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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第九話

 今回本当は軍人との会話シーンにしようと思ったんですが、さすがにあの量の情報を全部会話文にすると大変なことになりそうだったので回想的にしました。少し読みづらいかと思いますがご了承ください。

 俺たちは軍の人と警官から、いろいろ話を聞いた。現在地はタンザニア。蝗害に対してある程度情報を持っており、すべて話してくれた。

 俺たちはすぐに国連軍に入り、各国で魔王の襲撃に対処することになるそうだが、今はいったんタンザニア軍という扱いになるそうだ。

 

 まず、現在のアフリカの状況。

 蝗害を引き起こしているのはサバクトビバッタという種類のバッタ。こいつらは基本東アフリカや北アフリカに生息しており、雨季の後、伸びた草を餌にして大量発生するそうだ。

 一日に150キロメートルもの距離を移動することもあり、群生相になった奴らは積極的に群れを作り、食料を求めて大移動する。


 本来のサバクトビバッタは生まれたときに群れの密度が大きいと群生相として生まれ、逆に群れの密度が小さいと孤独相として生まれる。雨季の後以外に蝗害が起こりづらいのは、食料の関係で群れの密度が大きくなりにくいからだ。

 だが、驚くべきことに、蝗魔王とその近しい眷属は、孤独相として生まれたバッタを簡単に群生相に変えてしまうそうだ。生物の改変能力は神に近しい力。今回の蝗魔王はただの災害程度では済まないらしい。


 次に、俺たちが相手をする蝗魔王本人と、それに近しい強力な眷属の話。

 蝗魔王は生まれてくるバッタに干渉し、その形や特徴を大きく改変できるらしい。現在確認されている眷属は……。


 人語を介することができ、対人戦を得意とする人型種。

 家のように大型で外骨格が異常に硬く、昆虫とは思えないほどの重量を持ち、重火器を通さない大型種。

 超長距離を移動し、群れを先行して食料に毒をまく飛行種。こいつはなんと、蝗害を止めるべく散布された殺虫剤を体内で蓄える術を持っており、それを農作物などに撒くことで健康被害を拡大しているそうだ。


 蝗魔王本人もやはり強大で、殺虫剤、重火器、強力な焼夷弾とそれに伴う酸素欠乏症も効果がなく、国連の支援によって導入された燃料気化爆弾も眷属には有効だったが蝗魔王には通用しなかったそうだ。

 なお、燃料気化爆弾を命中させるためにヘリコプターを操作していたパイロットは蝗魔王に撃墜され、死亡している。


 さらに、蝗害対策として協力している各国の状況について。

 農家さんから聞いたアメリカの企業は、経済的に苦しい第一次産業の従事者に非常に助けになっているそうだ。しかし、餌としてバッタを捕まえなければいけないことから、該当地域では殺虫剤を撒くことができず、蝗害の抑制としては不十分との意見もあるらしい。

 蝗害を抑制するためには卵の段階で殺虫剤を散布し、破壊する必要がある。成虫になったバッタは移動が速く、狙って殺虫剤を散布することが難しいからだ。

 

 それに対し、イギリスとドイツが変異したバッタに研究的価値があるとし、同じくバッタに懸賞をかけたらしい。

 しかしこちらは軍属に対してのものであり、一般人は変異種の相手は危険である為、手が足りていないそうだ。ただ、通常のバッタと大差のない大きさの飛行種は、農家が捕まえることもあり、一般人が関わるのはその程度だという。


 現在イギリスの研究チームは人型の変異種を捕まえ、これについて研究しているそうだ。バッタの群れを統率する指揮官の発生を抑止できれば、人的被害は大きく抑えられる。ただ、それでも農作物の被害が減るかはまだ微妙なラインらしい。

 むしろ人間を相手にしない分、食料を積極的に狙う可能性もあるとの報告もある。

 

 また、ここタンザニアやエチオピア、ケニアでは政府もバッタたちに懸賞をかけているらしい。

 こちらは何かバッタを活用しようという目的ではなく、生活の苦しい人を支援する目的だ。ただ、政府も予算がそこまで多くなく、農家に直接資金を提供することはできないらしい。だから、バッタに懸賞をかけている。バッタの駆除という名目で国への貢献とし、その報酬が贈られるというわけだ。

 

 現在サバクトビバッタは本来の生息域を飛び出し、西アフリカの大農園や南アフリカのカカオも襲っているらしい。通常ならサバクトビバッタは、どれだけ勢力が拡大しても北東から南に向かって進出することはなかった。


