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異世界帰りの最強魔術師、現実世界でも無双する。 ~唯一魔法が使える俺、なぜか英雄扱いされて困ってます~【26年5月発売】  作者: 茨木野


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108.

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。

 上松と贄川が去り、部屋に残ったのは俺たち四人になった。


「……さて」


 咲耶が一つ息をついて、床に座り込んだ。

 普段の凛とした立ち姿からは想像できないくらい、脱力した座り方だった。


「疲れたわ」


「珍しいな、咲耶がそんなこと言うの」


「言わない方がおかしいでしょ。今日どれだけのことがあったと思ってるの」


 まあ、確かに。


 俺も壁にもたれて座る。

 玉姫はその隣に静かに腰を下ろし、ももかは俺の目の前にどかっと胡坐をかいた。


「ねえゆうじ」


「なんだ」


「お腹すいてない?」


 言われた瞬間、腹が鳴った。


 盛大に。


「……否定できないな」


「でしょ! あたしもめちゃくちゃすいてる!」


 ももかが嬉しそうに声を上げる。

 なんでそんなに嬉しそうなんだ。


「今何時だ?」


「九時過ぎてるよ」


 そりゃ腹も減る。

 妖刀使いの集会に乗り込んで、シェイプシフターの話を聞いて、上松と贄川を凍らせて、解放して。

 気づけばそんな時間になっていた。


「うちに来るか。なんか作る」


「え、ゆうじ料理できるの?」


「異世界で五年間、自炊してたからな」


 ももかがぽかんと口を開ける。


「……そっか。そうだよね」


 少し間があった。

 さっきまでのにぎやかさが、すっと静まる。


 俺が異世界にいた五年間。

 こっちの時間では一瞬だったかもしれないけど、俺にとっては確かに五年分の時間だった。


「行こう」


 玉姫が静かに立ち上がって、場の空気を切り替えた。

 さすがだと思う。


「悠仁の手料理、楽しみにしてるわ」


 咲耶も立ち上がりながら、ちらりと俺を見る。

 普段より少しだけ、表情がやわらかかった。


 俺の部屋に四人が揃うのは、これが初めてだった。


 咲耶は部屋に入るなり、本棚を眺めはじめた。

 無言で背表紙を読んでいる。


「趣味わるくないわね」


「褒めてるのかそれ」


「褒めてるの」


 玉姫は窓際に座って、外の夜景をぼんやり見ていた。

 ももかはというと、台所に立った俺のすぐ隣に陣取って、作業をじっと覗き込んでいる。


「何作るの?」


「パスタでいいか。材料はある」


「手伝う!」


「じゃあ湯を沸かしてくれ」


「沸かす係ね、任せて!」


 やけに張り切っている。

 沸かすだけなのに。


 包丁を動かしながら、俺はふと思った。


 こういう時間が、なんか、いいな。


 異世界にいたとき、こんな風に誰かと飯を作ったことはなかった。

 ずっと一人だった。

 修行して、戦って、また修行して。

 気を許せる相手なんていなかった。


「……ゆうじ」


 ももかが、少し低い声で呼んだ。


「なんだ」


「楽しい? 今」


 包丁が止まる。


 楽しい。

 そんなこと、聞かれると思っていなかった。


「……まあ」


「まあ、って」


「楽しいよ」


 ももかがにっこり笑った。

 台所に立って、お湯を沸かしながら笑う女子高生。

 なんでもない光景のはずなのに、なぜかうまく言葉にできない感情が胸のあたりにあった。


 リビングから咲耶の声が飛んでくる。


「ねえ、この魔道具なに? 見たことないんだけど」


「触るな」


「触ってないわよ、見てるだけ」


「その『見てるだけ』が一番信用できない」


「失礼ね」


 玉姫がくすくすと笑う声がした。


 パスタが茹で上がる頃には、部屋の中がすっかり落ち着いた空気になっていた。

 四人で鍋を囲んで、たいした話もせずに食べた。


 それでよかった。


 しばらくして、咲耶が箸を置いた。


「……関西、いつ行く?」


 やっぱりこの人は、どこかでずっと考えていたんだな。


 俺は少し考えてから答えた。


「三日後でどうだ。準備もあるし、向こうの情報も少し集めたい」


「賛成」と玉姫。


「あたしも」とももか。


 咲耶は小さく頷いた。


「じゃあ、三日後ね」


 それだけ言って、また静かになった。

 誰も急かさない。

 誰も騒がない。


 時計を見ると、十一時を回っていた。


「遅いな。送るか?」


 俺が言うと、三人は顔を見合わせた。


「泊まっていく」


 ももかがさらっと言った。


「……は?」


「泊まっていくって言ったの。聞こえなかった?」


「聞こえたけど」


「ダメ?」


 ダメかどうかで言えば、ダメではない。

 ダメではないんだが。


「……別にいいけど」


「ありがと」


 玉姫が穏やかに微笑む。

 ももかはもうすでにクッションを抱えてソファに転がっていた。


「ゆうじんち、落ち着くんだよね」


 当たり前のように言う。

 まあ、これが初めてじゃないからな。


 気づけば、こいつらが泊まっていくのも、すっかり日常になっていた。


 窓の外に、東京の夜が広がっている。


 三日後、俺たちは西へ向かう。

【おしらせ】

※3/25


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