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#5. ラテさんと僕

 僕はカナダの大学院に行くため、新卒から5年間勤めた会社を退職した。最初は授業についていくだけでも精一杯だったものの、慣れると徐々についていけるようになった。研究に没頭するのも良いけれど、あわよくば金髪碧眼の可愛い彼女でもできたりしないかなと考えたりもする。そういう人は大抵現地のイケメン彼氏がいるので、日本人の僕など相手にされないけれど。

 そんな僕にも、勉強のためによく利用するカフェがある。そのカフェに来る現地の女性客が気になり始めた。20代くらいのブリーチで染めたブロンドヘアで、目がくりくりした女性だ。彼女はいつもパリッとしたパンツスーツかジャケットとブラウスとタイトスカートを着ているので、キャリアウーマンのような出で立ちだった。いつもカフェラテを飲んでいる人なので、ラテさんとしよう。本当の名前はわからないものの。

 ラテさんはいつも金曜日の夕方にカフェに来て、読書をしているかMacbookで作業をしている。店内で1〜2時間ほど滞在した後は、大きなカバンを持って店内から出ていた。名前はなんというのか、どんな仕事をしているのか、彼氏や夫はいるのか、と僕はラテさんのことを知りたい気持ちになっている。

 ある金曜日、ラテさんはいつものようにカフェに来た。が、いつもと雰囲気が違う。疲れているのか顔色が悪く、だるそうに見えた。黒いジャケット、水色のブラウス、白いレースタイトスカート姿だったので仕事帰りなのは察しがつく。きっと仕事かプライベートで何か良くないことがあったのだろう。

 ラテさんはいつものようにMacbookを開き、Facebookを見ている。Facebookを見ながら、ラテさんは静かに涙を流していた。Facebookにはカップルの幸せそうな写真ーー内容が見えてしまったが、結婚報告だったーーが載っている。カップルの男の方とラテさんが何らかの関係があるのだろう。

 ラテさんは僕の近くに座っていたので、僕は持っていたメモ帳に「何があったのかわからないけれど、元気出してくださいね」と英語で書く。それをラテさんの手元にそっと置いた。ラテさんは僕に「ありがとう、気にかけてくれて嬉しいわ」と笑いかける。


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