第二十七話
数話しか登場しないのになぜか名前のついていたキャラクターの警官ジェリアス君の名前を剝奪し、遊撃部隊隊長にこの名を与えました。
作品に登場するキャラクターの存在と価値を簡単に変更してしまったことについて不快に思われた方には謝罪いたします。申し訳ありませんでした。
ジダオは一瞬気を失ったがすぐに意識を戻した。
流石の耐久力だ。あの攻撃を受けて一瞬気を失うだけとは。
「俺の負けか。さっきのはどういう魔法だ?」
「乱魔拳か、前に乱魔波は見せただろ? 自然力の統制を乱す波状の衝撃。あれを拳に込めて叩き込むんだ」
「違う、そんな簡単なものじゃない。俺の体内の自然力の制御は完璧だったはずだ。どうやってあれを破った?」
ジダオから少し圧を感じる。ちょっと怒ってるのか?
だがそれを聞かれても俺にもよくわからん。確かにジダオの身体強化は完璧なものだった。つまりは体内の自然力の制御は完璧だったわけだ。
だが俺の乱魔拳はそれを突き破ってジダオの制御権を奪った。
つまりは、どういうことだ?
「う~ん、よくわからん」
「なんだそれ。感覚的に魔法を使うのは俺の役目だろ。お前は魔法の理屈とか全部わかって使ってたはずだ」
「そりゃそうなんだがな……。ていうかお前の魔法は意味不明すぎるぞ! 衝撃を移動させる魔法とか、空歩とか、例を挙げだせばきりがない」
「お前の魔法もだろ、なんださっきの地戴とかいうのは。俺の電光も放電も肉体で受け止めるとか。意味が分からん」
あーだこーだあーだこーだ。
お互い意味の分からん魔法を指摘しつつその説明をさせる。
まあほとんど感覚で済ませて説明になんかなっていなかったが。
そんな戦闘後の対談を楽しみつつ怒りつつ。そうしていると、
「大変です! ビクトリア湖で変異種の大規模な群れを確認したと、報告が!」
「なんだと!? 数は?」
すぐにジェリアスが声を上げた。遊撃部隊の隊長として仕事をするのだろう。
ジェリアスは報告に来た軍人としばらく話したのち、こちらに話しかけてきた。
「お二方! 少し早くなりましたが出撃していただけますか!?」
「もちろんだ! こちらもだいぶ仕上がってきた」
俺たちの魔法も変異種や魔王にだって十分通用する。
俺たちはすぐに装甲車に乗り込む。俺がパーツを作った装甲車はまだ完成しておらず、人間が作った脆い装甲車だが、今はこれが最硬の車両だ。
乗組員は七名と一匹。ジェリアスを含めた遊撃部隊の面々と俺たち。前回出撃したときと同じだ。
小分隊レベルの規模だが、全員タンザニア軍の精鋭らしい。ジェリアスが自慢していた。まあ前回の失態もあって自虐的だったが。
当然隊長のジェリアスも優秀な男だ。戦闘面だけでなく指揮もできる。崩壊寸前のタンザニア軍において出撃命令など、隊員の行動を調整する役割ももらっている。
「ジェリアス、敵の情報を教えてくれ」
移動しながら情報のすり合わせを行う。こういうのは人型の俺の仕事だ。ジダオは車両に先行してくる敵がいないか索敵。
変異種の群れということは今まで見たことのない大型種もいるだろう。場合によっては魔王もいる可能性がある。
「はい、報告にきた隊員から聞いたところによると、飛行種2000、人型種100、大型種が20とのことです。変異種でないものは数えきれないと」
「なんだと!」
ジェリアスの言葉にジダオが声を上げた。
それもそうだろ。あれだけ苦戦した人型種だけでも100だ。前回は3体だったんだぞ。
そして未知の変異種、大型種が20。昆虫とは思えないほどの重量を持ち、耐久力も高い。一撃の威力が高く、車両ですら簡単に叩き潰すという。
「それは難儀だな。戦車や火力の高い兵器はあるのか?」
「もちろんですよ。先行して調査に出ていた部隊に戦車と迫撃砲があります。先ほどの基地からも追加で出撃を命令しておきました。合計戦車が20です。ある程度距離をとって戦えば十分大型種を殲滅できるはずです」
なるほどな。なら俺たちが相手すべきは人型種か。調査隊には相当な数がいるようだから、飛行種と通常種は任せてもいいだろう。
「魔王は確認されているか?」
俺はこの戦いで一番重要なことを聞いておく。
今回魔王がいるなら、俺たちは人型種の相手はできない。人型種の相手ができなきゃ部隊は壊滅する。あいつらは重火器持ってるだけの人間が勝てる相手じゃない。大群ならあいつらはさらに強い。
「いえ、今のところは発見されていませんよ。ただビクトリア湖は奴らにとって重要な食料元のはずです。もしかしたら群れの中に隠れているかも」
確証はないが今のところ存在は確認されていないか。あんな目立つ奴だ。いない可能性の方が高いだろう。
……待てよ。ビクトリア湖には……。
「ビクトリア湖周辺にいた国民は? 彼らはどうなった?」
「……ビクトリア湖に住んでいた人々は七割が殺されました。残る三割は避難しています。タンザニア側だけでなくケニア、ウガンダ側でも似たようなことが起きているそうです。タンザニアの被害が一番大きいですが」
「それは、酷いな。タンザニア側が片付いたらビクトリア湖を一周する形で殲滅をしよう」
「それならウガンダ側から回りましょう。ケニアは戦力への打撃が小さいと聞いています。それに蝗害の被害を克服したそうですよ」
なるほど、ウガンダか。てか俺たちがいるタンザニアはともかくほかの国はだいぶ被害がありそうだな。
まぁそのタンザニアに魔王二体が来てしまったわけだが。
「よし、それで行こう。殺されてしまった人々のためにも」
俺は今までタンザニアでのことしか見えていなかった。だから毎日多くても数千人程度しか死んでいないと思っていた。
だがそれは間違いらしい。
タンザニアの外ではどれだけの人が死んでいるんだ? ビクトリア湖周辺に住んでいた人の七割とはいったいどのくらいなんだ?
アフリカ大陸全土にわたる超大規模の蝗害。
そしてこれから起こるであろう大規模な旱魃。
このふたつでこれからさらに人が死ぬだろう。
「みんな、気を引き締めていくぞ!」
「おお!」
「ええ、このために変異種の勉強をたくさんしてきましたよ!」
「今日は射撃の調子が最高にいいですよ」
みんな口々に返してくる。士気は十分のようだ。
「見えてきたぞ! とんでもなくデカい虫がいる!」
どうやら話しているうちにだいぶ時間が経っていたようだ。軍基地からビクトリア湖までそう近くないはずだが。
ジダオは自分の役割をしっかりと果してくれる。
窓の外に目を向けると、そこには二階建ての家のような大きさの昆虫がいた。
どう見てもバッタじゃない。どちらかというとカナブンとかカブトムシみたいな見た目。
そんな存在が、ビクトリア湖を守るようにそこに並んでいた。
リゼ〇二期を観ながらこの作品を書いてるわけですが、本当に売れている面白い作品を観てしまうとどうしても比べてしまって嫌ですね。




