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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第二十八話

 昨日投稿したはずがうまく投稿できていなかったようです。

 並び立つ大型種。とんでもなく目立つ。

 あれだけの大きさなら聞いていた話も頷ける。あの重量と大きさから放たれる一撃は確かに戦車も粉砕できそうだ。


「ジダオ、一応確認だ。敵の戦力は?」


 調査隊も軍人ももちろん素人ではないが、ジダオの索敵能力を上回る手段を持っているとは思えない。


 ていうかジダオの索敵能力は魔法の類なのだろうか。

 オオカミやキツネが持つ磁覚という器官は磁力を感じ取ってはいるが、レーダーのように全方位を完璧に見えているわけではないはず。

 だがまだ俺たちが島にいたときはそこまで高度な魔法は使えなかったからな。マジで謎だ。


 ジダオは少し目をつむって集中したのち、鋭い視線でこちらを見た。


「大型種が20。あれだけの大きさなら調査隊も間違えることはなかっただろう。そして人型種が215。まあ大体情報通りだな」


 人型種が215。感覚が麻痺してきたが15は果たして誤差なのか?


「飛行種は5780だ。通常種との違いが少ないからこれは間違えても仕方ないだろう。通常種は10万といったところだな。そして肝心の魔王だが、二体とも不在のようだぞ」


 飛行種は元情報の二倍以上か。こいつはちょっと危険だな。

 飛行種は俺たちの目から見ても通常種と見た目の差異がない。だがその性能は全くの別物だ。装甲トラックを凹ませるだけの突進力がある。

 ただ魔王が不在なのは良かった。


「飛行種が5780ですか。ジダオ様の索敵の情報はこちらから全部隊に共有しておきます」


「ああ、頼んだぞ」


 俺たちにとってはさほど脅威にならない飛行種だが、人間にはこの情報の差はかなりのものか。それに人型種も。俺たちですら脅威な存在だ。


「皆さん作戦の確認は大丈夫ですか?」


「問題ない」


 既にジェリアスから何度も聞いた。

 俺たちは遊撃部隊。主な役目は変異種の注意を引き付けること。とにかくまずは速攻で大型種をぶちのめす。

 そのために重要なことは戦車に大型種を近づけさせないこと。大型種の硬い外骨格を突破できるのは現状戦車の主砲とRPGなどの高火力火器、グレネード等の爆弾系だ。


 もちろんあんな巨体に近づいてグレネードを叩き込むのは危険だし確実に殺せる保証もない。

 この場にいる戦車は全部で20台。一台も欠かすことはできない。


 この装甲車はタンザニア軍が所有する中でももっとも機動力が高く、ヘイト稼ぎに向いている。

 軍人はこの車両で大型種に近くを通りつつ銃撃し、挑発するのだ。

 当然今回の戦闘で一番危険な役割だがそれだけ重要で、誰かがやらなければならないもの。


 そして俺たちの役割は人型種の相手と大型種に打撃を与えること。

 とにかく移動して回りつつテキトウに攻撃を食らわせてヘイトを分散するのだ。遊撃部隊だけでは流石に危険が過ぎる。

 現状最大戦力の俺たちに厳しい役割が与えられるのは当然。


 どういうわけかは知らないが、身体強化を施さなくとも重火器は俺たちに通用しないらしい。

 これを利用して軍人には戦車もそうだが機関銃なども乱射してもらい俺たちのアシストをしてもらう。

 俺たちとてなんのサポートもなしに人型種215体はきつい。


「作戦の再確認は必要なさそうですね。ではこのまま夜を待ち、奴らの行動能力が低下し次第作戦を開始します」


 現在の時刻は夕方。あと半刻もすれば夜と言える。

 本来ビクトリア湖周辺の町が電気の光を放ち始める頃合いだが、そうはならない。

 壊滅した町は大型種によって粉砕され人が住める状態ではない。これではビクトリア湖を使った交通も壊滅していることだろう。


 家や大型の店などもあった痕跡がここからでもわかる。

 この光景を見るごとに怒りが湧き上がってくる。一体どれだけの人が犠牲になってしまったのか。


 ジダオとあれだけ理性的に話し合ったのに、恐らく俺はどの国でもこの光景を見たら奴らと戦わずにはいられないだろう。

 結局のところ俺は人間が好きで、人間に愛着も同族意識もあるのだ。だからこれは義憤というよりも復讐に近い。


 奴らを殲滅する。それだけは以前から全く変わっていないのに、込める思いはどんどん深くなっていく。

 絶対に蝗害と旱魃を終わらせる。その意志だけは最初のころとは全く違っていた。




 日は十分に沈み、今夜は月もまだ出ていない。光のないビクトリア湖周辺に飛び交う害虫。

 ここまで夜が深まると明かりがついていないのが本当に不自然に見える。


「全軍、準備は完了していますか?」


『こちら戦車番号1~5。問題ありません』

『こちら戦車番号6~10。いつでもいけます』

『…………』


 ジェリアスの通信機から全軍の返事が聞こえる。戦車部隊だけでなく機関銃を扱う部隊、長距離射撃でサポートする部隊など、様々な部隊の返事があった。


 ……あのすべてを管理しているのか。ジェリアスが優秀というのは本当だったようだ。

 ただ緊急時とは言えジェリアスという個人にこの全軍の指揮権を与えていていいのだろうか。

 いや、各分隊長や部隊ごとに隊員の行動を管理しているだろうが、撤退や後退などの指示はジェリアス一人で決めるのだろうか。


「皆さん問題ないようですね。偵察をした結果、通常種と飛行種はほぼ行動を停止。人型種と大型種が数体ずつ交代で見張りをしている状態です」


 現状のバッタどもの状態を共有しているのか。やはり奴らは夜になると行動能力が下がるらしい。

 これならば大型種も一方的に攻撃できる。ついでに戦車の主砲で人型種も巻き添えにできたら良いが。


「この戦いは、日に日に勢力を拡大させていく蝗害に対する反撃です。犠牲になった国民のためにも、これからの被害を拡大させないためにも、そして殉職していった戦友のためにも、奴らを蹴散らし勝利を国に、アフリカ大陸に」


 軍を激励する言葉。奴らに恨みがあるのは俺たちだけではない。むしろほぼ個人的な恨みしか持ち合わせていない俺たちよりも、彼らの思いは遥かに強く硬い。

 家族を、友を、そして己を奪われないためにも、彼らは勝たなくてはならないのだ。全員そういう覚悟で戦場に来ている。


「それでは、戦車部隊、全機撃ち方よーい!」


 戦車の主砲が傾いて休憩をとっている大型種に狙いを済ませる。総数20の砲塔が今にもその身に火を浴びせんと、その瞬間を待つ。


「撃て――――!!!!」


 装甲車内からのジェリアスの叫び。それと同時に放たれる20の弾丸。

 明かりのない夜の湖畔に衝撃的な破壊の光が瞬いた。

 Twitter開設しました。twitter.com/Negimono2

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