメではないんだが。
「……別にいいけど」
「ありがと」
玉姫が穏やかに微笑む。
ももかはもうすでにクッションを抱えてソファに転がっていた。
「ゆうじんち、落ち着くんだよね」
当たり前のように言う。
まあ、これが初めてじゃないからな。
気づけば、こいつらが泊まっていくのも、すっかり日常になっていた。
窓の外に、東京の夜が広がっている。
三日後、俺たちは西へ向かう。
【おしらせ】
※3/25
新作、投稿しました!
ぜひ応援していただけますとうれしいです!
URLを貼っておきます!
よろしくお願いいたします!
『辺境の【裁縫師】が、自分の作る服こそ世界最高の魔法装備だと気付くまで~婚約破棄されて王都の端っこで静かに縫っていたら、気づいたら英雄たちの御用達になっていました~』
https://ncode.syosetu.com/n7871lx/
広告下↓のリンクから飛べます。