 そっちにはアカトビバッタという、これまた蝗害を引き起こすバッタがいる。しかし今は、サバクトビバッタの進行によってアカトビバッタの群れは壊滅。どうやら蝗魔王は、アカトビバッタを味方につけるつもりはないらしい。


 南に侵攻したサバクトビバッタの群れには確定で人型種か飛行種がついている。サバクトビバッタは単独では南まで行かないということである。

 さらにその群れは他よりも規模が大きく、最大で億単位の群れを確認したそうだ。


 一方北アフリカからヨーロッパや西アジアに進出しているバッタもいるらしい。数か月前に1000億単位の超大規模な群れがアフリカを飛び出し侵攻を開始したが、これは間にある山脈によって失敗するだろうと言われていた。

 山脈に登り、体温が下がったバッタたちは動けなくなり、1000億規模の群れはその多くが死滅するだろうとされていたのだ。


 しかし、驚くべきことにバッタたちの先行部隊が死に始めた途端に後続の群れは撤退。山のふもとに集合した群れは食料が足りなくなり、付近の植物を食い荒らした。どころか服やタオルなどの植物性の製品も食い荒らし、襲われた町は壊滅。


 現在バッタの総数は6000億。対して捕獲、または駆除したバッタは5000億だ。つまりこの地には累計1兆1000億匹のバッタが誕生している。

 今までの蝗害ではバッタに対して人類は均衡をとれていたが、今回は規模が大きくなり過ぎている。

 さらに発見されている変異種は人型が5万、大型が1万、飛行種は10万と言われているが、飛行種に関しては正確な数字が出せない。民間の報告によると50万は下らないそうだ。

 崩壊した都市は数十から数百という。国単位で崩壊を始めているところもあるらしい。

 

 ただ、ケニアやその周辺ではバッタの大規模な駆除に成功しており、農作の復活が期待されている。


 


 うーん、絶望的☆。

 なんだこの状況。蝗魔王を倒しただけじゃどうにもならん。大規模な殲滅を各地で行わなければならない。


 俺たちは今、人型の中でも強力な者を殺すため、大規模な群れに向かって移動中だ。タンザニアの都市が一つ、壊滅まじか迄追い込まれたらしい。近くに音の大きな焼夷弾を打ち込み、バッタたちの統制を乱すことで追い払ったらしいが、人型種が三体確認されており、バッタも大部分が生き残っているそうだ。


「見えてきました、あそこです!」


 この部隊の隊長、ジェリアスから声がかかる。


「多いな、人型もそうだが、まずはバッタの殲滅をする必要がある」


 目を向けると、一目でわかるほど大量のバッタがいた。奴らが再び都市を攻めれば簡単に崩壊することは目に見えている。


「ジダオ、人型の場所は?」


「斜め右、群れの中心地に三体固まってているようだ。突っ切るか?」


「すごいですねジダオさん! 焼夷弾は都市に侵攻中の群れから後方に退いた指揮官を狙い撃ちにしたので、手傷を負っているかもしれません。我々が重火器でバッタを追い払いますので手負いの指揮官を攻撃してください」


 ジダオの言葉に反応したのは軍の人だ。軍のトラックでここまで来た。ただ動かせる軍人も少なく、重火器の有効性も低いため、人数は少ない。彼らの役目は主に露払いだ。


「よし、その作戦で行こう。ただ、人型変異種は身体強化を持っている。焼夷弾が通用していたかは怪しい。そこは楽観視しないで行こう」


「例の、体内で力を発動させて身体能力を強化するってやつか。俺も多少できるようになたがジダオはどうだ?」


 俺たちはこの数日でさらに戦闘能力を上げることに成功していた。人型変異種から引き出した情報をもとに、身体能力の強化を使えるようになった。


「俺も使えるようにはなった。ただ、話を聞いた限り、燃料気化爆弾を耐えたという蝗魔王に通用するかはまだわからない」


「それは身体能力の話だろ。氷弾や岩石砲まで耐えられるとは思えない。あれからさらに出力が上がったんだ。最悪爆発系の力を使うか、お前の気温操作を使えば奴の活動は弱まる」


 バッタたちが山脈から引き返してきたという話から、気温操作で奴らの活動能力を劇的に低下させられることはわかっている。蝗魔王がどれだけ強大でも、昆虫であることに変わりはない。


「小話は終わりですよ! 向こうもこっちに気づいたようです!」


「よし、みんなはトラックの中からバッタを銃撃してくれ! 流れ弾は気にするな! 俺たちにも重火器は通用しない。ただ、民間人には当てるなよ! 避難はほぼ済んでいるとはいえ、民間人がいないとは言い切れない」


 さあ、殲滅の開始だ! あの害虫を一匹残らずぶちのめす!

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